上 下
212 / 1,085
第二章 知令由学園 前編

第百八十五話 知令由学園へ

しおりを挟む
 皆が起きて朝食へ向かう時に、全員出かけずに部屋へ集まってもらうよう伝えた。
 朝は質素な食事だったがどれも美味しくいただくことが出来た。ここの調味料などは
持ち帰り確定だ。今日パモと一緒に買い物に行こう。パモ様、来てくれてありがとう! 

 部屋に戻りカギをかけてフェドラートさんに再び防音をお願いする。
 準備が整い俺はイーファを出した。ついでにドーグルに念話を行ってもらい
通訳してもらった。ライラロさんが話を聞き進め、青い顔になったと思えば今度は顔面蒼白になり
ぶっ倒れた。無理もない。目の前にいるのがずっと探していた王様でスライム化し、犯人は
自分の傭兵団の頭。気が遠くなるのも当然だろう。

「とんでもない事になったというか、とんでもないものを拾ってきたわね」
「ふっ、俺の特訓が功を奏したのではないか。入手したら多少本気で攻撃できるのだろうな」
「さすがはルインね。あの絶壁を正面から行こうとしないあたり、普通じゃないわ」
「お兄ちゃん、王様ってスライムだったんだね。青銀色でかっこいい!」
「献上できないアーティファクトとは残念です。しかしフェルドナージュ様の膜下の者が
所有権を持つのなら、なんら問題はないでしょう。むしろ大のお気に入りのあなたが持つのなら
お喜びになるに違いありません」

 やー、やっぱり思った感じの反応です。先生の反応が一番怖いです。
 しかし武器はすぐに取りにはいけない。
 まずはここに来た当初の目的を目指すのが先決だ。
 イーファの事はそのあとになるだろうな。

「……お手柄過ぎて気絶したわ。ルイン、よくやってくれたわね。しかし
ベルディス以外に話すのはやめましょう……いえ、ベルディスにも今すぐ話すべき
ではないわ。ダーリンの事だからきっとすぐライデンを血祭にあげにいくに決まってるもの。
ダーリンが負けるわけないけど、ライデンは強いわ」
「俺もその方がいいと思う。師匠は義理人情に厚いから、相当怒る。
あれだけの人でもそんな状態じゃ隙が出来かねないからな」
「そうよ! やっぱりあなた、夫の事をよくわかってるわね。さすがだわ」
「ええーとそれはさておきこれからの事を話しましょう。
私が聞いた話だと、知令由学園なる所の生徒か、特別に招待された人以外
古代樹の図書館に入れないって聞いたんですけど」
「あら、そのとおりよ。だから入学するんじゃない。
全員で」
『はい?』

 おかしいな。全員で入学なんてこれっぽっちも考えてなかった。
 ココットとマーナあたりは学園七不思議枠だから入学しなくてもいいとして
 フェドラートさんやベルローゼさんまで入学しないといかないの? 
 そもそもどうやったら入学オッケーになるんだ。

「私の紹介で全員入学試験受けれるわ。さぁ行きましょう。
この薄汚れた都より何倍もマシな所よ」

 入学に興味をしめしたのはニーメ、ファナ、リル、サラにフェドラートさん。ベルローゼさんは古代樹の図書館
に入るため渋々といった感じだ。
 カノンは勿論、ドーグルもイーファもパモも、外には出せない。

 ライラロさんに急かされ、俺たちは荷物をまとめて宿を出る。会計は幻妖団メルの軍資金から。

 この世界は通貨がマジックアイテムで共通しており、全てレギオン硬貨で賄える。
 地底ですら使えるのには驚いたが、元は一つの世界だったのだろうか? 

 宿を出て真っすぐ北へ向かう途中、調味料などを買った。後でパモを出せるときに
しまわせてもらおう。北門を出るまでにそれなりの距離を歩き、円陣の都の外に出る。
 そこから道なりに真っすぐ進んでしばらくすると、奇妙な建物が見えてきた。

「あそこに見えるのが知令由学園よ。面白い形をしてるでしょ?」

 ライラロさんが言う通り、それらは学園の建物として俺が想像するような建物
ではなかった。

 全てが巨大な本の形を象っており、ここも円を描いている。
 中央には巨大なナイフとフォークがクロスする建物がある。

「俺が思ってたのとは違うけど、こういうのも面白いな。
領域にこういう発想はなかった」
「へー、あの真ん中の所で飯が食えるのか? すぐ行こう!」
「入学してないと入れないでしょ、きっと。メルザは食べ物の事になると本当とびつくわね」
「妖魔の世界にはない外観ですね。書物好きとしては実にそそられます」
「あの建物が切断可能か気になるな。端の方だけ切ってみていいか?」
「僕ここで学べるの? 楽しそう!」

 頼む、大人しく行動してくれ……特に先生が物騒です。
 問題を起こさなければいいのだけれど。

「……ライラロさん。まずはどちらへ行けば?」
「入口は正面手前よ。ちなみに学園に入園していても、何をどうするかは
自分たちで決められるわ。だから入学していても自由。対価を必要な時に払って
学ぶ学園よ。生徒間の交流は本人達次第ね。」
「へぇ。何を学ぶか決める……か。まずは受付に行って確認してみないとわからないな」
「そうね。早いとこ行きましょ。入学費は大したことないわ。学ぶ内容によってお金がかかるのと、試験に受からないと
その科目を受講はできないわ」

 試験か……苦手ではなかったが懐かしい響きだな。
 詰め込むだけの作業を繰り返す謎めいた授業なら受けたんだが。

 俺たちは正面手前にある、受付所と書かれた緑色の巨大本の建物へ入っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...