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第二章 知令由学園 前編
第百八十二話 円陣の都 紅葉の宿
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ベルローゼさんの黒いキラキラに乗って、俺たちは人がいない付近の林まで移動し
そこから円陣の都へ到達した。
その都はまさに名前の通り円状で囲まれており、陣を組んだような都。
中央には城があり、都全体を監視するがごとく高くそびえたっている。
夜更けにもかかわらず都の中は賑わっている。俺たちは先に進むと
しばらくして見知った人物と出会った。
「遅かったわね。無事でよかったわ、本当。歩いて向かうなんて正気じゃないわよ。
ベルローゼにも呆れたもんだわ。特訓ならほかの場所でやりなさいよね」
「私がつけておいた身動の花が役に立ってよかったですよ。動きを察知するのに
通じています。ほら、ここに」
フェドラートさんが俺の蛇籠手を指す。裏側にしこんであったの?
気付かなかった……いつの間にしかけられたんだろう。
ライラロさんはベルローゼさんをちょっと睨んでいるが、ベルローゼさんは、
ふっ……とすました顔だ。イケメン主人公役はずるい。
「まずは宿へ案内を頼みます。リルの状態も確かめないと」
「……わかったわ。急ぎましょう」
明るい通りを歩いてると、よからぬ女性達に話しかけられる。
「あらいい男。遊んでいかない? 美味しいお酒もあるのよ?」
「なんて素敵な殿方かしら。ああ、少しだけでもお話を……」
「そんな女より私たちと遊んでよ、ね?」
俺は本当にこの大陸が好きになれそうにない。
あ、ベルローゼさんの袖を掴んで思い切り振り払われた。
酷い剣幕だ。あとが怖いので止めてください! お願いしますから!
「やれやれね。相変わらずだわここ。好きじゃないからさっさと
学園方面に行きたいわね」
そう言いながらライラロさんが宿を案内してくれる。
『紅葉』とかかれたその店は、文字通り美しい紅葉が垂れ下がっているように見える。
「綺麗だな。時期に関係なく見れるのか? これ」
「ええ、いつ来ても見れるわ。マジックアイテムよ、これ」
便利そうだな。うちの領域にもこういうのがあればなー。
領域を拡張してからまだ地下訓練場しか作っていない。
領域を出る前、ムーラさんにあるものを作ってもらうよう依頼してある。
この都で、モラコ族達にお土産を買っていこう! もちろんパモやカカシにもだ。
お金はだいぶレンズで稼いだからな。我が団はそれなりにお金持ちだ。
今はフェドラートさんに預けていて、俺の持っていた分はベルローゼさんに
奪われたままだが。
「中はきらびやかな作りで綺麗だが、普通の宿屋の方が俺好みだな。
女性うけはするかもしれないが、好みの別れるところだ。
「お連れさんですね。お食事を用意しますのでお部屋でお待ちくださいませ。
後ほどお声がけいたしますゆえ」
「ああ、出来れば多めに頼めるか? お金は払うから」
「そうだ、貴様の金を渡しておく。少しだけ甘味に使ったぞ」
「ああ、有り難うございます。美味しい甘味ありました?」
「貴様のアップルパイに勝るものは残念ながら無かった。
別の料理、楽しみにしている」
ベルローゼさんからお金を受け取り俺たちは部屋へと進む。
警戒してだろう。かなり大きい部屋で全員で宿泊しているようだ。
「ミリル!久しぶりだ。元気にしてたか?」
「ルインさん! 無事でよかったです。会いたくて来てしまいましたわ」
「ああ、ルーはよかったのか? あれ、ニーメとマーナと……パモ!?」
寝てるニーメとマーナに抱きかかえられてパモが隠れるようにいた。
「ぱ、ぱみゅ……」
「どうしても行きたかったみたいで。道中喋らない事を条件に
連れてきてしまいましたの。勝手な事してごめんなさい!」
「いや、毎回パモにお留守番してもらうのは悪いと思っていたんだ。
見つからないようにすれば大丈夫だとは思うんだが……それに俺の封印の中に
更に三枠分増えた奴らがいる」
「そんなに大勢? パモちゃんは封印出来ないんですの?」
「俺もそれは考えた。だがそれでいいのかは正直迷う。
俺が死ねばパモも死ぬし、封印から解放しても消滅してしまう」
「ぱみゅ! ぱみゅ……」
自分を入れろ離れるのは嫌だ! そう言ってるような気がする。
「なぁルイン。俺様もパモと一緒がいい。
この先ずっとパモを領域に置いていくのは嫌だし、出かける事も増えるだろ?
