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第六章 強くなる

第百三十三話 スターベル

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 俺が指揮官を撃破したので、全ての敵が逃げ出した。
 
 絶空は地上に降りたが、破壊しつくされてはいない。

「おい。あの無能を良く無傷で仕留められたな」
「なんかファナに惚れ込んだみたいで。楽勝でした」
「最後まで無駄だらけの行動を取ったようだ。そこの女。
でかした。
後日褒美を貰え。あれでもベルータス七将の一柱だ」

 確かに遠隔攻撃で必中矢で爆発とか粉砕とか厄介だしな。
 威力こそないが、かき乱す役としては十分か。

「それより、この乗り物破壊しなくていいんですか?」
「動力部や操作する場所などは避けて攻撃した。
これを奪って後ろからベルータスを急襲する」

 成程! その手があったか。けどこのでかい奴を俺達だけで
動かせるのか? 

 俺たちは絶空に乗り込む。残っている兵士がいないか確認したが、誰も乗っていなかった。

 ベルローゼさんが舵を取ると、絶空が動き出す。

 流石に敵艦だから落ち着かないが、ファナとレウスさんを出し
見張りを頼む事にした。

 俺はようやくリルとサラの様子を確認する。二人は
アクリル板の中で横たわったままだった。

「ベルローゼさん。二人はこの仲です」
「……なんだこれは。アーティファクトの中にいると思っていたが
どういう状況だ?」
「俺の中に封印したんです。勿論外には出せます」
「非常識な奴だと思っていたがここまでとは。
この二人を封印した
という事は貴様がこいつらの主として認められたという事だ。だが助けたのは貴様だ。
フェルドナージュ様も納得するだろう」
「俺は二人を救えればそれで十分。事が済んだら解放しますよ」
「それは難しいだろうな。一度取り込んだ者の解放。
それはすなわち死だ。
生涯を共に過ごすしかなかろう」
「そうだったんですか……けどそれならそれで構わない。
俺にとってもこいつらは
世話になった大切な友です。
一緒に生きていきます」

 初めて知った。だけど後悔などは全くない。
 ファナもレウスさんもリルもサラも。
皆と一緒に生きていけばいい。

「だが貴様は今後フェルドナージュ様により一層気に入られるな。
甥と姪を同時に抱える以上、ただの剣客にしておくことはできん」
「ええ。地上でやることもありますが、地底での本拠はフェルス皇国。一つにお仕えする
という形は難しいですが、地底、地上
それぞれに一つの地域を拠点として活動していくつもりです。
地底ではフェルス皇国が
俺たちの故郷。必ず守り抜いて見せます」
「それでいい。俺も貴様を認めてやろう。
貴様は妖魔の闘い方は素人だ。
ベルータスの一件が片付いたら直々に指導してやる。有難く思え」

 まじで? 俺も黒星の鎌とか使えちゃうの? これで主人公の仲間入りか? 

「勘違いしているようだが、俺の技は適性が無ければ使えない。
あの技はそうそう適性があるものではない。諦めるんだな」

 心を読まれた! あの主人公技、使いたかったのにな。

 派手な遠距離攻撃はお預けか。人生そう甘くはないな。

 リルとサラを一度外に出して彼らの装備を付けさせる。

 こうしておいた方が身体能力も上がって回復が早まるかも知れない。
 二人は今妖魔装備を全てはぎとられたのか何もつけていない。
 ボロボロの衣類だけだ。サラはちょっとはだけているのでファナの着替えを
着せてある。
 
 念のため幻薬をもう一度使って再び封印した。

「どちらも妖魔の力を相当失っている。今の貴様より弱いくらいだ。
ベルータスの狙いは外れたようだがな。
二人とも持っていた装備は幻想級のアーティファクトまでだ」
「やはり神話級アーティファクトは一つ見つけるだけでも大変なんですね」
「ああ。地上で見つかれば奪い合い、殺し合いに繋がる。
貴様が経験したようにな。
ただあれを見極めるには特別な力がいる。アーティファクトかどうかだけなら
破壊を試みればわかるがな」
「そうですね。俺にもアーティファクトかどうかまでしかわかりませんでした。
普通に使う分には便利って事くらいしか。
「強力な装備は持ち主の能力に左右される。だからこそ
貴様に指導して
やる気になった。無能に興味は無い」

 ベルローゼさん程の方に興味を持たれるのは非常に嬉しい。
 敵国に黒星のベルローゼなんて恐れられる程の人物だ。
 
 どんな厳しい特訓でも甘んじて受けよう。
 地上ではシーザー師匠にも恵まれた。

 俺は不運だと思うが、良い師に巡り合う運はあったらしい。

「見えてきた。あれがベルータスの巨大空中船
スターウィユベール。通称スターベルだ。本人の名前から取ったんだろう」
「なっ……でかさの規模が違いませんか?」
「それはそうだろう。あれ自身が奴そのものの能力だ。四皇の一注だけあり、バカげた力の持ち主だ」

 ふざけてるのか? あんな規模の船……都市一つ程の大きさだぞ。
 あんな規模で移動するとかありかよ。

 目の前の想像を超える規模の敵の強大さに、俺は絶句した。
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