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三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

第二百六十六話 妖真化会得

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「ル……イン?」

 メルザはとても驚いていた。そして不安に駆られた。
 目の前にいるのが本当にルインなのかわからない。
 蒼黒い長髪をなびかせ、右手にうねる水をまといながら両目は鋭く赤光を放ち、不気味な笑みを
浮かべている。左肩には真っ赤な羽を持つ鋭い眼光をした鳥が一羽とまっている。

「グアアアアア! 破壊、したい。何もかも……」
「ルイン、しっかりしろ、ルイン!」
「私怖いわっす! 離れるわっす」
「おい主よ。貴様がルインを抑えろ。俺は仕方がない、こいつを守っていてやる」
「わかった! 俺様のルインだ。しっかりしろ、あっ……」

 ルインに駆け寄り必死に片手でゆさぶるメルザ。今のメルザは片腕。義手を制御できなくなり
外したままだ。揺さぶるメルザの手を振り払い、敵を探すようにあたりを見回すルイン。

「今回は関与していないようだな、あの時の奴は。純粋な妖魔化。それも本来魔族としての血を濃くした
形態。このままじゃ暴れるか……」
「俺様の手、振り払った……ばか、ルインのばか、ばかばかーー!」

 勢いよくルインに飛びつきとめようとするメルザ。初めて拒絶された気分だったのだろう。
 両目から沢山涙が出ていた。それでも振り払われ、今度はルインの正面に手を広げて立った。

「どんな時でもルインは俺様の子分だ! だから……」

 メルザの右足を刀状になったソレが貫いた瞬間だった。

「アアアアアアアアア! しっかりしろ俺エエエエエエエエエエエエ!」

 ルインは左拳で自分の顔面を思い切り殴り倒した。相当な威力だったようで、そのまま
右の壁まで吹き飛び激突する。
 吹き飛んだルインの方にも刀状のソレらは攻撃を開始した。

「グッ……「赤海星吸盾、ルーニー! メルザを守れ」
「ホロッ!」
「ル、ルイン。痛いよ。足のケガじゃない。ルインに拒絶されたら痛いよ。いやだよ……」
「もう大丈夫だ。カノン、傷の治療を……おまえ、カノンか?」
「ルインの力があふれてくるの。私たちも、止められない感情に飲み込まれそうだった」
「この状態から僕が真化すれば、君以上の存在になるかもね」
「主、大主は私たちが守るわ。この力、使いこなしてみせる!」
「ブレディー、強すぎるから、留守番」
「あっしもっすよ!」
「みんなありがとう。だが今は俺の力で戦わせてくれ。先生に怒られてしまう」
「ふっ、その通りだ。さぁ見せてみろ。この程度の雑魚では相手にならんだろうがな」

 雑魚って。宙に浮かぶ秋刀魚。こいつら相当固いし速いし数が多い。
 でも、やっと完成した真化……成程、こりゃ強すぎる。出来る事の格が違うって感じだ。

 メルザの足を突き刺した奴は、ルーニーが華麗に嘴で弾き飛ばし、打ち合っている。 
 真っ赤な羽を持つルーニーに少し驚いたが、ルーニー一羽でそいつ一本が限界のようだ。

「カノン、先生の方へメルザを連れていけるか?」
「うん。クインとニーナ、どっちも実体化できるわ……これならメルザさんくらい抱えて
空中を飛べるわ」
「うっ……つつ、ルイン。後でちゃんと……」
「ああ。お詫びは何でもする。ありがとうメルザ。これでまた俺は強くなれた。剣戒! 驚、懼」

 二本のコラーダを呼び出し、二刀で構える。赤海星吸盾を展開させているので、数本はオートで攻撃を防げる。こいつは術を吸い込み力と替える盾だが、そこまでの耐久値はないようだ。
 妖力の消費も結構激しい。多用はそこまでできないか。
 正面の群れ、一気に蹴散らすには……「赤海星の……シーザー師匠、今こそ技を試します。
巨爆烈牙剣ギガバースソード!」

 二つの分厚い斬撃を正面に放った。壁ギリギリ上空一杯で前方を飲み込むそれは、秋刀魚っぽいそれらを尽く落としていった。

「ベルディスの技か。見事だ」
「まだまだ、きついですね……広いスペースで戦ってみたいです……」

 ふっと力が抜ける感覚があったが、ベルローゼさんが俺を支えてくれた。
 真化の力を確実に引き出せれば、色々な戦い方が出来るようになるかもしれない。
 自分一人の戦い方と、みんなの力を合わせた戦い方。どちらも覚えていこう。
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