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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて
第二百八十九話 ルインとベリアール
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「目が覚めたか。調子はどうだ」
「……」
「喋らなくていい。俺の声が聞けて、言葉が理解できたなら、親指をゆっくり上げて見せろ」
すっとルインは親指を上にあげて見せた。それを見てベルローゼは安堵する。
「今からブネとやらが話をする。お前と俺はそれを聞いて理解しないといけないらしい」
「……聞け、人の子よ。ゲンドールの世界の理を。
このゲンドールという世界は宇宙を包み、飲み込む世界。
宇宙域は海底を司る神たちにより四つの区域に支配された。
海星神イネービュが司る一の宙域、星々を司る銀河を中心に構成された、ネビュラ。
海冥神ネウスーフォが司る二の宙域、漆黒の冥、あらゆるものを飲み込む宙域、スーフォニア。
海炎神ウナスァーが司る三の宙域、どこまでも青く広がる海炎の域、ナスァール。
海底神スキアラが司る四の宙域、永劫白く輝く宙域、キアラズ。
四神の絶対神により、各宙域の神格が下回る神々は、使命を全うしあらゆる
世界、星、空間を動かす。
だが人の子よ。神とて好きなものもあれば嫌うものがある。貴様はいずこかの
星の下位神に嫌われた。
イネービュ様の分身体である我々全てが同じ意見だった。その神の企みまでは
わからぬが、絶対神に敵意を持って行動している。
ルイン、其方は本来完全に一から生まれ変わるはずであった。自由な鳥として。広い世界を見れる
はずであった。だが、歪められ、魂ごとゲンドールへと送られた。
冥府の管理人であり、奈落の管理者でもあるタルタロスがそれに気づいた。
宿し主を変え、道筋を変えさせたのはあ奴だが、そうしなければいったいどうなっていたか」
「タルタロスだと? あいつが神に近しい存在だとでも?」
「聞け、人の子よ。まだ話は終わっておらぬ。ルイン、そなたが入った魂は死んだ後の肉体。
かつて妾に産ませた子供の子孫。それが貴様だ。本来の名はベリアール。
ベル家の名前ではベルアーリという。
妾とはいえベルー家の血を引くもの。殺すことも出来なかったのだろう。
もし育ての者を訪ねたければ、アトアクルークの地を目指すがよい」
「……なぜこいつに不幸が訪れた。なぜ魂を改変する必要がある。神は何をしようとしている」
「ベルーロゼよ。神々同士が全てを把握しきれるわけではない。例え宙域を支配する四神といえど
できること、できないことがあるのだ。再び大陸にて神々が争えば、悪神が勝利するかもしれぬ。
様々な神の動きを感じられる今、イネービュ様は困っておられる。貴様らはその力となれ。
神魔となればそれこそ、悪神にも手が届くだろう。しかし神を殺すわけにはいかぬ。
退け、封印する術をブレアリアに託す。まず、マガツヒを封印するのだ」
「ベルーシンに憑いていた奴なら倒したはずだが」
「消滅させることは不可能。あれでも神だ。マガツヒ双方の神が何を思案しているかはわからぬ。
イネービュ様も不安視しておる。残魂の一部はタルタロスにより処理されたがな」
「……ならば別の質問だ。どうしたらこいつを、救ってやれる」
「タルタロスにより導きを変えたが故、ルインの魂を使用して何かを企てようとしていた
神の計画は失敗した。複数の悪神が動いている。救ってやる方法はない。
ルイン自身がどうにかせねばならぬ。
ベル家の血を引くものに魂を移したのは、星の力を使わせるためかもしれんな」
「やつに会わなければならん。フェルドナージュ様もそこにいる。わからない事が
多いうえ、フェルドナーガに動きがあるとまずい」
「ランスの孫か。その道、大きく分かれたようだな。しかしタルタロスは神の理のもと動いている。
誰かの指図など受けぬぞ……さて、ルインよ。黒曜石の剣を」
「……」
「まだ、喋れぬか。よい、そのままで。ベルーロゼよ。次は貴様の番だ。目を閉じ、じっとしていろ」
「……」
「ルインよ。安心しろ。お前の大切なものを奪ったりはせぬ。それよりお主、再びベリアールを
名乗るつもりはないのか」
「……」
「そうか。お主の名付け親。あれもまた数奇な運命を持つ者。お主に宿っている幻魔の力は
あの娘のものだ。それはもうわかっているな。本来は反発し合う力。それゆえ強大な力が生まれる。
だが多用するな。神魔の肉体といえどその力、使い過ぎればその身を滅ぼすと知れ」
「……」
「ふふ、こうして会ってみるとあの二人がここへ来たときの事を思い出すな。
ルインはファルクに、ロゼはランスに魂がよく似ておる。あれから数百年……か。
ルインよ。貴様の中に娘が多くおろう。早く子を作れ。あの娘たちを操った時に感じたが、どの娘も
真っすぐな思いだった。実に操りやすかったぞ。よい子を産むだろうな……そんな顔をするな。
