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第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百五十九話 さらに紛れる者

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「フェル様、フェル様! 起きてくれよ。たのむよ」
「大丈夫だよ。止血も回復もすませた。君のおかげで大切な者を救えた。本当にありがとう」
「ぐっ……僕がもっと早く動けていれば……」
「リルさんのせいじゃないわ。あのモンスターの大群だって、放っておけば危なかったよ」
「……みな、無事か。メルザよ。まさか其方に助けられるとは夢にも思わなかったぞ。
うっ! ……侮っていた。あやつ、神に支配され動いておったわ。あれでは仕留める事が出来まい……。
恐らく分身体だ。急いでアルカーンの元へ向かわねば」
「無茶です! そのお体では!」
「だがこのまま放置すれば大きな禍となろう。あやつは恐らく、ルーンの町へも進入できる。
童の過ちは童でどうにかせねば」
「僕が……僕にやらせてください。フェルドナージュ様」
「リルが行くなら私も! お願いです!」
「……おぬしらでどうにか出来る相手ではない」
「一つだけ、方法があるかもしれないんです。それに賭けてみたいんです」
「それはまさか! フェルデシアと同じ事をするつもりか? 断じて許さぬ! 
お主を守るために犠牲となった母を……」
「その母と同じくしてお慕いしているあなたを、守るために行くんです。
どうかご容赦を。カノン。君も連れて行くわけにはいかないよ。
アネスタ、後は頼む」
「ダメだぞリル。一人でなんてぜってーいかせられない。
ルインはどうするんだ。ぜってー立ち上がれなくなる」
「それを何とか出来るのは、君じゃないか?」
「できねーよ。俺様だってそーだ。おめぇに死んでほしくなんかねーしよ。
だから……みんなで行こう! きっと何とかなる!」
「……君はルインの方へ行くべきだ。僕らはアルカーンを救いに行く」
「おっとお話中悪いな。敵じゃない、攻撃するな。死ぬぞ」
「お主はまさか、アルケーじゃと!? なぜここにおる」

 アルケーと言われた男は妖魔兵の変身を解き、元の姿に戻る。

「どうもフェルドナージュ軍の動きがおかしいのでな。混ざらせてもらった。
まさか地上へ簡単に出られるルートを手に入れているとは驚きだ。
タルタロス様からの指示だ。悪神と融合した存在を冥府へ落とす……とのことだ。
それから……ここにはいないか。まぁそのうち挨拶に行くとしよう」
「タルタロスが動くとでも? 信じられぬ……あやつが干渉するなど何百年ぶりだ」
「さて、こちらは俺一人でもいいんだが、フェルドナージュ皇、それからアネスタ、フェドラート。
一緒に来てもらおう。貴公らは来ても死ぬだけ。いらぬ」
「何だと! 僕だって戦える!」
「ほーう。このアルケーに勝てるとでも? 妖魔の格が違う事も理解できぬのか?」
「よせ、リルよ。お主らはルインの元へ行け!」
「……そういうことだ。ルイン……ね」
「けどよ、俺様だって……」
「大丈夫じゃ。タルタロスが動いた以上、もはやベルータスの命はない。
その後の処理は童の務め。これは命令じゃ……」
「別に俺はタルタロス様に従って動いているだけだ。それ以外興味はない。
貴公らを殺すなとも言われてはいない。気に入らなければ好きに動く。さっさと行け」
「クッ……主、カノン、行くよ。シャドウムーブ!」
「フェル様ー! ぜってぇ生きてまた……」

 三人はリルのシャドウムーブに乗り、ルーンの町へと向かった。

「さてフェドラート君、アネスタ君。そんなに警戒しなくてもいい。
あれくらい強く言わないとついてくるだろう?」
「……そうですね。あなたも真化したあの子には手を焼くでしょう?」
「いいや? あの程度の妖力しか持たない相手なら、まるで相手ではない。
お前も含めてだ。フェドラート」
「くっ。奈落ではそこまで力をつけた妖魔で溢れてるとでもいうのですか!?」
「その通りだ。奈落に平穏はない。環境が違いすぎる。
見ていろ……先兵の群れ、妖炎乱舞」

 突如として二千体程のアルケーが空中に現れ、移動牢を攻撃した! 
 全てのアルケーから豪炎が上がり、移動牢を焼き尽くした……。

「な、なんという力。あの要塞を一瞬で灰にした……」
「奈落なら、これくらい誰でも造作なくやる。底に落ちれば待つのは苦しみだけだ。さぁ行くぞ」

 移動牢を焼き尽くしたアルケーの軍団は姿を消していた。
 フェルドナージュ、フェドラート、アネスタは、アルケーを伴い、円陣の都を目指す。





 ――――

「なぁリル。さっきのやつ、なんなんだ?」
「冥暗のタルタロス配下。先兵のアルケー。それ以外の事は僕にもわからないんだ。
強い妖魔ってだけしかね……でもまさかタルタロスが動くなんて。狙いは何だろう」
「あいつもルーンの町に入っていたってことよね……どうしよう。私たちの町、安全じゃないのかな」
「いや、あいつ一人だけならフェルドナージュ様には勝てないはずだよ。
それにタルタロスがそこまで干渉してくるとは思えない。
あちらは任せても大丈夫だと思うから、急いでルインたちの方へ向かおう……やっと町に着いた。
戻っててくれればそれはそれでいいんだけどね」

 三人が町に入ると、多くの亜人、獣人で溢れていた。モラコ族が地下への案内を進めている。
 残っているのは地上でも平気な人たちのようだ。

「ハーヴァルさん。ルインたちは!?」
「リルじゃないか! あっちはもう片付いたのか? ルインたちはまだ戻っていない。
三夜の町はもうだめだ。でかいサイクロプスにバラバラにされた。きっとあいつの事だから
生きてると思ったが、お前さんが無事ってことはそういうことだよな」
「うん。彼が死ねば僕もカノンも消滅する。彼は無事だよ。
僕ら探しに行ってくる! ハーヴァルさんはここをお願い!」
「ああ。留守は任せろ。みんな相当混乱してる。気を付けていけよ」

 三人はジャンカの森方面へ出て、三夜の町を目指した。
 
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