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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて
第二百九十三話 イネービュの声 舞踏会と武道会を告知される
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「……あれ? また失神した?」
「当たり前だ。いきなりあんなに暴れおって。しかしいい雄姿であった」
「……ブネよ」
「イネービュ様? まさか見ておられたのですか?」
「ああ。実によかった。人の子の切磋琢磨する姿は美しい」
「はい。私共一同、そう感じております」
「そこでだ。こちらへ導いた後、余興を設けようと思う。舞踏会と武道会を開催する。
全て連れて来なさい。ブネたちも参加するように」
「……はっ。まずはティソーナの許へ赴き試練を」
「ああ。私は支度を整えて待っている。楽しみにしているよ」
何だろう。心ゆさぶる声が聞こえた。あれが海星神イネービュの声?
冷たくもあり、温かくもある。そんな感じの声だった。しかもどこかで聞いたことがあるような……。
「お怒りかと思ったが、どうやらずっと見ていて楽しんでおられたようだ。
しかし我らも参加するとなると、このままの恰好ではよくないか」
「全員ただの布切れ一枚に見えるしな」
「ばかもの。これは神法衣だぞ。埃一つつかぬ神聖なるものだ」
「そうは言ってもなぁ。華がないというか」
「そうだな。一言でいうとダサい」
「無礼な! 海星に沈めるぞ!」
「いやもう沈んでないか、ここ」
「ええい、そうまで言うなら我々の着るものは貴様が考えろ! 当然よいものを考えるんだろうな?」
「俺が? なんで? 服なんて作れないし材料もないぞ?」
「お主の町に作れるものはおらんのか?」
「いるけど、ここ海底だし」
「外に泉があっただろう。あそこから戻れるようにしてやる。後で共に向かうぞ」
「はい? 神の遣いがルーンの町に来るとでも?」
「そうしなければならぬ事態になったのは、貴様らが戦ってイネービュ様を喜ばせたからだろう!」
「うぐっ。そういわれるとそんな気がしてきた。はぁ……フォニーに頼んでみるか。
全員分作れってなると大事だが……その前にティソーナを入手しないと。
いや……外の面々が待ちくたびれるか。先生もここにいるし」
「一度外の仲間がいる許へ送ってやる。そこで説明しろ」
意気揚々と神殿に向かった身としては、まだティソーナを手に入れる前に戻るのは心苦しいです。
しかし文句は言っていられない。そろそろパモの食料も少なくなっている頃だし、メルザは
お腹を空かせて目を回しているかもしれない。
「それじゃお願いするよ。我が主の許へ送ってくれ」
「俺はここにいてしばらくそっちの九人の誰かと戦いたいんだが」
「ダメじゃ! こやつらはこやつらでやる事がある。背丈の特徴は把握したか? ルインよ」
「あ、ああ。男か女かもよくわからないのもいるけど、まぁなんとかなるだろう。
ブネはどんなのがいいんだ?」
「外におる藍色の髪の女が身に着けているやつと似たものでよい」
「……あんなミニスカはくつもりか! イネービュ様びっくりしてひっくり返るぞ」
「ふぅむ、あれではよくないというのか? ならば髪を後ろで二つ流している女の……」
「どのみちメルザ以外ミニスカしかいねーわ! なんかいい感jの作ってくるからそっちはやっぱ任せてくれ!」
女三人組にはもう少しはじらいというものが必要だと教えよう……。
メルザやミリルを見習って欲しい。いやメルザはダメだった。ヨダレ戦士メルザだった。
「では一旦外へ送るぞ。二人共こちらへ来い」
「仕方ない。四層では大いに暴れてやろう」
「ほう。やはり骨格が似ておるな。ベルローゼよ。実によい骨の付き方をしておる」
「……気安く触るな」
「まぁよいではないか。久しぶりに嬉しいのだ。懐かしくてな」
「おーい早く運んでくれよ」
先生を一通り堪能したブネは微笑み、満足した様子だった。改めて近くで見ると表情があまりない。
微笑んではいたはずだが、端正な顔立ちは冷たくも見える。これが神の遣いってやつだからか。
俺と先生の肩に手をおくと、地面に輝く何かが現れ、浮かび上がった。
何の抵抗も感じずに、超高速で動き、どのようなルートを通ったかわからないが、いつの間にか
滝が眼前に見えていた。その滝を水にぬれる事なく出ると、一面の桜景色が広がっていた。
「どうやって出たんだ、今の」
「わからん。ふざけた能力だ」
「これでもイネービュ様の遣い。第二神格のブネ。あの場にいたどの者よりも神格が高いのだ。
当然であろう」
「やあ。戻って来たんだね。しかも変なところから、変な人を連れて」
「なっ!? フェルドランスの本物だと? ベルローゼでも似ておると思ったが、こやつは
本物のフェルドランスそのものだ」
「うん? 誰だい、この人」
「人じゃなくて神の遣いらしい」
「へぇ。面白そうだね。色々話してみたいな」
「おいおいリル。どうもフェルドランス、ベルーファルクってやつの
信者らしいからやめておいたほうがいいぞ」
「うん? 曾祖父をなんで君が知っているんだい?」
「話は後だ。まずはメルザたちのもとへ」
「信じられぬ。人の受け継ぐ力とは凄いものだな」
「そうやって受け継いでいくのが人なのさ」
俺たちはゆっくりと泉の方面へ向かっていった。
ティソーナを手に入れる戦いはこれからだ! と心に呼びかけた。
……はぁ。説明したらみんな呆れるよなー。
「当たり前だ。いきなりあんなに暴れおって。しかしいい雄姿であった」
「……ブネよ」
「イネービュ様? まさか見ておられたのですか?」
「ああ。実によかった。人の子の切磋琢磨する姿は美しい」
「はい。私共一同、そう感じております」
「そこでだ。こちらへ導いた後、余興を設けようと思う。舞踏会と武道会を開催する。
全て連れて来なさい。ブネたちも参加するように」
「……はっ。まずはティソーナの許へ赴き試練を」
「ああ。私は支度を整えて待っている。楽しみにしているよ」
何だろう。心ゆさぶる声が聞こえた。あれが海星神イネービュの声?
