異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

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第二章 知令由学園 前編

第百八十三話 食事と安否

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 パモを封印して中を確認すると、元気よくポーズを決めている。
 やっと大声を出して喋れるようになったせいか、ずっとパミュパミュ元気に喋っていた。

 元気そうでよかった。賑やか担当が来てくれるのはありがたいな。

 ミリルは先に学園へ登録を済ませて既に講義を受けているらしいので
 このままそちら側の宿へ泊るらしい。
 一旦別れを告げ、まずは怪我をして休んでいるリルを外に出した。

「お兄ちゃん! ひどい怪我。もう幻薬はないの?」
「ああ。以前入手したプロセフィーリング、持ってきてるか?」
「あるぞ。ルインが俺様にはめるのを待ってるんだけど」
「ああよかった。リルにはめよう」
『えー!?』

 ん? だってこれ装備者の傷を治す道具だぞ。カカシが持ってる
落月のナイフの上位互換だ。知識を高める効果があるうえ、祈りの癒しという効果付きだ。

 俺は迷わずリルの人差し指へとはめ込んだ。
 これで少しは傷の治りが早くなるだろう。

「うう、俺様も怪我をしておけばよかった」
「ないわー。私たちじゃないとかないわー」
「本当よ。指輪を男に渡すとかありえないわよ」
「え? 回復アイテムだぞ?」

 ふてくされる女性を置いといて、俺はカノンの話をするか考えたが
そのタイミングで食事だったので一旦止める。
 受付に案内されて食事所へ向かう。ニーメとマーナ、それに
ライラロさんとベルローゼさん、フェドラートさんは残るようだ。

 食事所へ着くと、豪勢な食事がわんさかあった。海沿いからは離れているからか
肉料理中心だが、どれも非常に美味い。
 まともな食事をするのが久しぶりというのもあるだろう。最高の食事だった。

 行儀は悪いが少し部屋にもっていかないと。カノンやリルも食事はしていない。
 リルはあとで宿屋に手続きできるからいいとして、ドーグルやカノンは表に出せない。

「実はパンなんかを少し部屋に持ち寄りたいんだが、構わないだろうか? 小さい子らが
起きたときに食べれるように」
「ええ、構いませんよ。あなたがお父さんでしたのね」
「断固として違います!」

 どう見てもそんな年齢じゃないだろ、全く。
 きっぱりと否定して、俺はパンを受け取り部屋へ戻っていった。

「やあ。無事に着いたんだね」
「リル! 平気か?」
「いや、随分と激しく切られたからね。まだ動けないけど生きてるよ。
信じられないな」
「カノンが助けてくれたんだ。あいつの術のおかげだろう」
「っ! カノンは? 彼女は無事か……ぐっ」
「無茶するな。安心しろ。起きてるが、怯えている。
人が多いからな。説明もしてないし」
「聞かれては困る話をするなら、私が手伝いましょう」
「フェドラートさんはそんな事も出来るんですか?」
「ええ。私の術はどれもサポート向きが多いですから。妖真化すれば
別ですけどね」

 怖いから聞かない事にしよう。音を阻害してもらえるのは非常に助かるな。
 俺は部屋の鍵がかかっているのを確かめて、フェドラートさんにお願いした。

「妖結界防音の術」

 ちょうど部屋の大きさに合わせたサイズの何かが部屋を満たす。
 すげぇ! 万能すぎるよフェドラートさんの術。一家に一台欲しい。

「ありがとうございますフェドラートさん。俺とリルは道中でカノンという
女性と知り合ったんだが……」
「なんですって!? 私たちというものがありながら!」
「封印されてるのか? 俺様だけ封印されてないのが悲しくなってきた」
「主を封印したら本末転倒だろう! 彼女はこの町を目指していたんだが
外見から馬車に乗れない理由があってな。
一緒に行くことになった。封印したのは行く途中で常闇のカイナに襲われたからだ」

 俺はそういい、封印からカノンを出す。
 カノンは俺にしがみつき、怯えてる。

「どうした? カノン」
「人間の集団が怖いの。怖い、怖いよ……痛い事しないで」
「大丈夫だ、カノン。ここにはほぼ人間はいないと思う。
あれ、もしかしてファナとニーメ以外全員か?」
「私、人間なのかな。私もニーメも人間じゃないのかもしれないわ」
「生い立ちが分からないのか? ファナについて詳しく今まで聞いたこと
無かったな」
「……今度話すわ。それより今は」
「ああ。そんなわけで安心してくれ。ここにお前を傷つけるような奴は
誰一人としていない。いるわけがない」
「ほ、本当? 皆人間に見えるわ。でもあなたがそういうなら本当なのね。
それよりリルさんは? 無事?」
「ああ、僕は無事だよ。カノンさん。ありがと……」
「よかった。リルさん。リルさん……助けてくれて有り難う」

 少し落ち着くのを待とう。話はそれからでもいい。
 俺はパンを二人に手渡して、椅子に腰かけた。
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