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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

第二百八十七話 第九、十の間 弱き者よ

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「はぁ……はぁ……ダメージ、負い過ぎた。殺すのが目的じゃないてのは本当かよ……」

 足がよく動かない。そりゃそうだ。あんな強烈なブレス、まともに受けたのは初めてだ。
 生きてるのが不思議なくらいだ。

「痛いけど……ここまで来たぞ。はは、イビンに笑われちまうな……情けない兄貴分だよ、まったく」
「弱き者よ。よくここまで来た」
「ああ。まだ九つ目だよな。今度は何と戦えってんだ。もうほとんど動け矢しない」
「弱き者に問う。強さとはなんだ」
「ははは……ここにきてその質問か。三匹の竜と戦うまではさ。戦って守る力が強さだって
そう思ってたんだ。でも、倒してわからなくなった」
「それはなぜだ」
「竜なんてそもそも反則的な強さだろ? コウテイやアデリー、ゴマキチにルーニー。結局
俺の力とはいえ、生命体かわからないけど、自分じゃない存在に助けられた。
そして竜を倒した。でも、また強敵が現れて、倒して、また現れて、倒して。それって永遠に続くだろ? 
平穏な暮らしを勝ち取れるのが強さだと思ってた。
でもいつまでたってもそうはならない気がするんだ」
「力は力を呼ぶ。強さは力とは違う。改めて問う。強さとはなんだ」
「……もう一匹竜を出してくれ。そこできっと答えがわかる気がする」
「その状態で戦うつもりか? ……いいだろう。トパージオ、ゆけい」
「グルオオオオオオオオオ!」
「ありがたいね。竜となんてそう簡単に戦えないってのに」

 しっかりと両足で立ち、トパージオと対峙する。
 初手から土のブレスを吐き出した。地面ごと土と化して埋もれていくのを、バネジャンプで回避する。

「はぁ……はぁ……もうちょっとで見えそうなんだよ。頼む」

 ルーニーを変幻せず、フォーサイトとコラーダの二剣で斬撃を放っていく。

「グルオオオオオオオオオ!」
「痛いよな。俺もだよ。お前は強い。俺も強くなった。対等より強い相手に挑み、そこから
成長していった。相対するものみな強かった。そこには……」

 再び土のブレスが来る。二剣を交差して構えた。

「赤閃! クロス……いや、トリプルだ! いけえええええええ!」

 クロスして放った瞬間、カットラスに切り替え一閃追加した。
 俺の両足はブレスから湧き出た土に貫かれ、崩れ落ちる。

「ぐう……これは強さなんかじゃない。ただ、戦ってるだけだ。それでもこうして格上と思う
竜に勝てるのは、帰りたい場所があるからだ」
「その気持ちこそ強さ。お前自身の思いこそが強さだ。それさえあればどんな難局でも……」

 パリーンという音とともに落下する。もう、着地なんて出来ない。
 落ちて床にたたきつけられた。

「ぐ……は……いてぇ……」

 正面に道が見えた。うつ伏せのまま、両手でほふくし前へ前へと進む。

「まだまだ……地上には、俺より強い……奴がいるんだ。あいつを守るためなら……
どんな化け物になってでも……守るんだ。それが俺を救ってくれた……あいつに報いれる
唯一の……手段なんだ」

 必死に前進した。足は動かない。それでもかまわない。戻ってみんなに元気よく伝えるんだ。
 竜を倒したぞ! って。実感した自分の強さを伝えたい。そして笑って喜ぶあいつがみたいんだ。
 今だけじゃない、ずーっとだ。また手をつないで頭を撫でてやりたい。よだれを拭ってやりたい。
 美味しそうに食事を取る傍で、食器をかたしてやりたい。すねた顔を見ていたい。
 あいつのために生きると決めた。あいつのそばにいられる、そのためならいつまでも成長し続けてやる。

「それが、俺の強さだあああああああああああああああ!」

 バネジャンプで一気に跳躍して、部屋に辿り着いた。

 部屋に入った瞬間、何者かに抱き留められ、俺は意識を失った。

「……よくやった、褒めてやる」
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