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第二章 神と人

間話 闇の賢者 ブレアリア

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「……闇と光は表裏一体。闇は光であり光はまた闇である。光無くして闇は存在せず、闇無くして
光は存在しない」
「……」
「汝に名前を授ける。ブレアリア……遠い言葉で兄弟・姉妹を現す。
汝はブレアリア。闇に対して強力な権限を持つディーン。
ブレアリア・ディーンと名乗るがよい」
「ゥェァィァ? ゥェァィァ」
「シャドーダインとして生を与えられた汝は、闇にしか生きられぬ。
神の尖兵よ。地上に住まい闇を見守れ。また、神の剣を守る役目も任命する」
「ェンェィ。ェンェィ」
「汝、未だその時にあらず。育ちきるまでこの神殿で過ごすがよい」
「ィンェン。ァンシ」

 ブレアリアが創造され二十年程立った。それまでブレアリアに何かを教えてくれるものはない。
 一重に闇の中で育つ。交わした何者かの言葉だけが己の知る言葉。
 そこから多くを学び取るため、二十年もの間考えていた。

「汝、闇。闇と光。表裏一体。ブレアリア・ディーン。兄弟? 姉妹?」
「随分と成長したようだ、ブレアリア・ディーンよ」
「……神?」
「汝、神の尖兵として地上へと赴く時が来た。汝を守る存在を受け渡す。
それと賢者の石、これを託す。多いに知識を得よ。これは神殿では使用出来ぬ。
汝地上の闇へと赴き多くを吸収せよ。汝の役目は伝えた通り。闇を見守り、神剣を守れ」
「守る。見守る? ……知識。賢者の石?」
「さぁゆけ。保護膜は既に張った。よいな。光に触れてはならぬ。
闇を彷徨い闇を生み出せ」
「ぁ……」

 ブレアリア・ディーンは突如浮かび上がり闇へと放り出された。
 無意識で彷徨う感覚。自分は何なのか、どうなっているのかなど何もわからないまま。
 ただその闇の中で、賢者の石を握りしめじっと知識を願い続けた。
 多くの知識がブレアリア・ディーンへと流れ続けた。
 永劫重なる闇の中、ブレアリアは数百年知識を吸収し続けていた。
 賢者の石は無限にも続くといわれるほどの知識を得る石。
 例えるなら世界中を埋め尽くす書物を読み漁るようなもの。
 だがブレアリアはひたすら知識を得続けた。彼女の存在は闇。
 光が差し込まない闇の中では、永久にそのまま知識を得続けてしまう。

 そんなブレアリアが、闇から逃れ誰かと接したいと思う知識があった。

 それは【人】

 人という存在。強い意思を持ち、自ら考え行動し、役割を与えられ生きている。
 数十年程で寿命を全うし、何をなしたかを考える種族もいれば、数百年生き
ながらえ、何も得ず亡くなる種族もいる。

 賢者の石から知識を得れば得るほど、不思議な感覚だった。自分とはまるで異なる存在。
 自分を創造した神とも違う存在。
 人を見てみたい。それは賢者の石から与えられたブレアリアが初めて持つ、欲だった。
 
「見たい。実際に。でも、人、闇だと、見えない? 真っ暗。困った。それに、創造主。
大事な事、伝えて無い。神剣、誰から、守る? 失う、可能性、あって、初めて、守るもの」

 ブレアリアは考え、決意した。地上に闇を作り、自ら支配する場所とすることを。
 賢者の石より多くの知識を得たブレアリアは、自らの保護膜に意思を与えた。
 その意思は、物語で女性をしつこく追い回す軽い男。
 この物語が大好きになったブレアリアは、さっそく保護膜に同じ名前を付けてみた。

「汝、今日から、ドルドロス」
「え? あっし、生まれたんすか? やったっす! うへへぇ、可愛い女の子……じゃないっすね。
幼子だったっす」
「汝、女、好き? 成功? 失敗?」
「大好きっすよ! それで、生み出したあんたは一体何者っすか?」
「ブレアリア・ディーン。汝、覚えて」
「ブレア……長いっすね。ブレディーでよくないっすか?」
「ブレディー? なぜ?」
「覚えられないからっす! その方が楽っす! 軽くいきましょう!」
「ブレディー。ブレディー……わかった。今日から、ブレディー。汝、ドルドロス」
「それも長いっす!」
「……ドルドー」
「それでいきましょう! さて、それじゃどうしたらいいっすか?」
「待って。闇以外、ドルドーも、ブレディーも、生きられない。そのまま、出たら、死ぬ」
「ひえー!? あっしの体ってそんなもろいんすか!?」
「そう。ドルドー、雑魚。弱い。すぐ死ぬ」
「ひどいっすー! この子絶対毒舌っす!」
「ブレディー、強い。最強。毒より、強い」
「いやそういう意味じゃないんすけどね」
「……? ドルドー、生まれたばかり、なのに、知識?」
「そーいやなんであるんすかね? 自分の存在よくわからないっす」
「賢者の石、凄い。地上でも、研究」
「それより、ブレディーは一体何者なんすか?」
「……わからない。ブレディー、気づいたら、一人。創造主は、神? わからない」
「そうなんすか。けど、あっしの役目はどうやらブレディーを保護する事みたいっすね。
ちゃんと守ってやるっすよ!」
「別に、いい。ブレディー、強い」
「ひどいっすー!」
「ただ、話相手、欲しかった。嬉しい。楽しい。好き」
「案外、寂しがり屋だったんすね」

 ドルドーを手に入れたブレディーは、賢者の石から得た知識を用いて、トリノポートの一角を
闇へと変える。
 その場所こそ、後の三夜の町となる場所だった。
 

 ……生まれた過去の思い出を思い返していたブレディーは、天を仰ぎながら
ルインの獣の手に抱きしめられるようにしながら横になった。

「ずっと、一緒がいい。暖かい、ここ。ツイン、とても、温かい。形が、変わっても、光の、よう。
ブレディー、光、手にしちゃ、いけないのに。離れたくない。でも……」
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