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第四章 戦いの果てに見出すもの

第二百三十六話 大会議

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 昨晩は久しぶりにメルザと手をつないで寝た。朝起きてもメルザは手を放そうとしなかった。
 普段は寝坊助なのに今日は起き上がった……がやっぱり寝ぼけているな。
 義手の調子が悪いので今は片腕。ボタンを留めてやったり髪をとかしたりしている。

「……俺様やっぱりルインと一緒にいたい」
「それは俺も同じだ。だが今はお互い成長しないとな」
「……嫌な予感がするんだよ。もう置いていかないでくれよ」
「このルイン・ラインバウト。主を置いて行ったりしたことは一度もないぞ?」
「闘技大会の時、おいていったろ?」
「いいや。置いていったんじゃない。守ったんだ。俺も含めて全員が助かる
可能性を見出すために。あのままメルザとミリルがいたら、全員死んでいたかも
知れない。選択を誤まればきっと、誰も助からない。常に生きる最善を尽くす。
それがシーザー師匠から習った、戦士の務めだ」
「俺様を傍に置いてたら、戦えないのか?」
「違うぞメルザ。二人でどんな敵でも倒せるようになるために
今は別々に戦う」

 メルザの片手に俺の片手をあわせてぎゅっと握る。

「俺と主、二人の力を最高に強くしてみんなを守ろう。
メルザと俺こそ世界に勝るもののいない最強のパートナーとして」
「うん……わかった。そうだよな、俺様もっともっと強くならないといけないんだ」
「メルザだけじゃない。俺もだ。まだまだ弱い。コラーダ一本すらまともに使えてはいない」
「なぁルイン。その……」

 何も言わず、おでこにキスしてやった。

「今はこれで。口はまた、終わってからにしよう。その方が会った時に
やったぜ! って感じになるだろ?」

 ぷぅーっと口を膨らませながら赤くなるメルザ。
 可愛いやつめ。
 プイっと横を向き、起き上がって「飯いくぞー}とバタバタと出て行った。

「……悪いな。恐らく次の戦いはかなりハードだ。願掛けさせてくれ。
必ず戻って来るために……!」

 ルーンの安息所に行くと、過去で一番多くの人が集まる状況になった。
 それもそうか。ここにいないのはライラロさんと師匠だけ。
 幻妖団メル、そして妖魔国の重鎮、さらにキゾナ大陸の王子やトリノポートの王女までいる。

「ここまで人が集まると壮観だな……さて、現状の把握と作戦会議といきますか」
「うむ。状況の説明を。ルインよ、其方が取り仕切るのだ」

 ムーラさんに頼んで作ってもらったホワイトボードチックなものを出して説明していく。
 現在ルクス傭兵団の情報によると、円陣の兵士数万がトリノポートの各港町に向け進軍中。
 ロッドの町、カッツェルの町がある方面にも軍勢が向かっているという。
 トリノポートは三つ港町があるが、残りの一か所は向かった事が無い。
 現状で対応できるのはトリノポートとロッド、カッツェル方面だけだろう。

「俺は、シン師匠が心配だからカッツェルへ行きたいんだ」
「僕とベルディアはロッドの町へ。母と弟たちが取り急ぎ向かっているようなんだ」
「すみません! 会議の途中なんですが、父が……わたくしの父が!」
「ミリル、どうした? 何かあったのか?」
「ごめんなさい。まだわからなくて……急ぎドラディニアへ帰っても?」

 かなり取り乱している。勿論いいが気を付けて向かって欲しいとだけ伝えた。
 慌てて出ていくミリル。大丈夫だろうか。

「すまない。話を続けよう。ベッツェンの様子を見るのは俺とイーファ、ファナ、レウスさんにドーグルかな。パモはどうする?」
「ぱみゅ!」
「俺について来てくれるか。ありがとう、パモ」
「ぼ、僕も何か役に立てるかなぁ……?」
「イビンはもし、町の住民が危険だったら避難誘導してほしい。フェルドナージュ様!」
「なんじゃ、ルインよ」
「青銀蛇リングをこのイビンに貸し与える事、お許し願えますか?」
「構わぬ。それは其方にくれてやった物。自由に使うがよい」
「ありがとうございます。ミドー、でてきてくれ」
「シュルー」
「ひえーー、でっかい蛇だーー! 怖いよぉーー!」
「落ち着けイビン。ミドーは呼び出した者の言いう事をしっかり聞いてくれるいいやつだ」

