上 下
149 / 1,085
第六章 強くなる

第百三十一話 移動要塞【絶空】

しおりを挟む
 どのくらい気を失っていただろうか。
 
 俺は意識を戻すとまだ黒い影の中だった。

「ベルローゼさん。ここからでも聞こえますか?」
「……なんだ。起きたか」
「すみません。気を失っていたようです」
「少しそこで休むか」

 どうやらあまり時間は経過していないようだった。
 
 休むといった場所は俺が行きで見つけた穴だ。
 
 リルとサラの容態も確認しないと。

 穴に入り辺りを見回す……と、ベルローゼさんはひどい怪我をしていた! 

「ベルローゼさん! ひどい怪我じゃないですか!」
「取り急ぎ向かった。物資の届状況だけ確認して
誰にも会わず向かった。治療の暇などない」

 俺は急いで幻薬を使う。無茶しすぎだ。

「ベルローゼさんはなぜこちらに?」
「おまえを守れとフェルドナージュ様から仰せつかっていたからに
決まっている」
「無茶な……その傷でベルローゼさんが死んじゃったらどうするんですか」
「貴様も十分無茶をしていると思うが?」
「あー……はい、そうですね。言えた義理じゃありませんでした」

 そう言うとベルローゼさんの表情が少し柔らかくなった気がした。
ツンデレ! 

「そういえば貴様、あの城塞の中に入りよく無事だったな」
「残虐のベルータスが出陣したとのことで、中に残ってたのはえーと何だっけ? 
無駄骨? 無駄遣い? のなんちゃらっていう」
「無駄三昧のビノータスか。あの程度の小物しかいなかったのは幸いしたな。
しかしまずい。フェルドナージュ様が敗れるなどありえないが、人質がいる
と思われていると実にまずい状況だ」
「ええ。ベルータスは戦争をしかけるつもりですから急いで知らせないと。
リルとサラを外に出したいところですが、もう少し安全なところがいいですよね」
「ああ。今はやめておけ。それと先ほどの薬をもう一つ貰えるか。
急いで戻るのにもう少し回復したい」

 俺は幻薬をベルローゼさんに使用した。

 本調子ではなさそうだが、大分回復できたようだ。

 ベルローゼさんの星黒影の流れ星というチート技で
再び移動する。

 マッハ族並みの速さで移動する上、影での移動は反則すぎる。だが相当に消耗するようだ。



 しばらく進んだ時だった。

「追手だ。このままマッハ村に到着するわけにはいかん。一旦出るぞ」
「え? この速さで追手?」
「移動要塞、絶空だ。上を見ろ」

 俺が上空を見ると、バカでかい奇妙な物体が低空でこちらへ向かってきている。
 あんなのありかよ。

「戦うしかないか。貴様は運がないな」
「運の無さなら折り紙付きですよ。呪われてるくらいにはね!」

 そう言うと俺たちは赤土のエリアに展開する。

「俺が絶空を落とす。貴様は出てくる雑魚共を狩れ」
「簡単に言ってくれますね。しかもあれを単騎で落とせるものなんですか」
「黒星の双鎌」

 そう言うとベルローゼさんはアルキオレイブン戦で見せた鎌状の
ソレを二枚放出した。
 おいおい、それはいくらなんでも……と、かっこいい技に見とれてる
場合じゃなかった。

「ファナ、レウスさん。緊急事態だ。助けてくれ!」
「やっと出番ね。もっと早く頼ってよね」
「友達が沢山いそうだ。いやーあいつら久しぶりだな!」
「ああこれから一杯出てくるよ! なにせ無駄印のビター味とかいう奴もいるはずだ」
「……無駄三昧のビノータスだ。小物だが、今の貴様には少々持て余すかもしれん。気を付けろ」

 技を放ちながら突っ込みがくる。クールイケメンのつっこみ。ご馳走様でした! 

「ええ、一度戦いましたからね。あの矢は厄介です」
「そいつの相手、私にさせてみてくれない?」

 そう言うとファナは自分の胸を指す。大きいですよね。
すみません違いました。

 そうか、避来矢軽装胴! 矢が当たらないというレジェンダリー
ならではの反則防具か! 

「わかった。だがもし矢を受けるようならすぐ封印に一度戻すぞ」
「ええ、平気よ。アルノーで行くわ」

 そう言うとファナはアルノーに変身する。

「レウスさんは死神の使いを出しておいてください。
あいつらは囮になる」
「任せろ! 俺も囮になるか? それとも焼いてやろうか?」
「……焼くほうで援護をお願いします。数を減らすので」

 俺はカットラスを引き抜き絶空と向き合う。

 絶空がベルローゼさんの攻撃で動きを止め、煙を上げ始めた。
 とんでもないな、ベルローゼさんが味方でよかった。

 そろそろ敵さんのお出ましだな。一体何匹出てくるか。

 ほどなくして絶空から大量……三百はいるだろう大量の兵士が出てくる。

 本当無駄遣いが過ぎるな。追ってたの俺とベルローゼさんだけだろうに。

 それじゃ先制の挨拶と行きますかね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女王直属女体拷問吏

那羽都レン
ファンタジー
女王直属女体拷問吏……それは女王直々の命を受けて、敵国のスパイや国内の不穏分子の女性に対して性的な拷問を行う役職だ。 異世界に転生し「相手の弱点が分かる」力を手に入れた青年セオドールは、その能力を活かして今日も囚われの身となった美少女達の女体の弱点をピンポイントに責め立てる。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

処理中です...