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第二章 知令由学園 前編

第百六十七話 同行者

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 突如話しかけられた俺とリルは少し警戒しながら返事をした。

「僕らが向かうのは古代樹の図書館だけど」
「だから円陣に向かうんでしょ? 
円陣の都のすぐ近く、知令由学園の中にある古代樹の図書館に」

 そういえば現地の詳しい場所は着いてから聞こうとしてたので知らないな。
 地図は持ってるがこの町周辺までだ。

「俺達そんなに現地の事、知らなくて」
「なら案内してあげてもいいわ。その代わり一緒に連れて行ってほしいのよ」

 俺と女性が話していると、珍しくリルが小声で割って入ってきた。

「外で話そうか。ここだと他の人に聞かれるよ」

 俺たちは店主に礼を言い、店を後にする。

 鈴鈴の町で、あまり人がいない辺りを探した。
 警戒したまま周りに人がいないかを確認してリルが話しかける。

「君、遊魔だろう。どうして僕らを狙った?」
「え、何言ってるのよあなた。私はどう見ても人間でしょ」
「人間の定義って何だい? 僕にわかるように説明してみなよ」
「え? そんなの……人同士の間に生まれたものでしょ?」
「つまり人以外から生まれたらそれは人間と認めないって事かい? 君自身の事だけど」
「「ちょっと何言ってるのよ、失礼じゃない!」
「僕らも人間ではないけどね。妖魔だから」
「何言ってるの? 妖魔がそうそう地上にいるわけないじゃない。どう見ても人間よ」
「だから人間の定義って? 外見でわかるものなのかい?」
「あ……」
「それで、俺達に何のようだ? 別に危害を加えないなら、こちらも無用な争いはしたくない」

 一応これでも先を急いではいるんだけどな。余り出発が遅れると主が心配する。

「言ったでしょう? 円陣の都まで行きたいのよ。その……わかった。
隠して御免なさい。私はあんたの言う通り遊魔よ。ほら」

 そう言うと変身していたのか姿が変わる。
 綺麗な紫の長い髪をしているが、小さい角が二本生えた女性。
 両腕には赤の紋様と紫の紋様が刻まれている。遊魔特有のものだろうか。

「キゾナ大陸だと、この外見ならほぼ間違いなく襲われるわ。聞いた事あるでしょ? 
長く変身してられないのよ」
「俺達もそれを聞いて仲間の何人かは家に置いてきたからな。
その遊魔がなぜ円陣に行きたいんだ?」
「……今は話せないわ。ただ足手まといにはならないから。お願い!」
「そう言われてもな……俺達も一応妖魔だから行動は目立つし。リルはどう思う?」

 あれ、さっきまで喋ってたリルが大人しいな。どうしたんだろう。

「喜んで連れていくよ! いいよねルイン? 僕はリルカーンて言うんだ。
君の名前を教えてくれないか?」

 えー!? リルさん? リルさんやー!? なぜこうなった? 
 もしかしてこれは……リルに春が来てしまったのか? 

「え、ええ。ルインにリルカーンね。私は遊魔カノン。よろしくね。
ところで妖魔なんて初めて見たけど本当なの? 見た目はただの美男子じゃない。
ずるいわよ、そんなの」
「そう言われてもな。そもそも俺だってリルに言われるまで人だと思ってたし」
「へぇ、あんた物知りなのね。尊敬するわ」
「そ、そうかい? わからない事があったら何でも聞いてみてくれよ。
答えられる内容ならなんでも答えるからさ!」

 ……お花畑が見えるぞ。綺麗だなー。俺置いてけぼりだわ。

 続きはミドーに乗りながらだな。誰かに聞かれていいような話じゃない。

 ついでにカノンの衣類や帽子なんかも必要だろう。
 旅の準備を入念にしていこう。しばらくは三人で動く事になる。

 俺たちは鈴鈴で身支度を整えて、念のため傭兵斡旋所レンズに寄って
言伝を頼んだ。

 レンズでは同じ団員宛にメッセージを残す事が出来る
 どのレンズからでもメッセージを確認出来るのでかなり便利だ。

 ミリルとはこれで連絡を取ったが、先に学園にいるようだ。

 準備を済ませた俺たちは目的地とルートを確認する。
 神の空間もないから道中の寝泊まりに不安が残る。
 食料も補給しないと行けない。
 徒歩といってもミドーはいるから、ある程度町から離れたあと、使えるか確認しよう。

「ところでカノンは戦えるのか? 俺たちはそれなりには戦えるつもりだが」
「ええ、そうでなければ徒歩で向かうなんて考えないわ。
この辺りのモンスターは強いから、覚悟しておかないと」
「じゃあ行きがてらお互いの力をある程度まとめよう。
全部は公開しなくてもいい。隠しておきたいこともあるだろうしな、お互いに」
「わかったわ。それじゃ改めてよろしく。行きましょう」
「うん。楽しい旅になりそうでよかったね! ルイン」

 ……いやー俺としては辛い旅になりそうな予感だぞ、リルよ。
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