異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

文字の大きさ
上 下
322 / 1,085
三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

第二百七十六話 三層、それは美しい世界

しおりを挟む
「ブレディー、三層までどのくらいで到着するんだ?」
「もう少し。三層、海底神殿と、綺麗な泉。ブレディー、泉、休む」
「その間俺が海底神殿に行けばいいんだな。しかし、こうして闇の中にいると、俺が現世で生まれた頃のことを思い出すな」
「うーみーは広いーな、大きいーなー」
「カノン? その歌も知っているのか。前世と現世の記憶が入り乱れるな……どちらも
懐かしい記憶になってしまった」
「ツイン、現世、過去? 知りたい」
「それは私も気になるわね。メルザには話したことあるの?」
「いや、誰にも話した事じゃない。聞いても楽しい話じゃないぞ」
「知りたい。ツイン、過去。みんな、知りたい」
「そうか……じゃあ三層の泉とやらに着いたら、全員に話すよ。今のままだと
ベルローゼさんやメルザには聞こえないだろうし、突然話しても困惑するだろう」
「わかった。三層もうじき。そこから泉への道、綺麗」
「それは楽しみだな。今のところ地上ほど美しい世界ではないし。海底っていうより海が上にあったから
水族館の下から覗くやつみたいな感じだったんだよな」
「何それ? 面白そうね。帰ったらルーンの町に作ってみない?
「そうだな。ガラスの作り方をニーメに教えれば、簡単に作ってくれるだろう。
そういえばガラス時計を……いや、やめておこう。アルカーンさんが絶対夢中になる」
「君はアルカーンのお気に入りだからね。一生まとわりつくと思うよ」
「いいな。リルさんのお兄さんに気に入られるなんて。私、全然話してくれないのよ」
「あの人が興味を持つ話を持っていけば、カノンにもとりつくぞ。そしたらリルがやきもちを
焼くからやめときなさい!」
「え? う、うん。サラちゃんには気に入ってもらえてるんだけどね……」
「あら、私だけじゃないわよ。ここにいる、全員なんだから。ね? ベルディア」
「当然っしょ。私人魚族。あんたの歌、大好き。ずっと歌っていて欲しい」

 みんな、仲良くなれてよかった。ドーグルとレウスさんとイーファも頷き会っている。
 この三人はモンスター仲間でやたらと仲がいい。本当は馬もいるんだがなぁ……あいつは相変わらず
ヒヒーンだけだし。どうしたものか。


「もう着く。ドルドー」
「わかってるっすよ! 闇の泥籠!」

 展開された闇が溶けだしたと思ったら、籠のような形をしたものに、俺と先生とメルザが入っていた。
 それはゆっくりと高度を下げていく。

 ブレディーが先ほど言っていた、綺麗という意味がよくわかった。
 俺たちは、少し遠目に見える美しい滝に目を奪われた。
 キラキラと七色に光る滝を見ながら、ゆっくりと沈むように下へ落ちていく。

 ゴォーーと音を奏でる巨大な滝の下部分には、青銀色の神殿が、ひっそりと
建っていた。
 間違いない。あれが海底神殿。泉はまだここからでは見えない。

「凄いな……この世界で初……じゃないか? 滝を見るのは」
「ああ、すげーぞ! あれ、滝っていうのか? 俺様はじめてみた! すげー!」
「自然が起こす美だ。実にいい。おい、菓子はないのか。あれを見ながらベルディスと
談笑したいものだな」
「残念ながらありません。でも、師匠と先生が談笑しているのを見ているのは好きです。
二人共、本当に美味しそうに焼き菓子とか食べてくれますからね」
「ふっ……戻ったらメロンパイ? というのを作ってくれる約束だったな。楽しみにしているぞ」
「はて、そんな約束したっけかな……かかしにメロンを託した時の話を聞かれていたか……」

 ついに話していないメニューまで耳にし出した先生。どんだけ甘い物食べたいんだよ! 
 俺も食べたいから作るけど! パイ生地作る方が骨なんだよなぁ……妖牛クリームとやら、地味に高いし。

「そろそろ地面が見えてきた……えっ? あの木……桜じゃないか? 
「ルイン、本当? あの歌に出てくる? やよいの空は 見わたす限り
かすみか雲か 匂いぞ出ずるいざやいざや 見にゆかん」
「そう、その桜だ。外に出て感じたこの気候。確かにこの環境なら桜が咲いてもおかしくないが……」
「綺麗。紅色の花は沢山見てきたけど、あんな淡い色……何色っていうのかしら」
「ピンク色……いや前世ではこの色自体が桜色と呼ばれる、世界でも屈指の人気を誇る伝統の木だ。
年に一度、ある時期にしか咲かない。儚く、美しい。そしてとてもいい香りがするんだ。
そうだ! あの葉でくるんだ伝統の食べ物……いやしかし、コメがないんだよなぁ。
なぁブレディー、コメってわかるか?」
「コメ。コメ。知らない」
「待てよ……いや、コメではなく稲ならどうだ?」
「稲。沢山、ある。地上。大陸」
「本当か! 案内も可能?」
「可能。ツイン、何に、使う?」
「おお、ついに米の軌跡をたどることが……いやいやそう簡単には作れないが……だがそれなら! 
先生。あの桜の葉っぱがあれば、和菓子という変わったお菓子が食べれます。お茶に物凄くよくあう
やつです」
「必ず持ち帰る。例えあの木がモンスターであってもだ」
「木そのものを持って帰るつもりですか!? あ、でももしかしたらパモに収納できるのかな」
「パーミュ!」
「ならば切り倒して担ぐ必要はなさそうだな。手間が省ける」
「本当、パモには世話になりっぱなしですよ。物資を届けた時も、パモに入れてたから無傷だったし」
「エンシェントパルーム、海底、住処。いる」
「なんだって!? パモの仲間がこんなところに?」
「ぱみゅ?」
「そう。極わずか。地上、いたの、不思議。変」
「そういやパモは宝箱に入ってたんだよな。ウガヤの洞窟の。あれももしかしたら
メルザが呼んだものなのかもしれないな」

 そう話していたら、三層の地面に着地した。
 日本の春を思わせるようなその場所には、巨大な桜の木と、遠くに見える巨大な滝。
 これ以上ないほど美しい光景に、俺たち全員が圧倒された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...