356 / 1,085
第二章 神と人
間話 闇の賢者 ブレアリア
しおりを挟む
「……闇と光は表裏一体。闇は光であり光はまた闇である。光無くして闇は存在せず、闇無くして
光は存在しない」
「……」
「汝に名前を授ける。ブレアリア……遠い言葉で兄弟・姉妹を現す。
汝はブレアリア。闇に対して強力な権限を持つディーン。
ブレアリア・ディーンと名乗るがよい」
「ゥェァィァ? ゥェァィァ」
「シャドーダインとして生を与えられた汝は、闇にしか生きられぬ。
神の尖兵よ。地上に住まい闇を見守れ。また、神の剣を守る役目も任命する」
「ェンェィ。ェンェィ」
「汝、未だその時にあらず。育ちきるまでこの神殿で過ごすがよい」
「ィンェン。ァンシ」
ブレアリアが創造され二十年程立った。それまでブレアリアに何かを教えてくれるものはない。
一重に闇の中で育つ。交わした何者かの言葉だけが己の知る言葉。
そこから多くを学び取るため、二十年もの間考えていた。
「汝、闇。闇と光。表裏一体。ブレアリア・ディーン。兄弟? 姉妹?」
「随分と成長したようだ、ブレアリア・ディーンよ」
「……神?」
「汝、神の尖兵として地上へと赴く時が来た。汝を守る存在を受け渡す。
それと賢者の石、これを託す。多いに知識を得よ。これは神殿では使用出来ぬ。
汝地上の闇へと赴き多くを吸収せよ。汝の役目は伝えた通り。闇を見守り、神剣を守れ」
「守る。見守る? ……知識。賢者の石?」
「さぁゆけ。保護膜は既に張った。よいな。光に触れてはならぬ。
闇を彷徨い闇を生み出せ」
「ぁ……」
ブレアリア・ディーンは突如浮かび上がり闇へと放り出された。
無意識で彷徨う感覚。自分は何なのか、どうなっているのかなど何もわからないまま。
ただその闇の中で、賢者の石を握りしめじっと知識を願い続けた。
多くの知識がブレアリア・ディーンへと流れ続けた。
永劫重なる闇の中、ブレアリアは数百年知識を吸収し続けていた。
賢者の石は無限にも続くといわれるほどの知識を得る石。
例えるなら世界中を埋め尽くす書物を読み漁るようなもの。
だがブレアリアはひたすら知識を得続けた。彼女の存在は闇。
光が差し込まない闇の中では、永久にそのまま知識を得続けてしまう。
そんなブレアリアが、闇から逃れ誰かと接したいと思う知識があった。
それは【人】
人という存在。強い意思を持ち、自ら考え行動し、役割を与えられ生きている。
数十年程で寿命を全うし、何をなしたかを考える種族もいれば、数百年生き
ながらえ、何も得ず亡くなる種族もいる。
賢者の石から知識を得れば得るほど、不思議な感覚だった。自分とはまるで異なる存在。
自分を創造した神とも違う存在。
人を見てみたい。それは賢者の石から与えられたブレアリアが初めて持つ、欲だった。
「見たい。実際に。でも、人、闇だと、見えない? 真っ暗。困った。それに、創造主。
大事な事、伝えて無い。神剣、誰から、守る? 失う、可能性、あって、初めて、守るもの」
ブレアリアは考え、決意した。地上に闇を作り、自ら支配する場所とすることを。
賢者の石より多くの知識を得たブレアリアは、自らの保護膜に意思を与えた。
その意思は、物語で女性をしつこく追い回す軽い男。
この物語が大好きになったブレアリアは、さっそく保護膜に同じ名前を付けてみた。
「汝、今日から、ドルドロス」
「え? あっし、生まれたんすか? やったっす! うへへぇ、可愛い女の子……じゃないっすね。
幼子だったっす」
「汝、女、好き? 成功? 失敗?」
「大好きっすよ! それで、生み出したあんたは一体何者っすか?」
「ブレアリア・ディーン。汝、覚えて」
「ブレア……長いっすね。ブレディーでよくないっすか?」
「ブレディー? なぜ?」
「覚えられないからっす! その方が楽っす! 軽くいきましょう!」
「ブレディー。ブレディー……わかった。今日から、ブレディー。汝、ドルドロス」
「それも長いっす!」
「……ドルドー」
「それでいきましょう! さて、それじゃどうしたらいいっすか?」
