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第三章 知令由学園 後編
第二百十五話 妖魔の国でのお知り合い
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メルザ達が術の訓練をしている頃、リルとサラ、カノンは三人で妖魔の町へ来ていた。
「すごい綺麗な場所ね。ここがリルさんとサラさんの故郷なの?」
「正確には少し違うかな。僕らのいた都はもう無いんだよ」
「そうだったの……私と同じなのね」
「けれどカノン。僕らにはもう、ルーンの町があるじゃない。あそこが僕らの故郷に
なるさ」
「そうね。私とルインの新居を用意しないと」
「それはダメだぞサラ。取り合いになって家が壊れる」
「なんでよー、別にいいじゃない家の一軒や二軒位」
ぷーっと膨れるサラにリルは少し困惑する。サラはルインが好きなようだがルインは
妹をどう思っているのだろうか……と。
「それでリルさん。今日はどちらまで行く予定なの? もしよければお城も見たいなーと」
「今日は僕が洋服を買ってあげるよ。 その後お城にも行こう」
「お二人さんは熱々ねー! 私ルインの方に行けばよかったわー……お兄ちゃん私のも買ってよね!」
「サラは自分で買いなよ。お金はちゃんと持ってるんだろう?」
「そりゃ散々傭兵の仕事をしたからあるけど、たまにはいいじゃない」
「はぁ……わかったよ。その代わりしばらくはちゃんとカノンを見てやってくれよ」
「はーい、わかったわ。カノンちゃんはライバルじゃないし、ちゃんと仲良くするわ!
そうだ、このネックチョーカーあげるね。紫と赤の色。クインとニーナを
結びつける色よ」
そう言って微笑むサラに、嬉し泣きしてしまうカノン。
「ごめんなさい、私そんなつもりじゃ……」
「違うの。嬉しくて……みんな本当に暖かくて。私も何か恩返し出来るように頑張るから」
「君が傍にいてくれるだけで、僕には十分恩返しなんだけどね」
「お兄ちゃん惚気すぎ! いこ、カノンちゃん!」
「おーいおいてかないでくれよー。あれ? あそこにいるのはアネスタじゃないか?」
鮮やかな緑の短めな髪で、少しボーイッシュな美しい女性が洋服屋の前にいた。
「おや、リルじゃない。ラートは一緒じゃないの?」
「彼は今地上にいるよ。任務……かな、一応。アネスタは何してるの?」
「買い物が終わった所だよ。サラも久しぶり。その子はお友達?」
少し隠れるカノン。やっぱりまだまだ慣れていないようだ。
「怖がらなくても平気だよカノン。彼女はフェドラートのお姉さん。少しボーイッシュな
所はあるけど優しいから。
アネスタと少し話がしたいんだ。サラ達は買い物しておいでよ」
「わかった。行こっ、カノンちゃん」
「はい。失礼します」
元気よくカノンを引っ張っていく。人が大勢いるところは苦手なのか、サラに隠れながら
お店に入っていった。
「それで。話ってあの子の事?」
「それもあるかな。もし僕に何かあったとき、あの子を守ってやってくれないか?」
「まるで何かが起こりそうな言い方だね。どうしたんだい?」
「ベルータスを退けてそれなりに月日が流れた。四皇国がそれぞれの均衡を保ってきたけど
このままじゃいられないと思う。僕はフェルドナージュ様を守らないといけない。
友達のとこにいれればいいけど、その友達も忙しいんだ。
他にも色々な友達が出来たけど、アネスタのようなタイプの女性はいないんだよ」
「そう。それなら私もその場所に行っていいの? ラートも
お邪魔してるなら、尚更挨拶しないとね」
「アネスタみたいな落ち着いた女性なら大歓迎じゃないかな。
ただ主とルインに許可を貰わないと入れないから、話しておくよ」
「フェルドナージュ様が興味を持たれる人物。凄く興味があるよ。楽しみにしてる」
「フェルス皇国で右に出る者はいない程氷術に長けた君が来れば、いいお菓子も作れそうだしね……」
「ん? お菓子?」
「いや、こっちの話だよ。気にしないで」
「お兄ちゃんー! お金ー!」
「呼んでるようだよ。それじゃまたね、リル」
「ああ。今度はルーンの町で会おう、アネスタ」
アネスタに別れを告げ、高い洋服代を払って、三人は
ペシュメルガ城に向かった。
「大きくて、青銀色でなんて綺麗なの……凄いわ!」
カノンの目がキラキラしているのに見とれているリル。
「……リルカーンか。何用だ」
「……だからびっくりさせないでよベルローゼ。カノンに城を見せてやりたくて。
だめかい?」
「用が無いのに入れるわけがなかろう。去れ……いや、そうだな。中に入れてもいいが
任務を手伝え。どうせ地上には行かぬのだろう?」
「いや、僕はカノンを……」
「ならカノン。貴様とサラでいい。俺と一緒に来い。無論褒美も出そう」
「私、やります! お世話になってるだけじゃいやなんです。ルインさんの先生なら
信用できますし」
「じゃあお兄ちゃんはこれ、ルーンの町に持って行って。私カノンちゃんと
もっと仲良くなりたいから。よろしくね!」
「え? 僕も……」
「早く持って行け。案ずるな、俺がいる」
「あれー、僕カノンとデートしてたはずなんだけどなぁ」
リルはサラに無理やり荷物を預けられ、一人とぼとぼと
泉からルーンの町に帰っていった。
「すごい綺麗な場所ね。ここがリルさんとサラさんの故郷なの?」
「正確には少し違うかな。僕らのいた都はもう無いんだよ」
「そうだったの……私と同じなのね」
「けれどカノン。僕らにはもう、ルーンの町があるじゃない。あそこが僕らの故郷に
なるさ」
「そうね。私とルインの新居を用意しないと」
「それはダメだぞサラ。取り合いになって家が壊れる」
「なんでよー、別にいいじゃない家の一軒や二軒位」
ぷーっと膨れるサラにリルは少し困惑する。サラはルインが好きなようだがルインは
妹をどう思っているのだろうか……と。
「それでリルさん。今日はどちらまで行く予定なの? もしよければお城も見たいなーと」
「今日は僕が洋服を買ってあげるよ。 その後お城にも行こう」
「お二人さんは熱々ねー! 私ルインの方に行けばよかったわー……お兄ちゃん私のも買ってよね!」
「サラは自分で買いなよ。お金はちゃんと持ってるんだろう?」
「そりゃ散々傭兵の仕事をしたからあるけど、たまにはいいじゃない」
「はぁ……わかったよ。その代わりしばらくはちゃんとカノンを見てやってくれよ」
「はーい、わかったわ。カノンちゃんはライバルじゃないし、ちゃんと仲良くするわ!
