異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

文字の大きさ
上 下
335 / 1,085
三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

第二百八十九話 ルインとベリアール

しおりを挟む
「目が覚めたか。調子はどうだ」
「……」
「喋らなくていい。俺の声が聞けて、言葉が理解できたなら、親指をゆっくり上げて見せろ」

 すっとルインは親指を上にあげて見せた。それを見てベルローゼは安堵する。

「今からブネとやらが話をする。お前と俺はそれを聞いて理解しないといけないらしい」
「……聞け、人の子よ。ゲンドールの世界の理を。
このゲンドールという世界は宇宙を包み、飲み込む世界。
宇宙域は海底を司る神たちにより四つの区域に支配された。
海星神イネービュが司る一の宙域、星々を司る銀河を中心に構成された、ネビュラ。
海冥神ネウスーフォが司る二の宙域、漆黒の冥、あらゆるものを飲み込む宙域、スーフォニア。
海炎神ウナスァーが司る三の宙域、どこまでも青く広がる海炎の域、ナスァール。
海底神スキアラが司る四の宙域、永劫白く輝く宙域、キアラズ。
四神の絶対神により、各宙域の神格が下回る神々は、使命を全うしあらゆる
世界、星、空間を動かす。
だが人の子よ。神とて好きなものもあれば嫌うものがある。貴様はいずこかの
星の下位神に嫌われた。
イネービュ様の分身体である我々全てが同じ意見だった。その神の企みまでは
わからぬが、絶対神に敵意を持って行動している。
ルイン、其方は本来完全に一から生まれ変わるはずであった。自由な鳥として。広い世界を見れる
はずであった。だが、歪められ、魂ごとゲンドールへと送られた。
冥府の管理人であり、奈落の管理者でもあるタルタロスがそれに気づいた。
宿し主を変え、道筋を変えさせたのはあ奴だが、そうしなければいったいどうなっていたか」
「タルタロスだと? あいつが神に近しい存在だとでも?」
「聞け、人の子よ。まだ話は終わっておらぬ。ルイン、そなたが入った魂は死んだ後の肉体。
かつて妾に産ませた子供の子孫。それが貴様だ。本来の名はベリアール。
ベル家の名前ではベルアーリという。
妾とはいえベルー家の血を引くもの。殺すことも出来なかったのだろう。
もし育ての者を訪ねたければ、アトアクルークの地を目指すがよい」
「……なぜこいつに不幸が訪れた。なぜ魂を改変する必要がある。神は何をしようとしている」
「ベルーロゼよ。神々同士が全てを把握しきれるわけではない。例え宙域を支配する四神といえど
できること、できないことがあるのだ。再び大陸にて神々が争えば、悪神が勝利するかもしれぬ。
様々な神の動きを感じられる今、イネービュ様は困っておられる。貴様らはその力となれ。
神魔となればそれこそ、悪神にも手が届くだろう。しかし神を殺すわけにはいかぬ。
退け、封印する術をブレアリアに託す。まず、マガツヒを封印するのだ」
「ベルーシンに憑いていた奴なら倒したはずだが」
「消滅させることは不可能。あれでも神だ。マガツヒ双方の神が何を思案しているかはわからぬ。
イネービュ様も不安視しておる。残魂の一部はタルタロスにより処理されたがな」
「……ならば別の質問だ。どうしたらこいつを、救ってやれる」
「タルタロスにより導きを変えたが故、ルインの魂を使用して何かを企てようとしていた
神の計画は失敗した。複数の悪神が動いている。救ってやる方法はない。
ルイン自身がどうにかせねばならぬ。
ベル家の血を引くものに魂を移したのは、星の力を使わせるためかもしれんな」
「やつに会わなければならん。フェルドナージュ様もそこにいる。わからない事が
多いうえ、フェルドナーガに動きがあるとまずい」
「ランスの孫か。その道、大きく分かれたようだな。しかしタルタロスは神の理のもと動いている。
誰かの指図など受けぬぞ……さて、ルインよ。黒曜石の剣を」
「……」
「まだ、喋れぬか。よい、そのままで。ベルーロゼよ。次は貴様の番だ。目を閉じ、じっとしていろ」
「……」
「ルインよ。安心しろ。お前の大切なものを奪ったりはせぬ。それよりお主、再びベリアールを
名乗るつもりはないのか」
「……」
「そうか。お主の名付け親。あれもまた数奇な運命を持つ者。お主に宿っている幻魔の力は
あの娘のものだ。それはもうわかっているな。本来は反発し合う力。それゆえ強大な力が生まれる。
だが多用するな。神魔の肉体といえどその力、使い過ぎればその身を滅ぼすと知れ」
「……」
「ふふ、こうして会ってみるとあの二人がここへ来たときの事を思い出すな。
ルインはファルクに、ロゼはランスに魂がよく似ておる。あれから数百年……か。
ルインよ。貴様の中に娘が多くおろう。早く子を作れ。あの娘たちを操った時に感じたが、どの娘も
真っすぐな思いだった。実に操りやすかったぞ。よい子を産むだろうな……そんな顔をするな。
期待しておるからな。さぁ、神魔化が始まるまでしばし、休むとよい」
「……ぁ」

 極わずかに声を出したルインは、そのまま深い眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ
ファンタジー
幕末最強の人斬りが、異世界転移。 令和日本人なら、誰しも知ってる異世界お約束を何も知らなくて、毎度、悪戦苦闘。 しかし、並々ならぬ人斬りスキルで、逆境を力技で捩じ伏せちゃう物語。 『骨から始まる異世界転生』の続き。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...