異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

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第三章 知令由学園 後編

第二百話 領域というより町

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 ルーンの領域へと戻った俺は、温泉へ直行する。
 そこで領域に何を追加して、どう区画を決めるのかは決まっている。
 追加する場所は再検討して吟味する。

「プールは場所さえあれば水造石で出来るな。
排水は地下へ。うーん、後は洋裁場かな。あー、巨木の中以外にも外で飲み食いできる
テーブルと……泉から花火を打ち上げれば見れるようにして……ああ、なんならせっちゃんも
呼ぶか。料理する人が多いに越したことはないな。
それに美しさを好む者が多いし彫刻場でも作るか?
夢が広がりすぎるな……場所と道具さえあれば、人はあらゆる物を生み出す
とんでもない生き物だからな」
「ほう、領域のさらなる検討か。よかろう、今言ったものは計画に加える。
時計への発想が広がるというものだ」
「うわぁ!? いるならいるっていってくださいよ! アルカーンさん! 
あ、一個閃いた。時計塔を作りましょう。この巨木の上部に木形のデザインで」
「……貴様の発想には呆れて何も言えん。だが気に入った。形状はどうする?」
「そうですね。俺たちは傭兵なので……剣戒! こいつが交差するようなデザインが
いいんだけど出来ます? できれば東西南北それぞれに色違いで」
「誰に言っていると思っている。出来るに決まっているだろう。
ああ……だめだ、我慢できん。早速記憶を形にしてくる。ではな」
「アルカーンさん? ああ、行っちゃったよ……いきなり表れていきなりいなくなった……」

 はぁ、どっと疲れた。こういう時は空を見上げて綺麗な星……はないんだよな。
そうだ、プラネタリウムが欲しい。せっかく赤星なんて使えるし、いろんな星を見ながら
温泉に入れたら綺麗だよな。
 温泉プラネタリウム場にする事だけ伝えよう。
 何も一つの温泉にこだわらず、色々な温泉に入れるようにすればいいし。

 そのうちルーが大きくなれば、でかい竜が入れるような温泉もあっていいしな。
 あー、昔やった竜に餌をあげて一緒に成長するゲーム楽しかったな。

 そんな事を考えながら俺は温泉で疲れを取った。

 それからしばらくは
 ノックしても返事のないアルカーンさんの部屋に
 必見! と書いた追加資料を投げ入れて領域拡張の計画を広げていった。
 時折感嘆の声があがるので、ちゃんと見ているのだろう。
 発送がぶっ飛んでいる自覚はある。それは前世が刺激に溢れた世界だからか。




 そしてついに領域拡張予定日……から一日伸びた宴から十一日目の朝。

「みんな一日遅れてしまってすまない。今回は大掛かりな領域拡張道具をアルカーンさんが
作ってくれたらしい。フェルドナージュ様の領域区画を中心に拡張できるらしいので
大きく変化する予定だ。一度外に出る必要があるから、ジャンカの森……が一番目立たなくて
いいよな。そちらへ出てもらっていいか?」
「どのくらい時間がかかるんだ? すぐ終わるものなのか?」
「こんな便利な場所あるだけでも凄いっしょ。ここから大きくなるとかマジ凄」
「僕らは外に出たら君の封印の中にいるね。終わったらまた出てくるから」
「俺ぁベルローゼと一勝負してぇんだが、終わったらいいか?」
「ダメよダーリン。結婚式が先のはずよ」
「ちょっと、ちょっとまって! みんな騒ぐのは後にしよう。
アルカーンさんが怒る」
「……時間は直ぐだ。ルイン、これを渡しておくぞ。
外に出たら時計にはめてその場所を押せ。吸収される」

 俺は上からかぶせるようなものを受け取る。ヘンテコなボタンがついているが
よくはわからない。何せ幻想級アーティファクトを作り出す奇人だ。

「……わかりました。それじゃみんなジャンカの森へ」

 モラコ族も含めると相当な人数がジャンカの森へ揃う。
 ……そうだ。泉の前で全員介するなんてもうないかもしれない。

「全員いるうちにロケットに写真を残そう。
みんな俺の方向いてくれるか? そうそう。えいっ」

 以前購入しておいてよかった。それなり幻妖団メル……と。
 肩書きをさっさと変えたい! 恥ずかしいぞこれ。

「これを被せて、こうか? お、時計の針が太くなった? 色も前と違うな」
「これが貴様の渡した資料の結集と、芸術性を組み込んだ新しい領域の形だ。
よく確認して泉へ飛び込め」

 しばらく資料を念入りに確認してイメージを叩き込む。
 さすがだ。アルカーンさんはとんでもないな。

「ありがとうございます。行ってきます」
「俺様も一緒に行っていいか?」
「ああ、行こうかメルザ」

 俺はメルザの手を引いて泉の前に来た。
 メルザはぎゅっと俺にしがみつき、押し倒して泉へ飛び込み
泉の中でキスをして、二人で深く潜っていった。

 そのままメルザを抱きしめながら浮上する。
 とても、懐かしく感じる。にっこりと笑うメルザが目に入った。

 泉から浮上すると……目の前は既にまるで違う風景が広がっている。

 ここは最も南側に出来た泉。その隣に泉がいくつかある。
 三つかと思ったが他と繋がった場合を想定してなのだろう。
 泉の前には十分なスペースがあり、花火打ち上げ場所としては十分だ。
 
 南エリアは温泉街。 いくつかの建物がある。
 せっちゃんのお店をイメージした宿屋も用意してもらった。温泉宿として利用できる。
 足湯から直接温泉に行けるようにしてもらった。

 西は特訓・修練街用に相当なスペースを用意した。高い壁つきでないと
あちこち破壊されるので、数十メートルの塀で囲まれている。南北東からは確認できない程に高い。

 東は商店、娯楽街。
 プールや彫刻展示場、書物展示場、武具展示場、鍛冶場、茶室、洋裁場、劇場、セラー
アトリエなどが点在する。他空きスペースもいくつかある。

 北は牧場、畑街。最北には湖があり、こちらでもモラコ族がゆったりできる。
 モンスターを出した後、その装備をそこに置いておくとモンスター達は勝手に動くようになった。
 その装備の周りをだけだが、自由にさせてやるにはちょうどいい。
 ある意味恐ろしい光景だが多くのモンスターが見れていい気もする。生体もよくわかるし。
 今のところ妖魔下妖の一装備などはそこへ置く予定だ。封印穴はこれから取り付けてもらう予定。

 そして中央のスペースには巨大な中をくりぬかれた木、ルーンの安息所がある。
 上部には四方から見て取れるコラーダ模様の時計。
 ティソーナの形状はわからないのでコラーだの色違いを木材加工で施してある。
 安息所正面には木で作られたテーブルや椅子が並び、いつでも外で宴会が出来る。
 

「すげー! 今までみたどんな町より凄い! これが俺様達の領域……これは町じゃねーか?」
「そうだな。ここがルーンの領域……いや、ルーンの町だ。
俺とメルザ二人きりだった頃の領域が懐かしいな」
「ああ。小さい穴倉の中、食べ物もなくてよ……なぁルイン」
「そうだな。色々あったけど、やらなきゃいけないことはまだまだある。
常闇のカイナも、イーファの件も。それに俺はこの世界の事をもっと知りたい。
メルザの故郷の事もだ」
「……ああ。そうだな。でも今は、もう少しだけ二人でいさせてくれよ」
「俺も、そうしていたいよ。メルザ」

 俺たちは手をつなぎ、しばらく自分たちの大きくなったその場所をじっと眺めていた。
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