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第二部 主と働く道 第一章 地上の妖魔
第百四十六話 シュウとシン・シーファン
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結局カッツェルの街中にはろくな宿屋が無く、町の外で神の空間を使用して
休む事になった。
俺たちは開けた場所を探そうと、カッツェルの町の北周辺の
森を散策していた。
「以前訪れた時はあんなに酷くなかったのよね。
どうしてあんなに酷くなっているのかしら。不思議だわ」
「街中で堂々と人さらいってかなり良くない状態ですよね。
町を管理している人間がいなくなったとか?」
「どうかしらね。ここで小休止してからロッドの港町を目指したかった
のだけれど。なにせ峠を越えないと辿り着けないし」
峠だと蛇移動は出来ないな。
この蛇にも名前を付けないとな。うーん。
フェルドナージュ様から取ってフェルとか付けたら殺されそうなので
蛇……巳の移動。ミドーにしよう。わかりやすいし。
「まさか、ルインさんかい? こんな所で会うなんて! 信じられない!」
「え、誰?」
「シュウですよ。覚えてませんか?」
「シュウさん? すみません恰好がだいぶ変わっていたので気付きません
でした。そういえばカッツェルの町へ帰るとおっしゃっていたような」
突然現れた青年は以前知り合ったシュウさんだった。
格好がぼろぼろになっている。
この町の情報が知りたかった所に出会えるとは。
「カッツェルの町に来てたんですね。以前渡した
引き寄せの印が消えたので心配してたんです」
「そういえばお守りのような物、頂いたんですが俺が殺されかけた時に
ほぼ全ての所持品を失ってしまって」
「そうだったんですか。こうして無事会えてよかった。
実はこの町の
町長が代替わりしてから荒れ放題で。
今は森の外れに師匠とカイ、ヨナの四人で暮らしております。
師匠の容態はかなり落ち着きました」
「それは良かった。実は我々これからロッドの港町まで向かう途中なのですが、安心して
休める場所がなくて。少し開けた場所で野宿しようと思っていたところです」
俺は皆を紹介する。
「それならば我々の所へ来て下さい。お話も聞きたいですし」
俺たちはシュウさんに続いて森の奥にあるという
シュウさん達の庵へ行く事になった。
しばらく森を歩いた先に、小さな小屋と特訓をするようなスペースのある場所に出る。
これだけ広さがあれば神の空間を広げられそうだ。
「師匠。客人をお連れしました」
「どうぞ。入りなさい」
「お邪魔します。初めまして。ルインと言います。
こっちが主のメルザ。外にも仲間がいます」
「よろしくな! じいちゃん!」
「元気な方々よ。よくお越し下された。わしはシン・シーファン。
ルイン殿の話は弟子より伺っておる。ベルディスの弟子よ、あ奴は元気に
しているかね? この間の薬はとても良く効いた。感謝を伝えたいのだが」
「ええ、元気にしてますよ。先日も地下訓練場を破壊しましたし。
御礼は伝えておきますね」
「相変わらずじゃのう。あ奴を助けた時の事が懐かしいわい。
シュウよ。わしのため戻って来てくれた事は嬉しく思う。
じゃがお主も
この者のように研鑽を重ねるため、旅に出たいのではないか?」
「師匠、それは勿論です。ですが放ってはおけません。
カッツェルの町
の治安の悪さを考えれば、カイやヨナだけでは心配です」
「そのことなんですけど、俺達も街中で襲われて」
「なんだって? 街中で襲われる程酷い状態になっているのか」
「襲われたというか、押し流したというか。
被害は出ていませんよ。被害を与えた気はします」
俺とメルザは手出ししてないんだけどね。
主に外の皆さんがちょっとね!
「無事で良かった。この町は今、カルト兄弟という
双子剣士に支配されてます。どちらも上級職で
好き放題暴れてる。町長の息子達です。
手出し出来なくて困っていて」
「わしが動ければよかったんだが、もう戦える力は残っておらぬ。
町の者もかなり逃げ出したからのう」
これは町を救う展開か? なぜだろう? 俺の出番無く終わる気がするんだが。
「俺様がやっつけてやるよ、そいつら!」
「協力してくれるんですか!?」
「そうしないと気軽に休めないですよね。
しかも師匠のお知り合いの方ですし無碍に扱えば
帰ったら嚙み殺されます」
「ありがたい話だ。よい弟子を持ったものだのう。
あ奴にはもったいない」
そう言うとにっこりと微笑み、シン・シーファンはシュウに刀を渡した。
「シュウよ。もし事が片付けばおぬしは自由。
この刀を授ける。持っていきなさい。
「これは鎮めの一振り。こんな貴重な者を私が?」
こくりと頷いて答える。
「有難く頂戴します。大事に使います!」
「ところでそのオカルト兄弟とやらの特徴を」
「カルト兄弟です。バーバリアンと呼ばれるジョブで
凄まじい狂暴さと、変幻自在の攻撃をする双子です。
この町に太刀打ち出来る人物はいませんね」
バーバリアンか。剣との戦いは願ったりだな。
邪魔立てはされたくない。少し作戦を練るか。
「今日は日も暮れますから、明日作戦を練って行動しましょう」
