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第二章 知令由学園 前編

第百九十一話 リル対ベルド

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 戦いの怒気が少し落ち着いて、おとなしくなった二人。

「反省するっしょ。熱くなりすぎた」
「ちっ。こんな女にまで触らせて、全く。メルザに言いつけてやるんだから」
「おいサラ、それはやめてくれ。口をきいてもらえなくなる」
「ふーんだ。じゃあプレゼント一つで目をつぶってあげるわ」
「あれはサラが悪かったよ。はぁ、君も大変だね。僕はカノン一筋で本当によかったよ」
「リル、それ聞こえてるぞ」
「え? 今の無し、今のは聞かなかった事にして!」

 多分封印の中のカノンは真っ赤だろうな。感情が少し伝わってくる気がする。

「そうだ、リル。少しリルのカッコイイ所をカノンに見せてやったらどうだ?」
「え? 僕が戦っていいのかい? 君がやりたかったんじゃ?」
「いや俺、やりたいなんて一言も。むしろあまりやりたくはないんだけどな」
「そっちの君が相手してくれるのか。実力者ならそれで構わないよ」
「へえ。君喋り方が少し僕と似てるね。いいよ。戦ってあげよう」

 リルがふわりと立ち位置へ行きベルドと対峙する。
 この対決は面白いかもしれないな。ベルドは相変わらず槍に長けているようだ。
 変幻自在の二槍は相変わらずか。

 だがリルは……相当強いぞ。妖魔の力をかなり引き戻しているし、封印もここに
くるまでに増えた。補正だけなら俺以上の補正を持ってるかもしれない。
 今の俺は封印穴がいっぱいだからなぁ。

「俺が合図を出す。二人とも準備はいいか?」
『ああ』
「では……はじめ!」

 開始はお互い様子見。冷静だね、戦いなれてる証拠だ。
 ベルドは殺傷能力の高い槍、リルは格闘武器だがうち片方はプログレスウェポン。
 セミユニーク止まりじゃ幻想級にぶつけたら刃こぼれするだろう。

 リルは模倣を使えるが邪眼は使わないだろうな。相手を殺してしまう可能性があることを
極端に嫌う。あいつはどこまでも優しい妖魔だ。先手を打たせて躱しながら攻撃するだろう。

 俺はカノンに見えやすいよう位置を調整しながら審判をする。

「行くよ、リル君」

 そういうと両手の小槍をグルグル回転させながらリルへ突っ込む。

「火炎」
「っ! 風槍!」

 リルの放った火炎を槍の回転で発生させた風で上空へ舞い上がらせてかわした! 
 相変わらず器用なやつだ。そのまま短槍をリルに向かって投擲する。

「フルフライト」
「っ! 君も空を飛べるのか」
「そうだよ。これで終わりかな? プラネットフォール」

 巨大な隕石がベルドに向かって飛来する。しかしベルドは槍を拾いあげると一本の長槍に変えて
隕石へ突き刺しこれを止めた! どんな腕力してるんだ、あいつ。

「返すよ! ふん!」

 隕石をそのままリルの方へ押し返す。これにはたまらず地上へ降りたリル。
 そこへもう接近してきたベルドが迫る。
「妖陽炎、呪術支配」

 突き刺したはずの槍の先には何もなく、しかもその槍が上空へ勝手に動き出した。

「くっ 武器を操る? 聞いたことがない技だ」
「使用中は両手が使えないけどね。終わりかい?」

 ベルドは懐から投擲武器を取り出しリルに向かって投げる。
 操った槍がそれらをはじいていき地面に落ちていく。

「燃臥斗」
「っ! 火炎!」
「おっと、武器を返してくれてありがとう」
 
 槍の呪術を放棄して火炎を放ったため槍が落ちた。
 そうか、ベルドは幻術も使えるのか……俺がまともに戦ったのは接近戦試合だ。
 あの時は術禁止だったから使っていないだけ……こいつはやはり相当に強い。

「土臥斗」

 巨大な土の突起物がリルに迫る。

「模倣! 不動縛り、極」

 あれは! フェドラートさんの模倣技か! あんな隠し玉まで用意してるとは。

「くっ。なんてやつだ。指一本動かせないとは……僕の負けかな」
「いや、縛ってたら動けないんだよね。危なかった。やるね君も」
「両方とももう十分だろ。白黒つける必要なんてないし強さはわかったろベルド」
「ああ。君の実力を測りに来たはずが、お仲間二人だけでも手一杯だったよ。君は
もっと強いんだろうな」
「ルインは強いけど甘いからなぁ。本当の力を出したらどうなってしまうんだろうね」
「俺の力なんてまだまだ。もっと修行、つまないとな」

 そういって三人で笑いあう。

「はぁ、しびれる。やっぱ男っていいわぁ」
「ずるいっしょ。女はああいうのに弱」

 二人とも男のアツイバトルに見とれていたようだ。
 俺も見入っていた。なんだかんだでうちの傭兵団は戦闘好きの集まりなのかもしれないな。
 ベルドとベルディアも誘ってみるか。他の傭兵団に取られるよりは
ちの方が実力も伸ばせるし気も楽だろう。
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