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第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百五十七話 一時の休息を

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「イン……イン」
「うっ……」

 ……まだ眠いから寝かせてくれ。

「ルイン……ルイン!」

 ……なんだっていうんだ。起きなきゃどうなる。もう寝かせてくれてもいいだろ。

「起きないと、主のとこに行けない。間に合わなくなるよ!」

 あ、るじ……主、俺は、そう……いつでもあいつのために。

「うっ、あああ! ゲホッ」
「起きた! ルイン、大丈夫?」
「イ……ビンか。幻薬を……」
「うん。もう一個! これで全部だよ」
「済まない……ここ、どこだ?」
「ここはベッツェンの入口付近だよ」
「俺は確かギルドーガとの戦いで真化を……」
「汝、疲弊。妖魔なのに、弱い」
「そうだ、みんなは!? お前は確かブレアリアとかいう……」
「無礼。闇賢者。ブレディーと呼んで」
「ブレディー? ……後犬みたいなのもいたよな。それより……ファナたちは無事か?」
「意識、無。特殊な技、汝、使用」
「え? 意味がわからん。それよりここはベッツェンか。イビンが運んでくれたのか」
「違うよ。君が水に流されてたから、急いでミドーでそれに乗ったんだ。そしたらここに着いたんだよ。
ベルローゼさんも来てるよ」
「先生が? グッ……くそ、ギルドーガの斬撃を受けた時の傷か、これ」
「そんな体じゃ戦えないよ、いったんルーンの町に戻ろうよ、ね?」
「ダメだ。みんな戦ってるんだ。どう見てもこの町も普通じゃない。見ろ、あれ」
「兵士……あれ、スケルトンだ! うわぁ、怖いよぉ……」
「イーファ、ドーグル。どっちも出てこれるか? 偵察しないと……」
「汝、少し待て。二人とも疲弊。睡眠。封印内、力、温存」
「そうか……考えてみればウガヤの洞窟からずっと寝ないで行動してたんだよな」
「ウガヤ? 汝、ウガヤ。知る者?」
「あ、ああ。俺の力じゃないが」
「ウガヤ。超越した力。理を曲げる」
「よくわからないが、今はその話よりこの状況だ。先生は……」
「呼んだか?」
「うわぁ!? 毎回突然背後から現れないでくださいよ」
「知るか。貴様の元へ向かわねばならなくなった俺の身にもなれ。まったく、未熟者が。
まだ真化すらままならぬとは。先に進めぬぞ」
「面目次第も御座いません……何か強い破壊衝動に駆られて」
「……貴様の場合は特別そうなのかもしれん。一部始終を見ていた。闇賢者とやらの方が
より近くでみていたようだが?」
「秘密。内緒。知らんぷり」
「まぁいい。貴様は取り込んだ者を使う術が非常に高い妖魔のようだ。力の制御が出来れば、ただの真化
でも、十分な戦力になるだろう」
「ただの真化? それより上があるっていうんですか? あれだけでも全然制御出来ないし、終わったら
ズタボロなのに」
「ああ。真化もまともに行えないうちは考えなくていい。修行を積むんだな。
さて……ここの状況だが、町民全員アンデッド化している」
「なんだって!? それじゃ……」
「もう滅んだと思った方がいいだろうな。もとには戻せまい……」
「くっ……ジムロの奴の仕業なのか」
「さぁな。なるべく戦闘を避けつつ城内へ踏み入ってみるか?」
「そうですね。イーファやドーグルが目覚めたら行きましょう」
「ぼ、僕も行くよ! 役にはたたないかもしれないけど、置いていかないで……」
「わかってるよ。お前は大したもんだ。勇気がある。三夜の町の住民、逃がすの手伝ってくれたんだろ」
「うん。脱出できる人はみんな、ハーヴァルさんとセフィアさんが見てくれてるはずだよ。
中に入れない人は泉の前でテント張ってるから」
「どれほどの人が死んだのかわからない。それでも助けられる命があって、よかった……」
「お前らも休め。俺が見張りをしてやる。どちらも途中で倒れたら足手まといだからな」
「そうさせてもらおう。先生、お願いします」

 俺とイビンは先生に見張りを任せて少し休息をとる。
 安心して休めるのは助かるが、先生は平気なのだろうか……などと聞けば怒られるのは目に見えてる
ので聞かない。

「汝、膝枕、所望?」
「してないって。お前もちゃんと休んでおけよ。疲れてるんだろ?」
「ドルドー、休息。汝ら、名前。教えて」
「そうだった。俺はルイン・ラインバウト。こっちはイビンだ」
「ルイン……インイン、そっちはつまらない。イビン」
「インインてなんだ!? あだ名か? あだ名なのか?」
「がーん。つまらないって……どうせ僕なんかつまらない……」
「インイン、面倒。インが二個でツイン」
「それならもうルインでいいだろ! はぁ……ちゃんと寝よう」
「ツイン、膝枕、所望。はい」
「だから望んでないって……なんで幼女に膝枕されなきゃいけないんだ……」
「汝、主。奉仕、必須」
「あーでも、これならよく眠れそう……だ……」

 俺はブレディーの膝枕で、一時の休息をした。
 みんな無事である事を祈って。
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