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第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百五十三話 父の仇!

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「見つけましたわ……よくも、よくもよくもよくも! お父様をーーーー!」
「っ! 小娘が。不意打ちが甘すぎる!」

 飛翔したミリルはルーの火炎と同時にライデンへ襲い掛かった……。



 ――――

「お父様が、亡くなった? 冗談ですわよね、冗談だと言って。お願い、サモン!」
「私が到着した頃にはもう……カーディナルドラゴン共々、悲惨な状態でした」
「……お父……様。そんな……私のたった一人の肉親は、もう、会えないのですね」
「血の文字でライデン、そう書かれていました」

 それを聞いた瞬間、ミリルは立ち上がった。悲しみの顔ではない。全身全霊を覆う、竜騎士の
怒りそのものだった。先の戦いで多くの竜騎士が亡くなり、ミディ騎士団は衰退していた。
 しかし竜騎士がいないわけではない。なぜ一人で戦いに赴いたのか。
 ライデンとの間に何かあったのかもしれない。でも今は……許せない。ライデン。
 トリノポートを苦しめる元凶でもあり、親の仇でもあるやつを必ず仕留めて見せる。
 父の死がきっかけか。はたまた怒りが引き金なのかはわからないが、彼女の眼には、竜騎士最大級の
強さである、竜眼が宿っていた。

「お嬢様、その眼は……ああ、ミディ騎士団長。あなたの娘さんは今、竜騎士として覚醒されたようです」
「ルー! シーブルー大陸よ、行くわ!」
「ルイー!」
「お嬢様! お待ちください! お一人では!」
「止めないでサモン。もうミディ騎士団は解散。あなたは自由に行動なさい。騎士団のみなには
ミディ騎士団の者を全て自由に使ってよい許可を……さようなら。今までありがとうサモン」


 飛翔するミリルの決意を見上げるサモンには、これ以上何もしてあげる事が出来ないと判断した。

 ――――

「黒い爪!」
「グッ……部分共有化か。だが、この程度!」

 ミリルの手がルーの巨大な手となりライデンを襲う。左頬をかすめ、ライデンが出血するが
極わずかなダメージしか与えられない。そのまま連続して矛を繰り出すが、全て躱される。

「ミディの娘か。まさか父より弱い分際で、このライデンに挑もうとは。いいだろう。
父の元へ送ってやろう。カウントレスハートレス!」

 二百をゆうに越える短剣がライデンの前に展開される。警戒して少し距離を取るミリル。
 ライデンが手を下ろすと一斉に短剣がミリルへ飛び交った! 

「くっ ……うわあああああああ! お父様、力を!」
「ほう、いつまで防ぎ続けるかな」

 数百もの短剣を、槍で撃ち落とし続けるミリル。
 ルーンの町で頂戴したこのアトゥア・イ・カフィカの矛に付与されている、鷹の目と瞬間の羽
両方の効力により、カルンウェナンの猛攻を防いでいる。
 だが……足に刺さり肩に刺さり、徐々に防げなくなってきている。

「ル、ピィー!」
「だまれ、無力なる竜よ。生殺与奪の鎖、ジャッジメントチェーン!」
「ルピイーーーーーーー!」
「ルー! いけない、このままじゃ……グッ。一矢報いる事もできないというの……」
「小娘が世迷言を。その程度の力でこの世の理となる存在をどうにかできるとでも思っておるのか」
「あなたは間違ってる! あなたが求める力はただ傷つけて奪うだけよ! あなたなんかに
平和が築けるわけないじゃない! よくも、よくも!」
「なら貴様の怒りをぶつけるだけの力もまた同じだ。己を悔いて死ね」
「究極幻術、古麒麟、水刃流乱斗」
「斧重殲撃!」
「ぐはぁっ、この技は……くっ……いでよブラックオリナス」

 ライラロとベルディスの奇襲攻撃がライデンに深いダメージを与えた。
 ライデンの右足が水の刃と化した麒麟に触れ、吹き飛ぶ。
 ライデンを守るようにして、目の前に突如巨大な黒スズメが現れる。

「おいおい、ご機嫌じゃねえか。やられた途端逃げだす素振りたぁよ! 探したぜ、ライデン!」
「よくも私らを騙してくれたわね。きっちりとその代価を払ってもらうわよ」
「ライラロさん! シーザーさんも! どうしてここに! お願い、逃げて!」
「逃げるかよ。竜騎士の嬢ちゃん、こいつぁつええ。おめぇの手には余る。一人で
突っ込むのはただ単純に死にてぇやつがするこった。許すわけねぇだろそんな事!」
「あんたね、もうルーンの町の住人なのよ? 何勝手な事してるのよ。あんたが死んだらみんな
どれほど悲しむと思ってるの? バカ弟子のあんな顔、二度とみたくないのよ! さぁ立ちなさい! 
こいつを倒して帰るわよ!」
「ああ……私にはもう、何も、何もなかったって思いたかったのに。お父様……私、お父様のためじゃなく
みんなのために、戦います! ドラゴニックデルト」

 ミリルとルーが重なり合い、美しい青と黒の甲冑を全身に纏い、綺麗な矛を携えた竜騎士がいた。

「ライデン、覚悟!」

 ミリルは超跳躍を見せる。グングンと上空へ上がり、その高さは千メートルほど飛翔する。

「ブラキュリアスピアーーーーー!」
「くっ、小娘が!舐めるなよ!」
「させるわけないでしょ! 水神のドーム!」
「カウントレスハー……」
「遅ぇ! 風斗烈斬斧!」

 ベルディスの斧がカルンウェナンを操る手を吹き飛ばした。

「グアアアアーーー! おのれぇーーー! こんなところで……」

 真っ黒な彗星の如く降り注ぐミリルの矛がライデンを貫き、倒れた。

「や……りました……わ」
「くっ、何かやべぇ! ライラロ、ミリル連れて引くぞ!」
「わかったわ! 乗って! 風臥斗!」

 ライラロの風斗車に全員乗り、急いでその場を後にする。
 倒れたライデンの場所にいた巨大な黒スズメが徐々に溶けていき、黒い闇が徐々に広がっていく。
 ライデンを包み込むとその場からフッと消えていなくなった。

「くそ、あいつの隠し玉か何かか? だがあれじゃ助からねぇはずだぜ!」
「わからないわ! 相手はあのライデンなのよ? 死んでも死ぬようなたまじゃないでしょう?」
「お二人……とも、来てくれて……ありが……と」
「喋るんじゃねぇ! てめぇは傷がふけぇ! だが安心しやがれ、俺とライラロがぜってぇ助けてやる!」
「何ベルディス? 私を差し置いて他の女の心配とかしてるわけ?」
「はぁ? 何でそうなるんだおめぇは! それより前見ろ前!」
「いやよ。私はベルディスしか見れないんだから」
「うおお、どけ! 俺が運転代わる!」
「あーんもう、ベルディスったらどこ触ってるのよー、もう!」
「持ち手に決まってるだろう! おいばか、変なトコ触るんじゃねぇ噛み殺すぞ!」
「まーたチューせがんでる、大胆ねぇ、他の女の前だっていうのにぃ」
「あーーー! くそ、こんなんだったらハーヴァルの野郎に押し付けてくるんだったぜ……」

 急いでシーブルー大陸を後にするため、シーザーは風斗車を素早く走らせていった。
 
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