ならパモもしまってやれないか?」
「いいのか、パモもそれで。どんな制約が生じるかもまだわかってない。
どうしようもない状況になった奴だけを入れてるんだ」
「ぱみゅ!」
もちろんだ! と言っている気がする。それなら俺は受け入れるしかない。
パモは家族だ。出来ればずっと一緒にいたいしな。
俺はアクリル板の一つを外すと、パモをつついて封印した。
レウスさん、ファナ、リル、サラ、カノン、ドーグル、イーファ、そしてパモ。
レウスさんだけ領域だから七名の封印が俺に入っている事になる。
これからはずっと一緒だ。 共に生きよう。生きるも死ぬも常にお前達と一緒に。
そこから円陣の都へ到達した。
その都はまさに名前の通り円状で囲まれており、陣を組んだような都。
中央には城があり、都全体を監視するがごとく高くそびえたっている。
夜更けにもかかわらず都の中は賑わっている。俺たちは先に進むと
しばらくして見知った人物と出会った。
「遅かったわね。無事でよかったわ、本当。歩いて向かうなんて正気じゃないわよ。
ベルローゼにも呆れたもんだわ。特訓ならほかの場所でやりなさいよね」
「私がつけておいた身動の花が役に立ってよかったですよ。動きを察知するのに
通じています。ほら、ここに」
フェドラートさんが俺の蛇籠手を指す。裏側にしこんであったの?
気付かなかった……いつの間にしかけられたんだろう。
ライラロさんはベルローゼさんをちょっと睨んでいるが、ベルローゼさんは、
ふっ……とすました顔だ。イケメン主人公役はずるい。
「まずは宿へ案内を頼みます。リルの状態も確かめないと」
「……わかったわ。急ぎましょう」
明るい通りを歩いてると、よからぬ女性達に話しかけられる。
「あらいい男。遊んでいかない? 美味しいお酒もあるのよ?」
「なんて素敵な殿方かしら。ああ、少しだけでもお話を……」
「そんな女より私たちと遊んでよ、ね?」
俺は本当にこの大陸が好きになれそうにない。
あ、ベルローゼさんの袖を掴んで思い切り振り払われた。
酷い剣幕だ。あとが怖いので止めてください! お願いしますから!
「やれやれね。相変わらずだわここ。好きじゃないからさっさと
学園方面に行きたいわね」
そう言いながらライラロさんが宿を案内してくれる。
『紅葉』とかかれたその店は、文字通り美しい紅葉が垂れ下がっているように見える。
「綺麗だな。時期に関係なく見れるのか? これ」
「ええ、いつ来ても見れるわ。マジックアイテムよ、これ」
便利そうだな。うちの領域にもこういうのがあればなー。
領域を拡張してからまだ地下訓練場しか作っていない。
領域を出る前、ムーラさんにあるものを作ってもらうよう依頼してある。
この都で、モラコ族達にお土産を買っていこう! もちろんパモやカカシにもだ。
お金はだいぶレンズで稼いだからな。我が団はそれなりにお金持ちだ。
今はフェドラートさんに預けていて、俺の持っていた分はベルローゼさんに
奪われたままだが。
「中はきらびやかな作りで綺麗だが、普通の宿屋の方が俺好みだな。
女性うけはするかもしれないが、好みの別れるところだ。
「お連れさんですね。お食事を用意しますのでお部屋でお待ちくださいませ。
後ほどお声がけいたしますゆえ」
「ああ、出来れば多めに頼めるか? お金は払うから」
「そうだ、貴様の金を渡しておく。少しだけ甘味に使ったぞ」
「ああ、有り難うございます。美味しい甘味ありました?」
「貴様のアップルパイに勝るものは残念ながら無かった。
別の料理、楽しみにしている」
ベルローゼさんからお金を受け取り俺たちは部屋へと進む。
警戒してだろう。かなり大きい部屋で全員で宿泊しているようだ。
「ミリル!久しぶりだ。元気にしてたか?」
「ルインさん! 無事でよかったです。会いたくて来てしまいましたわ」
「ああ、ルーはよかったのか? あれ、ニーメとマーナと……パモ!?」
寝てるニーメとマーナに抱きかかえられてパモが隠れるようにいた。
「ぱ、ぱみゅ……」
「どうしても行きたかったみたいで。道中喋らない事を条件に
連れてきてしまいましたの。勝手な事してごめんなさい!」
「いや、毎回パモにお留守番してもらうのは悪いと思っていたんだ。
見つからないようにすれば大丈夫だとは思うんだが……それに俺の封印の中に
更に三枠分増えた奴らがいる」
「そんなに大勢? パモちゃんは封印出来ないんですの?」
「俺もそれは考えた。だがそれでいいのかは正直迷う。
俺が死ねばパモも死ぬし、封印から解放しても消滅してしまう」
「ぱみゅ! ぱみゅ……」
自分を入れろ離れるのは嫌だ! そう言ってるような気がする。
「なぁルイン。俺様もパモと一緒がいい。
この先ずっとパモを領域に置いていくのは嫌だし、出かける事も増えるだろ?
ならパモもしまってやれないか?」
「いいのか、パモもそれで。どんな制約が生じるかもまだわかってない。
どうしようもない状況になった奴だけを入れてるんだ」
「ぱみゅ!」
もちろんだ! と言っている気がする。それなら俺は受け入れるしかない。
パモは家族だ。出来ればずっと一緒にいたいしな。
俺はアクリル板の一つを外すと、パモをつついて封印した。
レウスさん、ファナ、リル、サラ、カノン、ドーグル、イーファ、そしてパモ。
レウスさんだけ領域だから七名の封印が俺に入っている事になる。
これからはずっと一緒だ。 共に生きよう。生きるも死ぬも常にお前達と一緒に。
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