「待って。闇以外、ドルドーも、ブレディーも、生きられない。そのまま、出たら、死ぬ」
「ひえー!? あっしの体ってそんなもろいんすか!?」
「そう。ドルドー、雑魚。弱い。すぐ死ぬ」
「ひどいっすー! この子絶対毒舌っす!」
「ブレディー、強い。最強。毒より、強い」
「いやそういう意味じゃないんすけどね」
「……? ドルドー、生まれたばかり、なのに、知識?」
「そーいやなんであるんすかね? 自分の存在よくわからないっす」
「賢者の石、凄い。地上でも、研究」
「それより、ブレディーは一体何者なんすか?」
「……わからない。ブレディー、気づいたら、一人。創造主は、神? わからない」
「そうなんすか。けど、あっしの役目はどうやらブレディーを保護する事みたいっすね。
ちゃんと守ってやるっすよ!」
「別に、いい。ブレディー、強い」
「ひどいっすー!」
「ただ、話相手、欲しかった。嬉しい。楽しい。好き」
「案外、寂しがり屋だったんすね」
ドルドーを手に入れたブレディーは、賢者の石から得た知識を用いて、トリノポートの一角を
闇へと変える。
その場所こそ、後の三夜の町となる場所だった。
……生まれた過去の思い出を思い返していたブレディーは、天を仰ぎながら
ルインの獣の手に抱きしめられるようにしながら横になった。
「ずっと、一緒がいい。暖かい、ここ。ツイン、とても、温かい。形が、変わっても、光の、よう。
ブレディー、光、手にしちゃ、いけないのに。離れたくない。でも……」
光は存在しない」
「……」
「汝に名前を授ける。ブレアリア……遠い言葉で兄弟・姉妹を現す。
汝はブレアリア。闇に対して強力な権限を持つディーン。
ブレアリア・ディーンと名乗るがよい」
「ゥェァィァ? ゥェァィァ」
「シャドーダインとして生を与えられた汝は、闇にしか生きられぬ。
神の尖兵よ。地上に住まい闇を見守れ。また、神の剣を守る役目も任命する」
「ェンェィ。ェンェィ」
「汝、未だその時にあらず。育ちきるまでこの神殿で過ごすがよい」
「ィンェン。ァンシ」
ブレアリアが創造され二十年程立った。それまでブレアリアに何かを教えてくれるものはない。
一重に闇の中で育つ。交わした何者かの言葉だけが己の知る言葉。
そこから多くを学び取るため、二十年もの間考えていた。
「汝、闇。闇と光。表裏一体。ブレアリア・ディーン。兄弟? 姉妹?」
「随分と成長したようだ、ブレアリア・ディーンよ」
「……神?」
「汝、神の尖兵として地上へと赴く時が来た。汝を守る存在を受け渡す。
それと賢者の石、これを託す。多いに知識を得よ。これは神殿では使用出来ぬ。
汝地上の闇へと赴き多くを吸収せよ。汝の役目は伝えた通り。闇を見守り、神剣を守れ」
「守る。見守る? ……知識。賢者の石?」
「さぁゆけ。保護膜は既に張った。よいな。光に触れてはならぬ。
闇を彷徨い闇を生み出せ」
「ぁ……」
ブレアリア・ディーンは突如浮かび上がり闇へと放り出された。
無意識で彷徨う感覚。自分は何なのか、どうなっているのかなど何もわからないまま。
ただその闇の中で、賢者の石を握りしめじっと知識を願い続けた。
多くの知識がブレアリア・ディーンへと流れ続けた。
永劫重なる闇の中、ブレアリアは数百年知識を吸収し続けていた。
賢者の石は無限にも続くといわれるほどの知識を得る石。
例えるなら世界中を埋め尽くす書物を読み漁るようなもの。
だがブレアリアはひたすら知識を得続けた。彼女の存在は闇。
光が差し込まない闇の中では、永久にそのまま知識を得続けてしまう。
そんなブレアリアが、闇から逃れ誰かと接したいと思う知識があった。
それは【人】
人という存在。強い意思を持ち、自ら考え行動し、役割を与えられ生きている。
数十年程で寿命を全うし、何をなしたかを考える種族もいれば、数百年生き
ながらえ、何も得ず亡くなる種族もいる。
賢者の石から知識を得れば得るほど、不思議な感覚だった。自分とはまるで異なる存在。
自分を創造した神とも違う存在。
人を見てみたい。それは賢者の石から与えられたブレアリアが初めて持つ、欲だった。
