上 下
361 / 1,085
第二章 神と人

第三百十一話 自らを振り返る

しおりを挟む
 ブレディーがメルザに抱き着いてる間に、自分の体を確かめてみる。
 この海底に来てからというもの、目まぐるしい変化に自分自身がついていけていない。
 フォーサイトから受け継いだ、星のさらなる力。
 妖真化の会得。
 神魔化による第七感の獲得。
 獣落ちによる謎の獣化。
 そして……ほっとくと燃える謎の戦車形態な俺。

 人外にもほどがあるな。人と思っていたころが懐かしい。
 
「この力、組み合わせてどうにかなればいいんだけどな……」
「ヒヒン! そんな簡単に使いこなせる程甘くはないと思うよ。ヒヒン!」
「ああ。セーレ先輩よ。出来れば指導願いたいものだねぇ。どうやって使えばいいんだ? 
このベリアルとかいうやつの使い方。ついでに獣っぽくなってたの、ありゃなんなんだ」
「獣落ちでしょきっと。神格化失敗のなれの果てだよね。君神格化できないでしょ?」
「へ? 神魔解放……いや、出来るぞ」
「ヒヒン? あれぇ? なんでできるの。なんで? ねぇなんで? なんでなんで?」
「知らないしうるさいぞ。もう少し落ち着いてだな……」
「ツイン。変」
「ブレディーまで……いやいや、ブレディーはこういうのいつも通りだな」

 獣落ちとやらのせいで獣になって、本来そうなると神魔化はできないってことか? 
 しかし出来てる。怖くて重ね掛けはしたくないが……さっきの獣の形態になれるのか? 
 
「んんーーー、なんか獣の時は痛みが酷くてどんな感じだったか」
「可愛かった」
「可愛い感じなのかそうか……おいおい、それは違うだろ、獣だぞ?」
「可愛かった」
「だめだ、メルザが起きたら聞いてみよう。それにしても起きずによく眠ってる。
我が主ながら可愛い寝顔だな……」
「ツイン、エッチ」
「なんでそーなるんだ!?」
「メルちゃん、顔、いやらしく見てた」
「見てねーし! 可愛い顔って見てただけだし!」

 どっと疲れたが、ブレディーらしさが戻っていてほっとしている……場合ではなかった。
 色々確かめなければいけないことがある。

「なぁブレディー。試練って最初の試練以外後どんなことがあるんだ? この門に着くまで虫がいるとこや
毒っぽい所があったんだけど」
「ここ、審判の門。ここ、抜けると、人格によって、試練内容、決まる」
「つまり、この門の先は本人次第によって試練の数が変わる?」
「そう。最大で三七五六四の試練」
「皆殺しっておい。そんな数の試練ああったら殺す前に死んでるだろ……」
「試練、考えるの、楽しかった」
「あ、ああ……一番少なくていくつなんだ?」
「? 多分、一」
「一か。つまりそれがブレディーを招来して戦う試練ってことか」
「そう。ブレディー、行きたくない。抵抗、してみる」
「メルザやセーレも入れる……のかな」
「きっと、平気。ブネ、通したから」

 今のメルザを守りながら、相当強いであろうブレディーをどうにかする……か。
 難儀だな。せめてみんながいれば……いや、ない力を頼ろうとしてもしょうがない。
 俺一人でどうにかしないといけないとは思ったが、この試練中問題が起こりすぎた。
 そもそもこんな事態そのものが試練って気がしてならない。

「んん……」
「メルザ! 気が付いたか?」
「あれ……ルイン。なんか少し、気持ちわりーんだ……俺様、変な夢みてたんだ
なぁ、本当にルインだよな。無事……でよかったよ……」
「メルザ、ごめんよ。俺のせいでお前の腕……」
「あれ、やっぱり夢じゃなかったんだな。ブネ様がくれたのか、これ。ちょっと変だけど感覚はあるぞ。
右腕じゃなくて左腕だから、慣れるかなー……」

 何も言わずメルザの左手をぎゅっとつかんだ。そして、少しでも気持ちが落ち着くようこういった。

「なぁメルザ。指輪って左の薬指にはめればいいんだよな」
「あ……そっか。そー考えればいいのか。ルイン」
「ああ。戻ったら指輪、作ってもらおうぜ」
「ブレディー、ファナ、サラ、ベルちゃん、メルちゃん。全部で、五個。ねんのため、十個?」
「婚約指輪コレクションでもするつもりか!? なんだ十個って」
「へへへ、最初の一つは俺様だから……な」
「メルザ? いや、眠っただけか。さっきよりずっと表情がいい。門を抜けてすぐ戦闘ってわけじゃないよな?」
「うん。先に、進む?」
「ああ。メルザもとりあえずは平気そうだ。さっさとこの場所からおさらばして、みんなでルーンの町へ
戻ろう!」
「ヒヒン!」

 セーレのいななきを聞きながら、巨大な門へ手を触れて押してみる。
 門に閃光が走り、ぎしぎしとゆっくり扉は開かれた。まぶしくて先は見えないが、俺はきにせず
門の先へ入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

錆びた剣(鈴木さん)と少年

へたまろ
ファンタジー
鈴木は気が付いたら剣だった。 誰にも気づかれず何十年……いや、何百年土の中に。 そこに、偶然通りかかった不運な少年ニコに拾われて、異世界で諸国漫遊の旅に。 剣になった鈴木が、気弱なニコに憑依してあれこれする話です。 そして、鈴木はなんと! 斬った相手の血からスキルを習得する魔剣だった。 チートキタコレ! いや、錆びた鉄のような剣ですが ちょっとアレな性格で、愉快な鈴木。 不幸な生い立ちで、対人恐怖症発症中のニコ。 凸凹コンビの珍道中。 お楽しみください。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

処理中です...