期待しておるからな。さぁ、神魔化が始まるまでしばし、休むとよい」
「……ぁ」
極わずかに声を出したルインは、そのまま深い眠りについた。
「……」
「喋らなくていい。俺の声が聞けて、言葉が理解できたなら、親指をゆっくり上げて見せろ」
すっとルインは親指を上にあげて見せた。それを見てベルローゼは安堵する。
「今からブネとやらが話をする。お前と俺はそれを聞いて理解しないといけないらしい」
「……聞け、人の子よ。ゲンドールの世界の理を。
このゲンドールという世界は宇宙を包み、飲み込む世界。
宇宙域は海底を司る神たちにより四つの区域に支配された。
海星神イネービュが司る一の宙域、星々を司る銀河を中心に構成された、ネビュラ。
海冥神ネウスーフォが司る二の宙域、漆黒の冥、あらゆるものを飲み込む宙域、スーフォニア。
海炎神ウナスァーが司る三の宙域、どこまでも青く広がる海炎の域、ナスァール。
海底神スキアラが司る四の宙域、永劫白く輝く宙域、キアラズ。
四神の絶対神により、各宙域の神格が下回る神々は、使命を全うしあらゆる
世界、星、空間を動かす。
だが人の子よ。神とて好きなものもあれば嫌うものがある。貴様はいずこかの
星の下位神に嫌われた。
イネービュ様の分身体である我々全てが同じ意見だった。その神の企みまでは
わからぬが、絶対神に敵意を持って行動している。
ルイン、其方は本来完全に一から生まれ変わるはずであった。自由な鳥として。広い世界を見れる
はずであった。だが、歪められ、魂ごとゲンドールへと送られた。
冥府の管理人であり、奈落の管理者でもあるタルタロスがそれに気づいた。
宿し主を変え、道筋を変えさせたのはあ奴だが、そうしなければいったいどうなっていたか」
「タルタロスだと? あいつが神に近しい存在だとでも?」
「聞け、人の子よ。まだ話は終わっておらぬ。ルイン、そなたが入った魂は死んだ後の肉体。
かつて妾に産ませた子供の子孫。それが貴様だ。本来の名はベリアール。
ベル家の名前ではベルアーリという。
妾とはいえベルー家の血を引くもの。殺すことも出来なかったのだろう。
もし育ての者を訪ねたければ、アトアクルークの地を目指すがよい」
「……なぜこいつに不幸が訪れた。なぜ魂を改変する必要がある。神は何をしようとしている」
「ベルーロゼよ。神々同士が全てを把握しきれるわけではない。例え宙域を支配する四神といえど
できること、できないことがあるのだ。再び大陸にて神々が争えば、悪神が勝利するかもしれぬ。
様々な神の動きを感じられる今、イネービュ様は困っておられる。貴様らはその力となれ。
神魔となればそれこそ、悪神にも手が届くだろう。しかし神を殺すわけにはいかぬ。
退け、封印する術をブレアリアに託す。まず、マガツヒを封印するのだ」
「ベルーシンに憑いていた奴なら倒したはずだが」
「消滅させることは不可能。あれでも神だ。マガツヒ双方の神が何を思案しているかはわからぬ。
イネービュ様も不安視しておる。残魂の一部はタルタロスにより処理されたがな」
「……ならば別の質問だ。どうしたらこいつを、救ってやれる」
「タルタロスにより導きを変えたが故、ルインの魂を使用して何かを企てようとしていた
神の計画は失敗した。複数の悪神が動いている。救ってやる方法はない。
ルイン自身がどうにかせねばならぬ。
ベル家の血を引くものに魂を移したのは、星の力を使わせるためかもしれんな」
「やつに会わなければならん。フェルドナージュ様もそこにいる。わからない事が
多いうえ、フェルドナーガに動きがあるとまずい」
「ランスの孫か。その道、大きく分かれたようだな。しかしタルタロスは神の理のもと動いている。
誰かの指図など受けぬぞ……さて、ルインよ。黒曜石の剣を」
「……」
「まだ、喋れぬか。よい、そのままで。ベルーロゼよ。次は貴様の番だ。目を閉じ、じっとしていろ」
「……」
「ルインよ。安心しろ。お前の大切なものを奪ったりはせぬ。それよりお主、再びベリアールを
名乗るつもりはないのか」
「……」
「そうか。お主の名付け親。あれもまた数奇な運命を持つ者。お主に宿っている幻魔の力は
あの娘のものだ。それはもうわかっているな。本来は反発し合う力。それゆえ強大な力が生まれる。
だが多用するな。神魔の肉体といえどその力、使い過ぎればその身を滅ぼすと知れ」
「……」
「ふふ、こうして会ってみるとあの二人がここへ来たときの事を思い出すな。
ルインはファルクに、ロゼはランスに魂がよく似ておる。あれから数百年……か。
ルインよ。貴様の中に娘が多くおろう。早く子を作れ。あの娘たちを操った時に感じたが、どの娘も
真っすぐな思いだった。実に操りやすかったぞ。よい子を産むだろうな……そんな顔をするな。
期待しておるからな。さぁ、神魔化が始まるまでしばし、休むとよい」
「……ぁ」
極わずかに声を出したルインは、そのまま深い眠りについた。
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