上 下
347 / 1,085
第二章 神と人

第二百九十八話 特訓、対クリムゾン

しおりを挟む
「ツイン、いくよ。最も深き闇、クリムゾン。血の底に在りて歪より生じる力の一旦。
万物在りて己が力を欲するものの意思となれ。
闇の幻魔人クリムゾンダーシュ招来」
「ご命令を」
「訓練。特訓。ルイン・ラインバウトと」
「主の主と手合わせを?」
「そう。ツイン、強くなった」
「承知」

 十指の剣の男、クリムゾンダーシュ。漆黒の髪に青い瞳。
 紳士服のような赤い服をまとい平伏している。
 
「なぁあんた。俺とも対話できるのか?」
「可能です。主の主よ」
「主の主ってなんだ。俺がブレディーの主なのか?」
「ツイン。婚約者」
「はい? その呼び方はまずいぞ。こいつが誤解する」
「婚約者として改めて認定しました。主の主より、主の殿方へ変更。
殿方殿」
「おいそれじゃ山本山みたいじゃないか。下から読んだらマヤトモマヤだけどな!」
「御冗談を」
「俺が上段言ってるわけじゃないんだよな……」
 
 冗談言ってるのはそっちだろ! えーい、ラチがあかない。後は剣で語るのみだ。

「剣戒! まずはそのままでいくぞ」
「よいのですか、殿方殿。そのままで」
「さてどうかな。あんたの動きを見ていた限り、到底凌げるとは思えない」
「御明察。十剣ではなく五剣で参らせていただきたい」
「そんなに自信ありか……これでも強くなったんだけどね」
「ええ。しかしそのままでは……参ります。殿方殿」

 殿方殿って名前になっちゃったよ! まったく。もういいや! 

 右手にカットラスを抜き左手にコラーダを構える。
 クリムゾンはまだ平伏した姿勢をとったままだが、左手の五剣をきしませている。

 ……来る! 

「片爪の切裂 シャル・ブイ・ディセクティング!」

 かがみ状態から左足に反動をつけ、一気に間合いを詰めつつ五剣で美しく斬りかかってきた。
 籠手で回避する事など出来ないので、上段からの斜め切りにコラーダの斬撃を合わせつつバックステップ
を取る。そこから踏み込み追撃でくる下段からの切り上げ。両手だったらバックステップを刈られていた。

 上空に跳躍して回避しつつ、上空からデザートイーグルでけん制する。
 もちろんけん制にしかならないが、上空からでも十分攻撃可能というアピールにはなる。

「お見事。しかしその位置は間合い。シャル・アイソレーション!」
「なっ!? くっ……」

 分離した五指の剣が飛来して突き刺さる。まじかよ、着脱可能の武器か。油断はしていなかったが
どうみても指だと思ってた。

「くっ、やっぱこのままじゃ分が悪いか。回復するってのも含めて試すぞ! 神魔解放!」
「……殿方殿は人の領域を越えましたか。ならば改めて十指の剣で参る」
「今度はこっちからいくぞ。赤星の矢群・爆!」
「む……アニヒレーションズ!」

 無数の赤星の矢を斜め上空から降らせる。一つ一つが破壊されるたび、小規模爆発を起こす。
 連発出来なかったビノータスの矢も、この形態なら連発できる! 
 爆発中に後退しながらコラーダの斬撃を放ち、再度クリムゾンへ後方から向き合う。

「こっからが遠距離攻撃の本番だ! 赤海星の千波狂濤センパキョウトウ!」

 幾重にも重なる荒波が爆発している箇所へ襲い掛かる。クリムゾンはたまらず上空へ飛翔した。

「狙い撃ち。妖赤海星の圧縮赤海水コンプレッションガン
「ぐっ……お見事です。殿方殿」
「だからルインだっての!」

 圧縮赤海水をもろにくらって、地面にどさりと倒れるクリムゾン。
 俺も神魔解放して膝をつく。とりあえず一分なら意識を失わず、膝をつく程度で済んだ。
 だいぶ戦えるようになったが、まだまだやれる事が多くて整理がおいついていない感じだ。
 特にこの形態は真化より使い勝手がいい。まだ混ぜるな危険って話だが、同時併用できるように
なれば……その時はどうなるんだろう。

「それまで。ツイン。勝った。クリムゾン、調子、悪い?」
「いえ、殿方殿は遠距離が苦手そうだったが、克服されたようだ」
「あんた、やっぱりあえて後方に逃がしたのか」
「特訓とのご命令だったので」
「至近距離ならどうみても分があるしな、あんたの方が」
「それはどうでしょう。この後もまだ強くなられるのでしょう。羨ましい限り」
「あんたも修行とかしないのか?」
「私は主の招来魔人ですから」
「招来魔人? ってのだと修行しちゃいけないのか?」
「そういうわけでは……殿方殿は私に更なる強さを望まれるのですか」
「ん? ああ、そうなんじゃないか。あんた、今の俺より強いし。もっと強くなってくれよ。
また戦う機会も欲しいし。そのうちルーンの町で闘技大会もやりたいし」
「承知」
「ツイン。私の幻魔人、手懐けた」
「よくわからん存在だけど、忠義があって、言葉使いも丁寧でイケメンで最高じゃないか。
俺も幻魔人とか招来してみたい」
「ツインなら、きっと、できる」
「そんなことしたらファナとかサラとかが文句いいそうだけどな。これ以上呼ぶなーって」

 クリムゾンと対峙し、しばらく会話しつつ休息を取る。
 まだまだ神魔解放のコツもつかめていない。
 いよいよこれからティソーナ取得に向けての試練。
 気合が入る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

入れ替わりノート

廣瀬純一
ファンタジー
誰かと入れ替われるノートの話

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...