「見たい。実際に。でも、人、闇だと、見えない? 真っ暗。困った。それに、創造主。
大事な事、伝えて無い。神剣、誰から、守る? 失う、可能性、あって、初めて、守るもの」
ブレアリアは考え、決意した。地上に闇を作り、自ら支配する場所とすることを。
賢者の石より多くの知識を得たブレアリアは、自らの保護膜に意思を与えた。
その意思は、物語で女性をしつこく追い回す軽い男。
この物語が大好きになったブレアリアは、さっそく保護膜に同じ名前を付けてみた。
「汝、今日から、ドルドロス」
「え? あっし、生まれたんすか? やったっす! うへへぇ、可愛い女の子……じゃないっすね。
幼子だったっす」
「汝、女、好き? 成功? 失敗?」
「大好きっすよ! それで、生み出したあんたは一体何者っすか?」
「ブレアリア・ディーン。汝、覚えて」
「ブレア……長いっすね。ブレディーでよくないっすか?」
「ブレディー? なぜ?」
「覚えられないからっす! その方が楽っす! 軽くいきましょう!」
「ブレディー。ブレディー……わかった。今日から、ブレディー。汝、ドルドロス」
「それも長いっす!」
「……ドルドー」
「それでいきましょう! さて、それじゃどうしたらいいっすか?」
「待って。闇以外、ドルドーも、ブレディーも、生きられない。そのまま、出たら、死ぬ」
「ひえー!? あっしの体ってそんなもろいんすか!?」
「そう。ドルドー、雑魚。弱い。すぐ死ぬ」
「ひどいっすー! この子絶対毒舌っす!」
「ブレディー、強い。最強。毒より、強い」
「いやそういう意味じゃないんすけどね」
「……? ドルドー、生まれたばかり、なのに、知識?」
「そーいやなんであるんすかね? 自分の存在よくわからないっす」
「賢者の石、凄い。地上でも、研究」
「それより、ブレディーは一体何者なんすか?」
「……わからない。ブレディー、気づいたら、一人。創造主は、神? わからない」
「そうなんすか。けど、あっしの役目はどうやらブレディーを保護する事みたいっすね。
ちゃんと守ってやるっすよ!」
「別に、いい。ブレディー、強い」
「ひどいっすー!」
「ただ、話相手、欲しかった。嬉しい。楽しい。好き」
「案外、寂しがり屋だったんすね」
ドルドーを手に入れたブレディーは、賢者の石から得た知識を用いて、トリノポートの一角を
闇へと変える。
その場所こそ、後の三夜の町となる場所だった。
……生まれた過去の思い出を思い返していたブレディーは、天を仰ぎながら
ルインの獣の手に抱きしめられるようにしながら横になった。
「ずっと、一緒がいい。暖かい、ここ。ツイン、とても、温かい。形が、変わっても、光の、よう。
ブレディー、光、手にしちゃ、いけないのに。離れたくない。でも……」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。
永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。
17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。
その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。
その本こそ、『真魔術式総覧』。
かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。
伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、
自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。
彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。
魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。
【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる