異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

文字の大きさ
上 下
306 / 1,085
第四章 戦いの果てに見出すもの

第三部開始直前 始動話 願いを込めて、僕は強くなる

しおりを挟む
 三夜の町が崩壊し、ベッツェンが崩壊したトリノポート。
 各地でモンスターが襲来し、混乱が続いている。
 行方不明者も非常に多く、そこかしこで争いが起きている。

 イビンはルシアと共にベッツェンへ来ていた。一生懸命何かを探している。
 少数だがモラコ族も来ている。

「ムーラさん。やっぱり、見つからないよぉ……ルインたち」
「そうか。だが簡単に死ぬような者ではないだろう。あれほどに芯の強い者はそうそう
見た事が無い。今は無事戻る事を信じよう」
「うん。そうだね……ここでこうしてたってルインは喜ばないよね。
僕に出来る事を探さないと! ジャンカの森の拡張工事はどう?」
「あそこは材木となる木が多いうえ、加工がルーンの町で簡単に行える。
既に泉周辺は随分と開拓された。しばらくは暗室として利用できるだろう。わしらは
そちら側の作業に戻るからそろそろ引き上げるぞ」

 二人がそうして話している間に、ルシアが割って入る。
 上空から何か見えたのだろうか。

「おい! ありゃライラロとベルディスだぜ! やっと戻って来やがったか」
「え? ベルディスさんが? よかったー、これで泉周りはだいぶ安全になるのかな」
「どうかな。あいつらが落ち着いて一か所にいた試しがねぇ。また直ぐどっかに行くぜ」
「そうだった……ライラロさんは特にすぐいなくなるってルインが言ってたっけ」

 風斗車で海を渡り、崩壊したベッツェンへ勢いよく上陸した。

「おいライラロ。もっとゆっくり上陸できねえのか?」
「無理よ。共有化したままのミリル、物凄く重いのよ?」
「わ、わたくし重いのですか!? は、恥ずかしい」
「そりゃ竜一匹は乗せられねぇだろ……、風斗車がぶっこわれちまうぜ」
「ふん! ベルディスと相乗りさせてやっただけでも感謝して欲しいものね。
ミリルじゃなきゃおっぽり出してる所だわ」
「ありがとうございます、ライラロさん。今度お礼にドラディニア銘菓でも……」
「あら、やっぱりミリルは話がわかるわね。当然ベルディスの分も頼むわね」
「ほぉ。そいつぁ楽しみだな。あぁ、腹減ってきちまったぜ」

 何やら楽しそうに話す三人を見てほっとするイビン。
 飛び出していったミリルも一緒だったので、より安心した。

「……随分と派手に壊れたわね。もう修復は無理そうね。イーファも可哀そうに」
「あいつは城にこだわりなんてねぇだろ。ニンファさえ無事であればどうでもいいと思うぜ」
「そうね。あいつなら城の一つや二つ建てそうだし。それでルシア。バカ弟子たちはどこ?」
「ルインの奴に話しておきてぇことがある。全員ルーンの町なのか?」
「あのぅ、お二人とも。それが……」
「あん? おめぇは確かひよっこの坊主じゃねぇか」
「坊主じゃなくてイビンです! ……みんな行方不明で。
無事なのはルーンの町にいる人たちと、ハーヴァルさん、セフィアさんと僕らだけです」
「なんだと? あのベルローゼすら行方不明だとでも?」
「はい……フェルドナージュ様もです」
「信じられないわ……私より強い人までやられたかもしれないっていうの?」
「わかりません。三夜の町も壊れちゃって。避難民だらけなんです。だいぶ落ち着きましたけど」
「なんてこった。ライデンを相手している間にそんな事態かよ。こっちもライデンを仕留めきれなかった
かもしれねぇ。だが竜騎士の嬢ちゃんは救えた。それに奴もただじゃ済んでねえはずだ。
詳しい話を聞きてぇから一旦ルーンの町に行くぞ」
「う、うん。わかりました……ルインたちがいない間は僕らで町を守らないと」
「わたくし、ルインさんたちを探したい……」
「ダメよ。あの子らがこの現状の時にもしこの場にいたらなんていうと思う?」
「……逃げ伸びた人たちを助けてやって欲しい…ですわね」
「わかってるじゃない。あいつらなら大丈夫よ。私らのやる事はあいつらを探す事なんかじゃない。
探すだけならほら、乗り物に乗ってるルシアの役目よ。あいつ強運だし。
あいつで見つけられないなら、探しに行けないところにいるだけよ」
「そうなんですか? ルシアさんてそんなに……」
「おいおい、俺の話か? それよりイビン! てめぇわかってんだろうな。報酬。
ちゃんと用意しとけよ! 最低でも口紅だからな!」
「は、はいぃ! わかってます!」
「やれやれね。さ、ここはルシアに任せて戻るわよ」
「おいライラロ。やっぱ俺ぁイビンと二人で修行しながら帰る。おめぇは先にミリルと戻ってろ。
ハーヴァルもいるならあいつから話聞いとけ」
「やーだやーーだーーー! ベルディスと一緒じゃなきゃやーーだーー!」
「わがまま言ってんじゃねぇ! ルーンの町で茶菓子用意して待ってろって言ってんだ!」
「何? 妻である私に手作りお菓子を用意して待つ妻を演じてもらいたいのね!? 
それならそうと言いなさいよね! さぁ行くわよミリル!」
「え? はい、わかりましたわ。それではお先に失礼しますわね」

 あっという間にぶっとんでいなくなるライラロさん。
 ベルディスは否定する余地すら与えられていない。

「はぁ……やっと解放されたか。おい坊主。おめぇは随分と鍛え甲斐がありそうだな。
昔の小僧を思い出すぜ。小僧と違って槍を使うのか?」
「僕、武器なんて全然使ったことなくて。これはたまたま宝箱から手に入れたんです。
なんか、うまく使えちゃって」
「こいつは……ガッハッハ。憧れの槍とは、傑作だな。いい武器持ってるじゃねえか。
おめぇ、これキゾナ大陸で手に入れたろ。懐かしいぜ。あいつら元気にしてやがるかな」
「え? 知ってるんですか、この武器」
「ああ、気にすんな。こっちの話だよ。んで、おめぇは槍を使う……でいいのか?」
「う、うん。僕臆病だから。離れて戦う方が会ってると思うんだ」
「そうか。それじゃその槍構えて俺と向き合え。距離はこれくらいでいいか」

 素手のまま二十歩ほど離れた距離に立つベルディス。何をするんだろう? 
 そんな距離じゃ槍でも攻撃できないし、素手ならもっと何もできない。

「槍の射程はここだ」
「え? 絶対届かないですよね」
「ああ。絶対届かないな、そのままだと。槍の先端を持ち前に出して構えろ」
「はい……うぅ、重いよぉ」
「ガッハッハ! 情けねえな、おい! それくらいはまず余裕で持てるようになれ。
それで長さはどれくらいだ」
「これでもまだ、人が五人から六人分です……ベルディスさんには届きません」
「いいや、届いてるんだよ。槍の恐怖がな」
「槍の……恐怖?」
「そのまま一回転できるか? 三百六十度だ」
「は、はい。やってみます! えいっ」

 ぐるっと回すように回転する。範囲一体を槍を前に出して回る。

「その範囲が最大射程になる。つまり槍の支配領域だ。
槍は近づかせないようにすることで最大の威力を発揮できる武器だ。
そして持ち手を調節すればその範囲を調整出来る。
それにだ。サブで武器を持つと……投擲して使える武器となる。
つまり坊主と俺との距離で槍を投擲すれば……それくらいなら今のお前でも届くだろう?」
「そうか! 投げる事も想定しての距離だったんですね!」
「いや、実際は投げる必要はねぇ。つまり与えるのは威圧だ。
投げたら届くかもと思う距離。その間合いで戦えるのが強みだ。
それに直線的な攻撃方法としても強い」
「僕、以前夢中で戦った時、かなり近い距離で魔吸鼠を倒したんです。
でも怪我しちゃって……」
「ほう、坊主は魔吸鼠を倒したことがあるのか。こりゃ評価を見直さねえとな。
臆病なただの坊主と思ったがよ。しばらくはみっちり鍛えてやる。まずは一通り武器を扱ってもらう。
いいな!」
「はい、よろしくお願いします! 絶対ルインみたいになるんだ!」
「ふん、その息だ。まずは歩いて帰るぞ」
「え? ここから歩いて泉までですか?」
「そうだ。仕方ねえから俺もついていってやる。ほらいくぞ」
「は、はいー! 怖いけど、がんばるんだ! 絶対強くなってルインを迎えるんだ!」

 こうしてイビンはベルディスと共に、ルーンの町へ戻るため、崩壊したベッツェンをあとにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...