「ええ、長旅でお疲れでしょう。労わせて下さい」
「いえ、こちらも食料を取りに行く人材は多い。
一緒に夕飯の支度と参りましょう」
俺達は再会を祝して共に食事を取り、語らいながら休みを取った。
休む事になった。
俺たちは開けた場所を探そうと、カッツェルの町の北周辺の
森を散策していた。
「以前訪れた時はあんなに酷くなかったのよね。
どうしてあんなに酷くなっているのかしら。不思議だわ」
「街中で堂々と人さらいってかなり良くない状態ですよね。
町を管理している人間がいなくなったとか?」
「どうかしらね。ここで小休止してからロッドの港町を目指したかった
のだけれど。なにせ峠を越えないと辿り着けないし」
峠だと蛇移動は出来ないな。
この蛇にも名前を付けないとな。うーん。
フェルドナージュ様から取ってフェルとか付けたら殺されそうなので
蛇……巳の移動。ミドーにしよう。わかりやすいし。
「まさか、ルインさんかい? こんな所で会うなんて! 信じられない!」
「え、誰?」
「シュウですよ。覚えてませんか?」
「シュウさん? すみません恰好がだいぶ変わっていたので気付きません
でした。そういえばカッツェルの町へ帰るとおっしゃっていたような」
突然現れた青年は以前知り合ったシュウさんだった。
格好がぼろぼろになっている。
この町の情報が知りたかった所に出会えるとは。
「カッツェルの町に来てたんですね。以前渡した
引き寄せの印が消えたので心配してたんです」
「そういえばお守りのような物、頂いたんですが俺が殺されかけた時に
ほぼ全ての所持品を失ってしまって」
「そうだったんですか。こうして無事会えてよかった。
実はこの町の
町長が代替わりしてから荒れ放題で。
今は森の外れに師匠とカイ、ヨナの四人で暮らしております。
師匠の容態はかなり落ち着きました」
「それは良かった。実は我々これからロッドの港町まで向かう途中なのですが、安心して
休める場所がなくて。少し開けた場所で野宿しようと思っていたところです」
俺は皆を紹介する。
「それならば我々の所へ来て下さい。お話も聞きたいですし」
俺たちはシュウさんに続いて森の奥にあるという
シュウさん達の庵へ行く事になった。
しばらく森を歩いた先に、小さな小屋と特訓をするようなスペースのある場所に出る。
これだけ広さがあれば神の空間を広げられそうだ。
「師匠。客人をお連れしました」
「どうぞ。入りなさい」
「お邪魔します。初めまして。ルインと言います。
こっちが主のメルザ。外にも仲間がいます」
「よろしくな! じいちゃん!」
「元気な方々よ。よくお越し下された。わしはシン・シーファン。
ルイン殿の話は弟子より伺っておる。ベルディスの弟子よ、あ奴は元気に
しているかね? この間の薬はとても良く効いた。感謝を伝えたいのだが」
「ええ、元気にしてますよ。先日も地下訓練場を破壊しましたし。
御礼は伝えておきますね」
「相変わらずじゃのう。あ奴を助けた時の事が懐かしいわい。
シュウよ。わしのため戻って来てくれた事は嬉しく思う。
じゃがお主も
この者のように研鑽を重ねるため、旅に出たいのではないか?」
「師匠、それは勿論です。ですが放ってはおけません。
カッツェルの町
の治安の悪さを考えれば、カイやヨナだけでは心配です」
「そのことなんですけど、俺達も街中で襲われて」
「なんだって? 街中で襲われる程酷い状態になっているのか」
「襲われたというか、押し流したというか。
被害は出ていませんよ。被害を与えた気はします」
俺とメルザは手出ししてないんだけどね。
主に外の皆さんがちょっとね!
「無事で良かった。この町は今、カルト兄弟という
双子剣士に支配されてます。どちらも上級職で
好き放題暴れてる。町長の息子達です。
手出し出来なくて困っていて」
「わしが動ければよかったんだが、もう戦える力は残っておらぬ。
町の者もかなり逃げ出したからのう」
これは町を救う展開か? なぜだろう? 俺の出番無く終わる気がするんだが。
「俺様がやっつけてやるよ、そいつら!」
「協力してくれるんですか!?」
「そうしないと気軽に休めないですよね。
しかも師匠のお知り合いの方ですし無碍に扱えば
帰ったら嚙み殺されます」
「ありがたい話だ。よい弟子を持ったものだのう。
あ奴にはもったいない」
そう言うとにっこりと微笑み、シン・シーファンはシュウに刀を渡した。
「シュウよ。もし事が片付けばおぬしは自由。
この刀を授ける。持っていきなさい。
「これは鎮めの一振り。こんな貴重な者を私が?」
こくりと頷いて答える。
「有難く頂戴します。大事に使います!」
「ところでそのオカルト兄弟とやらの特徴を」
「カルト兄弟です。バーバリアンと呼ばれるジョブで
凄まじい狂暴さと、変幻自在の攻撃をする双子です。
この町に太刀打ち出来る人物はいませんね」
バーバリアンか。剣との戦いは願ったりだな。
邪魔立てはされたくない。少し作戦を練るか。
「今日は日も暮れますから、明日作戦を練って行動しましょう」
「ええ、長旅でお疲れでしょう。労わせて下さい」
「いえ、こちらも食料を取りに行く人材は多い。
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