上 下
153 / 1,085
第六章 強くなる

第百三十五話 能力の還元は

しおりを挟む
 俺は友と再びこうして話す事の喜びを嚙みしめて
前を見た。
 サラが勢いよく前方に回り口づけしてくる。

「わ、ちょっとサラ待てって! むぐっ」
「ダメよ。私を助けてくれた白馬の王子様。もう絶対結婚よ!」

 やめろ、ライラロさんを思い出す。キャラ被るぞ! 

 ファナも無理やりサラを引きはがしてボディブローを密かに入れている。
「ぐえ、何すんのよこの女!」
「いいからルインから離れて! ずるいわよあんた!」
「やれやれ、我が妹ながら大胆だね。全く」
「あー、一気に騒がしくなったな。その方が嬉しいには嬉しいが」

 浮上して加速したのと同時にとっても賑やかになる。

 舵スペースが狭いからみんな舵を前にワイワイしている感じになった。

 レウスさんが後方でちょっと寂しそう。ごめんよ。

「ところでリルもサラも、身体は平気なのか?」
「いや、平気じゃないね。ボロボロだよ。君が薬を使ってなければ
僕らは封印の中で死んでたかもね。君に貸していた武器のおかげでちょっとは
マシだけど、アーティファクトも全部奪われてしまったからね」
「ああ、俺もその武器がなければ数回は死んでいた。有難う二人とも。
サラの方の武器の技は結局一度も使えなかったけど」
「ガーン。そういえばこの武器の封印の技、特殊なのばっかりだったわ」
「ちっ役に立たない女ね」
「ああん!?」
「二人とも会話の節々で喧嘩するなって」

 そーいや性格的に相性は良くなさそうだ。
 大丈夫かこの二人。
 
 同じ封印の中にいるんですよねお二人さん……。

「そういえば僕らを封印出来たみたいだけど、力は還元されたかい?」
「それがファナやレウスさんもそうなんだけど、本人たちは
力を還元されてるのを感じるみたいなんだが俺の能力が
別段向上していると感じないんだよ。なぜかわかるか?」
「それは君の身体が受け入れるのを拒んでいるのかもしれないね。
封印の中にいるときに君から感じる意志は
俺が守ってやる! みたいな意志だったからさ。そうななくて力を貸せ、俺の力になれって
思う意志がないと還元されないと思うよ」

 俺はハッとした。確かにそうだ。

 力を借りたいときはいつも外に出てもらい戦っていた。

 封印しているときは休んでてほしい時だ。

「ファナ、ちょっと俺の封印に戻ってもらえないか?」
「ええ、わかったわ。私が誰よりも力になってあげるね」

 そう言うとファナはサラを見ながらくすりと笑い、俺の封印へ戻っていく。

 サラの剣幕が怖いので見ないようにしておく。

「ファナ。俺に力を貸して欲しい。その状態のままで」

 あえて声に出さなくても良さそうだが、そう思うように意識を高めた。
「済まないがサラとリル二人でちょっと舵を頼む」

 俺はそう言うと全身を動かしてみる。
 技に意識をもっていくが、技は出せない。

 だがわずかに能力は向上していると思う。

「修行は必要だね。まだまだ妖魔としては経験不足だ」
「私が教えてあげるね!」
「いや、戻ったらベルローゼさんが特訓してくれるらしい」

 二人が過去に見たことがないほど驚いて顔を見合わせる。

 ……俺なんか変な事言ったか? 

「君、今なんていったんだい? 僕にはよく聞こえなかったよ」
「お兄ちゃん、きっと私たちが知ってるあのベルローゼじゃないわ」
「いや、そのベルローゼさんであっている筈なんだけどな。
フェルドナージュ様に面会するときにすれ違ったあの。
ちなみに今は俺達をフェルドナージュ様の元へ早く届けるために
足止めしてくれているよ」

 そう言うと二人はますます驚きつつも、リルの方はかなり呆れた顔になっている。

「君、魅了の術か何かでも覚えて使ったりしたのかい? 
妖貴戦、黒星のベルローゼが
誰かに指導するなんてフェルス皇国始まって以来の騒ぎになるよ」
「ふふふ、リルにも今度ツンデレの概念を叩き込んでやろう」
「ツンデレ? なんだいそれは。その術で彼を説得したのか。
実に興味深い。知らないかもしれないけど彼はフェルス皇国で
屈指の人気を誇る有名な妖魔だよ」

 そうだったのか。イケメン主人公キャラな上屈指の人気。
流石です。未来の妖魔師匠!

 俺は再び舵を取り、速度を上げた船でフェルス皇国を目指す。

 しばらくしてようやく着いた頃にはリルもサラもヘトヘトだったので
残り少なくなっていたが幻薬を全員で分けて全て使用した。

 フェルス皇国の湖に着陸させると、迎えの者らしき人物がいる。

「おかえりなさい。待っていましたよルインさん。
無事で本当に良かった。二人も無事でなによりです。
密偵と破壊工作の報告を」
「実はフェドラートさん。ベルータスはもうスターベルで出陣しています。報告を急ぎましょう!」
「なんですって? ……貴重な報告を感謝します。
ここから直接フェルドナージュ様の居城へ赴ける許可を
頂いていますので、すぐ参りましょう」

 そう言うと隠し通路らしき場所を開き、フェドラートさんは奥へ案内してくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

変身シートマスク

廣瀬純一
ファンタジー
変身するシートマスクで女性に変身する男の話

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

処理中です...