そうだ、このネックチョーカーあげるね。紫と赤の色。クインとニーナを
結びつける色よ」
そう言って微笑むサラに、嬉し泣きしてしまうカノン。
「ごめんなさい、私そんなつもりじゃ……」
「違うの。嬉しくて……みんな本当に暖かくて。私も何か恩返し出来るように頑張るから」
「君が傍にいてくれるだけで、僕には十分恩返しなんだけどね」
「お兄ちゃん惚気すぎ! いこ、カノンちゃん!」
「おーいおいてかないでくれよー。あれ? あそこにいるのはアネスタじゃないか?」
鮮やかな緑の短めな髪で、少しボーイッシュな美しい女性が洋服屋の前にいた。
「おや、リルじゃない。ラートは一緒じゃないの?」
「彼は今地上にいるよ。任務……かな、一応。アネスタは何してるの?」
「買い物が終わった所だよ。サラも久しぶり。その子はお友達?」
少し隠れるカノン。やっぱりまだまだ慣れていないようだ。
「怖がらなくても平気だよカノン。彼女はフェドラートのお姉さん。少しボーイッシュな
所はあるけど優しいから。
アネスタと少し話がしたいんだ。サラ達は買い物しておいでよ」
「わかった。行こっ、カノンちゃん」
「はい。失礼します」
元気よくカノンを引っ張っていく。人が大勢いるところは苦手なのか、サラに隠れながら
お店に入っていった。
「それで。話ってあの子の事?」
「それもあるかな。もし僕に何かあったとき、あの子を守ってやってくれないか?」
「まるで何かが起こりそうな言い方だね。どうしたんだい?」
「ベルータスを退けてそれなりに月日が流れた。四皇国がそれぞれの均衡を保ってきたけど
このままじゃいられないと思う。僕はフェルドナージュ様を守らないといけない。
友達のとこにいれればいいけど、その友達も忙しいんだ。
他にも色々な友達が出来たけど、アネスタのようなタイプの女性はいないんだよ」
「そう。それなら私もその場所に行っていいの? ラートも
お邪魔してるなら、尚更挨拶しないとね」
「アネスタみたいな落ち着いた女性なら大歓迎じゃないかな。
ただ主とルインに許可を貰わないと入れないから、話しておくよ」
「フェルドナージュ様が興味を持たれる人物。凄く興味があるよ。楽しみにしてる」
「フェルス皇国で右に出る者はいない程氷術に長けた君が来れば、いいお菓子も作れそうだしね……」
「ん? お菓子?」
「いや、こっちの話だよ。気にしないで」
「お兄ちゃんー! お金ー!」
「呼んでるようだよ。それじゃまたね、リル」
「ああ。今度はルーンの町で会おう、アネスタ」
アネスタに別れを告げ、高い洋服代を払って、三人は
ペシュメルガ城に向かった。
「大きくて、青銀色でなんて綺麗なの……凄いわ!」
カノンの目がキラキラしているのに見とれているリル。
「……リルカーンか。何用だ」
「……だからびっくりさせないでよベルローゼ。カノンに城を見せてやりたくて。
だめかい?」
「用が無いのに入れるわけがなかろう。去れ……いや、そうだな。中に入れてもいいが
任務を手伝え。どうせ地上には行かぬのだろう?」
「いや、僕はカノンを……」
「ならカノン。貴様とサラでいい。俺と一緒に来い。無論褒美も出そう」
「私、やります! お世話になってるだけじゃいやなんです。ルインさんの先生なら
信用できますし」
「じゃあお兄ちゃんはこれ、ルーンの町に持って行って。私カノンちゃんと
もっと仲良くなりたいから。よろしくね!」
「え? 僕も……」
「早く持って行け。案ずるな、俺がいる」
「あれー、僕カノンとデートしてたはずなんだけどなぁ」
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