冷たくもあり、温かくもある。そんな感じの声だった。しかもどこかで聞いたことがあるような……。
「お怒りかと思ったが、どうやらずっと見ていて楽しんでおられたようだ。
しかし我らも参加するとなると、このままの恰好ではよくないか」
「全員ただの布切れ一枚に見えるしな」
「ばかもの。これは神法衣だぞ。埃一つつかぬ神聖なるものだ」
「そうは言ってもなぁ。華がないというか」
「そうだな。一言でいうとダサい」
「無礼な! 海星に沈めるぞ!」
「いやもう沈んでないか、ここ」
「ええい、そうまで言うなら我々の着るものは貴様が考えろ! 当然よいものを考えるんだろうな?」
「俺が? なんで? 服なんて作れないし材料もないぞ?」
「お主の町に作れるものはおらんのか?」
「いるけど、ここ海底だし」
「外に泉があっただろう。あそこから戻れるようにしてやる。後で共に向かうぞ」
「はい? 神の遣いがルーンの町に来るとでも?」
「そうしなければならぬ事態になったのは、貴様らが戦ってイネービュ様を喜ばせたからだろう!」
「うぐっ。そういわれるとそんな気がしてきた。はぁ……フォニーに頼んでみるか。
全員分作れってなると大事だが……その前にティソーナを入手しないと。
いや……外の面々が待ちくたびれるか。先生もここにいるし」
「一度外の仲間がいる許へ送ってやる。そこで説明しろ」
意気揚々と神殿に向かった身としては、まだティソーナを手に入れる前に戻るのは心苦しいです。
しかし文句は言っていられない。そろそろパモの食料も少なくなっている頃だし、メルザは
お腹を空かせて目を回しているかもしれない。
「それじゃお願いするよ。我が主の許へ送ってくれ」
「俺はここにいてしばらくそっちの九人の誰かと戦いたいんだが」
「ダメじゃ! こやつらはこやつらでやる事がある。背丈の特徴は把握したか? ルインよ」
「あ、ああ。男か女かもよくわからないのもいるけど、まぁなんとかなるだろう。
ブネはどんなのがいいんだ?」
「外におる藍色の髪の女が身に着けているやつと似たものでよい」
「……あんなミニスカはくつもりか! イネービュ様びっくりしてひっくり返るぞ」
「ふぅむ、あれではよくないというのか? ならば髪を後ろで二つ流している女の……」
「どのみちメルザ以外ミニスカしかいねーわ! なんかいい感jの作ってくるからそっちはやっぱ任せてくれ!」
女三人組にはもう少しはじらいというものが必要だと教えよう……。
メルザやミリルを見習って欲しい。いやメルザはダメだった。ヨダレ戦士メルザだった。
「では一旦外へ送るぞ。二人共こちらへ来い」
「仕方ない。四層では大いに暴れてやろう」
「ほう。やはり骨格が似ておるな。ベルローゼよ。実によい骨の付き方をしておる」
「……気安く触るな」
「まぁよいではないか。久しぶりに嬉しいのだ。懐かしくてな」
「おーい早く運んでくれよ」
先生を一通り堪能したブネは微笑み、満足した様子だった。改めて近くで見ると表情があまりない。
微笑んではいたはずだが、端正な顔立ちは冷たくも見える。これが神の遣いってやつだからか。
俺と先生の肩に手をおくと、地面に輝く何かが現れ、浮かび上がった。
何の抵抗も感じずに、超高速で動き、どのようなルートを通ったかわからないが、いつの間にか
滝が眼前に見えていた。その滝を水にぬれる事なく出ると、一面の桜景色が広がっていた。
「どうやって出たんだ、今の」
「わからん。ふざけた能力だ」
「これでもイネービュ様の遣い。第二神格のブネ。あの場にいたどの者よりも神格が高いのだ。
当然であろう」
「やあ。戻って来たんだね。しかも変なところから、変な人を連れて」
「なっ!? フェルドランスの本物だと? ベルローゼでも似ておると思ったが、こやつは
本物のフェルドランスそのものだ」
「うん? 誰だい、この人」
「人じゃなくて神の遣いらしい」
「へぇ。面白そうだね。色々話してみたいな」
「おいおいリル。どうもフェルドランス、ベルーファルクってやつの
信者らしいからやめておいたほうがいいぞ」
「うん? 曾祖父をなんで君が知っているんだい?」
「話は後だ。まずはメルザたちのもとへ」
「信じられぬ。人の受け継ぐ力とは凄いものだな」
「そうやって受け継いでいくのが人なのさ」
俺たちはゆっくりと泉の方面へ向かっていった。
ティソーナを手に入れる戦いはこれからだ! と心に呼びかけた。
……はぁ。説明したらみんな呆れるよなー。
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