 ミドーの体を撫でる。
「いつもありがとう、ミドー。お前には本当に世話になって感謝してる。
 しばらくはイビンを助けてやって欲しい。頼むぞ」
「シュルー」
「ぼ、僕なんかの言う事、本当に聞いてくれるのかな?」
「お前は俺が認めて仲間の命を預けた男だろう? きっと大丈夫だ」

 イビンに青銀蛇リングを託し、使い方を教えた。

「フェルドナージュ様。今後の妖魔国側の展開は?」

 そう尋ねると、フェルドナージュ様は語りだす。
 相当数の兵がいるが、主力以外はベルータスにまるで太刀打ちできないようだ。
 雑兵やモンスターを刈り取るのに数千の妖魔兵を導入するらしい。
 謁見の間帰り道に顔合わせした兵士たちをまとめて町への進入を許可した。
 一時的に通過用としてここを使わせてもらいたい事。
 今後この泉へそれらの兵士は足を踏み入れない事を約束してもらえている。

 ここを利用すれば知令由学園まで一気に奇襲出来る。
 向かうのはフェルドナージュ様、メルザ、リル、サラ、アルカーン、エッジマール、フェド
ラート、ベルローゼ、アネスタ、カノン。恐ろしい程強いメンバーで固められている。

「決戦は明後日。それまでは各々で自由に行動しよう。以上だ」
「ルイン君。伝えていた通り術を教えるよ。他にも彼女たちが受けるけど」
「ああ。しばらくバラバラになる。一人一人強くなっておけるととても助かるよ」
「はぁ。私はあんたと戦いたいっしょ。けどお袋にもあわないと」
「そのまま会って帰ってこなくてもいいのよ。私はフェルドナージュ様の一件が終わったら
すぐ戻ってくるけど」
「あら、おあいにく様ね。私はずっとルインと一緒よ。ルインの一部だし」
「ふん。私だって一部よ。何自分だけ見たいに言ってるわけ?」
「ずるいっしょ。私も封印して。今すぐ。ほら」
「おいおい、封印は遊びじゃないんだぞ……っておい、何してるベルディア!」

 勝手に封印指定して封印されやがった! しかも封印出来るのか? ベルディアは人間だろ? 

「やっぱ出来たっしょ。お袋は人魚族だからハーフだけど。何ここ快適」

 ということはベルドも人魚? そういや彼は幻術も使えるんだった。しかもかなりの腕だ。

「ベルディアは一緒にいかなくてもいいよ。僕だけで母の言伝を聞いてくるから」
「本当っしょ? じゃあ私もルインといるね」
「一人で平気か? ボルド。ロッドの町にもそれなりに兵士がいると思うけど、やつら
亜人には容赦ないぞ」
「大丈夫だ。ビスタやブルネイも来るしね。それに母は治癒において右に出る者はいない。
しかし父が来ないのは妙だ。あんなに夫婦仲がいいのに」
「いまだにベッタリっしょあの二人。見てて恥ず」

 夫婦仲がいいのはいいんだが。あれ……サラの顔が膨れてるな。

「なんで私だけいけないのよ! ありえないわ、フェルドナージュ様に抗議してくる!」
「おいおい、妖魔は全員終結だろう……勝手な行動が許されるとは思えないが」
「それよりそろそろ始めようか。あまり時間もないしね」

 そうでした。お願いします俺のペンギン! 出来てくれ造形術! 
 封印されている面々、それに表へ出てるファナ、ベルディア、それ以外に
ベルドとアネスタを連れ、東の彫刻場がある商業エリアへ移動した。
 後でサラや声をかけた者も来るだろう。
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