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第二章 知令由学園 前編

第百六十九話 ワイバーンの襲来

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 俺はカノンが技を使用していた時の事を思い出していた。
 前世で信号待ちの時に押すと流れる曲にそっくりだった。
 今でこそ鳥の擬音に置き換わっているが、昔は殆どあれだった。

 この世界に別の転生者がいて音を奏でていたのだろうか。
 そもそもこの世界が何なのか、その全貌は古代樹の図書館にあるのではと
考えている。書物から得られる知識は偉大だ。俺も書物は大好きだった。
 勿論全て正しい訳ではなく、誤った表記もある。

 だがいつの時代も書き物から情報を読み取り、考えたりする。
 書物こそ人間が持つ最大級の文化であり、他の生物が真似出来ない、優れた
根幹なのかも知れない。

 ……と難しい事を考えながらミドーに乗って進んでいる俺達。
 カノンもだいぶ慣れたのか、ミドーの上で足を延ばして寛いでいる。

 リルはアルカーンから貰ったジュミニを磨いていた。
 余程気に入っているのだろう。
 最初こそ冷たい印象を持ったが、何だかんだでお兄さんだな。

 兄妹がいる事を羨ましくも思うが、俺もリルも今や兄弟みたいなものだ。

 親に捨てられた俺だが、もう寂しくなんかない。例え血の繋がりが無く
ても。どれほど離れた場所にいようとも、互いを心配し思いやれる。

 それが家族だと信じている。


―――しばらくミドーで進むと、ターゲットに反応があった。数は三。上空! 

「リル、カノン! 敵だ。 上空三匹、相手は不明。
こちらを狙ってる!」
「何でそんな事分かるの? 全然見えないけど」
「ルインの能力だ。間違いない。来るね。僕は上空から行くよ。
フルフライト!」
「私も行くわ! クイン、ニーナ!」
「よし俺も! 赤星の……って飛べるわけねーだろ!」

 俺だけおいてけぼりのパターン。
 最近では皆さん、空を飛ぶのが流行のようです。

 俺はかなりのモンスターを妖魔の能力として得たのだが、いまだに空を飛べるような
ものはない。

 グリーンドラゴンで得たのはウイングフォール。滑空だ。
 ムクバードは飛翔撃。組み合わせれば空中から地面への攻撃に適する。

 しかし俺は空を舞い上がり自由に飛びたかった! これは前世にそのような
光景をそうそう見られないからだろうか。
 イメージがつく物はある。だがそれに準ずるモンスターが今のところいない。

 考えていると上空からリルの声が聞こえる。

「相手はワイバーンだ! こちらを狙ってる! かなりの大型だ!」
「下から攻撃する! 一匹こちらへ引き付けるから上空で少し時間を稼いでくれ!」

 ワイバーン三匹の急襲。いきなりにしてはハードだ。
 俺はアドレスを引き抜く。予想通りまとまって行動しているな。

「赤星の一矢・爆!」

 俺は先生の元で遠隔攻撃の特訓をひたすらした。イメージをつけるのに
持ってこいだったのが、無駄三昧のビノータスの技。

 身体でもろにくらった事もある技で、よく覚えており、使い勝手も
よさそうだったので必死に練習したら似たような技になった。
 ベルローゼ先生には「やつを思い出すから変えろ」と言われたけど
どうやって変えるかは教えてもらえなかった。
 今後応用出来ればなと思うが、リルを見習って今は模倣しておこう。

 飛来した矢が一匹のワイバーンを掠める。
 そいつはかすっただけで効くぜ! 
 瞬時にワイバーン付近で爆発が起こり、一匹が落下してきた。
 俺はプログレスウェポンの封印箇所にワイバーンを指定。
 道中にいい戦力アップに繋がる。

「土潜り」
 ピーグシャークの土潜りで一気に近づく。
 本来は攻撃回避や通りにくい所を通る技だが……
「砂中撃!」
「グロオオオオオオオオオオ!」

 奇声と共にワイバーンの封印に成功した。

 今の技は砂カバ……もといサンドバグの技だ。
 あの時無事に封印出来ていた。
 こいつの能力値はかなり高かったので助かる。死にかけたけど。

「リル、こっちは片付いたぞ! 一匹貰う! 赤星の一矢・爆!」

 下からの矢が直撃してもう一匹のワイバーンが落下する……が、そのまま
空中で静止してブレスを吐いてくる。毒か? 

 いや、麻痺だ! 左腕が少し痺れる。くそっ。

 俺は右手のカトラスで薙ぎ払いする。
 切り付けられたワイバーンの動きが遅くなり、見やすくなった。
「赤眼……そこか!」
 喉部分を狙いカットラスで一閃してもう一匹のワイバーンを仕留めた。

 特訓で判明したソードアイと、恐らく赤星の力が関係するのだろう。

 対象の弱点部位を調べる能力を得た。
 ターゲットと組み合わせると、ちょっと気持ち悪くはなるのだが、相手の
弱点部位を調べる能力は重宝する。

 上空を見ると、リルも無事プログレスウェポンに封印出来たようだ。

三人で大型のワイバーン三匹を苦なく倒せるほど成長したが、まだまだ
ベルローゼ先生の足元にも及ばない俺達。
 一体どれほど雲の上の存在なんだろうな。
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