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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

間話 フー・トウヤの鬼特訓

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 カッツェルの町、シン・シーファンの道場にて。

「さぁもう一度いきますよ。盛者必衰!」
「グッ……何て重い技だ!」
「うおおお! ベルド、君に負けてはいられない!」
「俺もだ! うおおお!」

 巨大な気弾のようなものを撃ち込まれる二人は、自分たちの武器でどうにか防いでいる。

「いいですね。それが上限二の放出技、盛者必衰。体術の極意の一つ
破軍流という古来流派の継承技の一つです」
「説明を聞いている余裕がない! 打ち負けたら消滅しかねん!」
「まったくだ! ぐおおお」
「ええ、そうですね。ケルベロス程度であれば消滅します」
「さらっととんでもないことを言ってくれる! さすがに消滅したら母上でも治癒できん!」
「負けてたまるかああー--!」

 どうにか盛者必衰を弾き飛ばした二人。すでに息も絶え絶えだが……。

「では次にいきましょう。久しぶりに骨のある弟子ができてうれしい限りです。
次は肉体強化を……おや?」

 どさりと倒れた二人を見て、小首をかしげるフー。

「どうしました? 次の特訓にうつりますよ、さぁ!」
「いや……水、水を……」
「ああ、のどが渇いていたのですね。そういえばかれこれ六時間程でしょうか。
私も少し喉が渇いたので休憩しましょうか。五分程」
「ご、五分……先生! そういえば母上が美味しい料理を作ってくれるそうなので、食事にしませんか?」
「おお、人魚族が作る料理には大変興味があります! 行きましょう、こうしてはいられない!」

 マッハで消えるフー。彼は直情型である。二人はどうにか命拾いしたと、その場に大の字で倒れこんだ。

「やっぱりきつい。なんなんだあの異常な強さは」
「わからないが、人ではないだろうな。肉体があまりにも強固だ。ジオといいフー先生といい、恐ろしい
強さだ」
「エッジマール王子の事かい? そういえば何かを探しに来たけど、しょげて帰ってったな。はめられた
とかいってたけど」
「多分ニンファ王女を探しに来たんだろう。王女は今フェルス皇国にいるらしい。
これは秘密だがな」
「結婚相手としては申し分ないと思うが?」
「どうかな。何せニンファの親御さんが許しはしないだろう?」
「そうか。ルインの……彼はまた強くなっているんだろうな」
「ああ……生きているのは間違いない」
「なぁ……」
「ああ、そうだな。やるか」

 二人とも起き上がり、武器を手に取り構え打ち合いを始める。

『絶対に負けない!』

 激しく打ち合う二人を、フー・トウヤは遠目に微笑んで見ていた。

「さすがに動けないかと思いましたが、ちゃんと忘れてないんですね。
あなたたちはきっと強くなる。目標を目指すその姿、実に素晴らしい」

 いつしか道場の中は賑わい、彼らと離れた場所では、若者たちが熱心に稽古を始める。
 数年後、カッツェルの町は戦士の修行場として有名となる。
 高き目標を志す地として。
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