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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

第二百九十一話 第七感

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 どのくらい気を失っていたのだろうか。

「目が覚めたか。簡単に失神しおって」
「失神……神を失うか。よくいったもんだ……先生は?」
「済んでおる……が少々困った事になった」
「知らないよー。怒られるよきっと」
「よい。悪さをするような者ではない。この者の意思もまた……」
「おい、余計な事を喋るな」
「別によいではないか」
「そんなことより神格化について教えろ。力の使い方がまるでわからん」
「それは俺も感じた。感覚が少し違うだけで、あんまり変わってないような気がする」
「慌てるでない。神格化したばかりの小童共。そのあたりもファルクやランスにそっくりだ」
「なぁ先生。俺思ったんだけど」
「奇遇だな。貴様もか」

 このブネってやつ。よほどファルクってやつとランスってやつがお気に入りだったんだな。
 ことあるごとにそいつらの名前を出す。どう見ても女神っぽい恰好してるし。いや、神の一部? とか
だから、天使……なのか? よくわからないな。

「では神格化について話してやろう。人との違いはいくつかある。
その形態であれば受けた傷は徐々に完治する。しかし過去に負った傷は治らぬ。
貴様らの時間で精々二日といったところか」

 治癒能力が高まるのか? 二日間前に受けた傷が神格化すれば治ると? とんでもないな。

「それから第七感全ての感覚を引き上げる」
「ちょっと待って。第七感? 五感じゃないのか?」
「視、嗅、聴、触、味、意、発。人が持つ感覚において、用いやすく優れない順番に表すとそうなる」
「視覚が最も優れず発? ってのが最も優れる感覚ってことか?」
「いいや、少し違うな。味覚までは使用することが出来ても、それ以降は感覚として
利用しているかどうかもわからないが、用途として優れているってことだろう」
「そうだ。人は視覚には優れぬ。雑多な動物の方が良い。嗅覚や聴覚もそうだ。人間が最も優れるのは
物を味わう味覚に他ならぬ。最も用いているのが視覚にも関わらずだ」
「確かに動物に比べれば人はいろんな感覚が鈍い……か。あまり考えなかったな。
第六感てのは言葉に出来ないような感覚だと思っていたけど、第七感に関しては全くわからないな」
「意覚とは、意識を介在して発動する感覚。これは術に直結する。想像力と言えばわかるか。
他者を見るだけで想像し行動をとれる。文才者や天文学者など、感性豊かな者に見受けられる。
人が本来持つ強い感覚だが、利用するものは極僅かだ」
「シックスセンス……前世では聞いたことがあるけど、あやふやなんだよな」

 いまいちぴんとこないからこそ、シックスセンスの話は面白い。様々な形で表現されている。

「そして第七感、発覚とは……それら六つの感覚を含む、全ての感覚を引き上げる。
つまり視覚、嗅覚などだけではなく、平衡感覚、距離感覚、感知感覚……お主ソードアイとかいう
職についておったろう。その時に感じなかったか?」
「あれは視覚を無理やり引き延ばしたってことだったのか?」
「そうだ。不完全な発覚ではあるが、視覚を無理やり発覚で引き上げ、人の領域を越えさせたものだ」
「難しいが原理はわかった。つまり治癒能力と、第七感までを全て引き上げる力……か?」
「そこまでがいわゆる自ら神格化可能な仙人と言われる者たちが辿りつける所だ」
「え? それだけでも相当やばいのにまだあるのか」
「無数にあるが、第十神格の貴様ではその二つを覚えておけばよい。
それともう一つだけ加えるなら神話級アーティファクトの本来持つべき力を使用可能だ」
「……どういうことだ」
「ベルローゼよ。貴様がルインに託した黒曜石の剣は、貴様が持つのが適任だろう。
安心せい。星の力はすでに抜いておる。ルイン、この剣の名前は何であったか」
「フォーサイト。オブシディアン、フォーサイトだ」
「お主の祖父が最後に託した剣。海星に返すものは返してもらった。使いこなしてみよ」
「わかった。剣の返却を受け入れる」
「よし。そなたらちょうど神話級アーティファクトをそれぞれ一本持っている状態。
少し予定が変わってしまい、ベルローゼに大きな分があるが……戦ってみよ。
ルイン、その余興が終わったら、ティソーナの試練を受けてもらう」
「余興って言いきったよ先生……こいつ絶対ファルクとランスの戦いを再現したいーとか考えてますよね」
「間違いない。あたり一面吹き飛ばしてやろうか。暴れ切って粉々にしてやる」
「いいぞ。先生らしくなってきた。俺もうっぷんがたまってたところなんで、派手にやりましょう」
「おいブネとやら。神格化する方法を教えろ」
「貴様ら、なぜわしの考えを……既に五感以上を使いこなしているというのか? 
……ええい、まあよい! 解放も発動もどちらも同じ、アペレフセロスィだ」

 俺たちは向き合い、剣を構える。

『アペレフセロスィ』
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