上 下
154 / 1,068
第六章 強くなる

第百三十六話 帰ってきた二人

しおりを挟む
「フェルドナージュ様。リルとサラが帰還しました。
ルインも一緒です。突然の面会をお許し下さい」
「許す。急ぎ童の元へ」
「はっ。三人とも阻喪の無いよう」
「ええ、心得ております。フェルドナージュ様。
お久しぶりに御座います。お目通りをお許し頂き有難うございます」
『よい。報告はフェドラートより受けている。
其方達には感謝しておる。童の甥と姪を助けてくれた事、礼を言う」
「勿体なきお言葉」
「ベルータスの奴めが既に戦争をしかけるため出陣済みであること。
それに我が側近の一柱、黒星のベルローゼが足止め中である事。
それから彼奴らはリルとサラを人質に童が油断し本気を出せぬであろうと考えている事。
以上相違無いな?」
「はい、仰せの通りです。リルとサラも説明を」
「フェルドナージュ様。申し訳ありませんでした。我々が不甲斐ない
ばかりに。ですが仕掛けだけは万全です。
本来なら死すべきこの命。生きながらえてしまいました」
「ベルータス七柱のうち、死霊纏いのアンジャナ、拷問のミューズ
の二名を仕留めました。ただ赤刃のリベドラにサラを人質に
取られてしまい、捕らわれた所をルインに救われました」

 おいおい、敵将の首二つも取ってきたのかい? 
 拷問のなんちゃらを打ち取ったから拷問で死なず済んだとかか? 

「赤刃のリベドラには気付かれないように起動式爆破憑依を
かけてあります。
 私が死ねば即発動だったのですが」

「よくやった。二人を失わず敵の戦力を削ぎ、尚且つこちらに
先制の機会も生まれた。
ルインには後ほど多くの褒美を取らせる。
二人にもだ」
「勿体なきお言葉。しかしフェルドナージュ様。お話せねばならぬ儀が御座います。
リルもサラもどちらも私に一度封印されています。
解放すなわち死と聞きました。
共に私の元で行動する事になってしまうでしょうが、お許し頂けますか?」
「……うむ。本来であれば二人とも死んだ身。今後は其方の配下として存分に腕を
振るわせるがいい……我が甥と姪を部下に持つ以上
其方には剣客では無く、我が一将
として働いてもらいたいのだ。勿論其方には主がいる。その事は考慮し
扱いは直属ではなく自由にしてよい。
フェルス皇国の一戦力として働きを期待する」
「承知いたしました」
「それとフェドラートより其方の主について聞いたのだが
、童も少し
興味があってのう。この戦いが終わったら、少し手ほどきをしてやろうと思ってな。
特に礼儀作法についてはきっちりと教えねばな」

 俺は背中にすごい汗をかいた。
 すみません。あれが可愛げがあるんだけどすみません。 
 喋り方はいいので作法だけお願い! と心で念じる。

「フェルドナージュ様。出陣の準備が整いました」
「うむ。其方達には後日連絡を寄越そう。フェドラートの
領域訪問許可だけは出しておくように。
領域から童の闘いを見れるようにしてやろう。
ベルータスを血祭に上げる様をそこで見届けるがいい。
皆の働きによりどれほど童が優位にたったのかをな」


 そう言うとフェルドナージュ様は一匹の小さい赤目蛇を出して俺に寄越し、玉座から腰を上げた。

 立ち上がるのは初めて見るが、威風堂々で美しすぎて直視できない。

 妖艶を極めたまさに妖魔。ただ青銀蛇が沢山いてめっちゃ怖いです。

「カドモス、ピュトン。参るぞ」

 そう言うと天井から蛇とは思えない美しい装飾の施された蛇が
二匹どさりと降ってくる。
 無茶苦茶びっくりした。

 二匹の蛇はフェルドナージュ様の両腕に絡まる。
 
 フェドラートさんの顔が真っ青で冷や汗がでている。

 あれ、やばいやつだ。俺にはやばすぎてわからない。

 こうして邪剣のフェルドナージュ様が出陣された。

 俺はその場を退出して急ぎ足で妖兵エリア南東の泉を目指す。

 メルザはきっと心配している。

 泉へと戻り飛び込んだ俺は、久方振りに家に戻れる喜びとメルザに会える事に
心が弾むのを感じるのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

いわゆる異世界転移

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:349

エルフだと思った? 残念! エルフじゃなくてゴブリンでした!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:19

おっさん転生〜異世界に転生したおっさんは、かっこいい幼女になりたい〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:128

異世界の鍛冶屋さんⅡ~お店の裏は裏ダンジョン!?・開~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:6

処理中です...