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第六章 強くなる
間話 メルザの苦悩
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ルインがマッハ村を出てすぐ……。
「俺様、やっぱりルインの後を追いたい。頼むよ、誰か連れてってくれよ」
「メルザさん。お気持ちはわかりますがそれは難しいですわ」
「るぴぃー?」
「けど! ルインに何かあったら俺様はもう……」
「あなたは、彼の主としては分不相応のようですね」
フェドラートが言い放つ。
「な!? 俺様はルインが心配で……一緒に行った方が安全だって。そう思って」
「あなたは足手まといですよ。お話を聞いた限りでは幻魔術士……いえ幻魔を具現化
させる幻魔招来術士でしょうか。しかし戦法はほぼ幻術中心でしょう。
我々妖魔は対象を取り込み力を発揮するのに対し
幻魔は幻術や幻魔を放出して戦います。
その初歩しかまだ掴んでいない。その上彼……ルインさんと違って精神的に未成熟です」
これ以上突き刺さる隙間がないほど的確に突き刺されたメルザ。下を向いてしまう。
「あの場所へは彼が単独で向かうのが適任です。絶対無事という保証はありませんけどね。
あなたは彼を行かせたんです。それならば後は待つしかできない。もし自分の未熟さが
悔しいならば、あなたに術の手ほどきをしてあげましょう。
それが私たちのために死地へ赴いた彼が望む事でしょう。
あなた自身を強くして、彼がよりあなたを守りやすくする。
それが今、私が行える彼への最大の敬意でしょう」
メルザはがばっと上を向いた。溜まっていた涙をごしごしと拭き頭を下げる。
「お願いだ。じゃなかったお願いします! もっと強くならないといけない
んだ。守られるんじゃない。ルイン達みんな守れるように!」
フェドラートはゆっくり微笑むと頷いて歩き出す。
「私は幻術士ではありません。ですが幻術招来に関して
知識を持っています。それを帰りの道すがら、あなたに伝授しましょう」
そういうと彼は、兵士と思わしき妖魔に指示を出して
補給物資を指定の場所に手配するよう伝えた。
「さぁ我々は一度フェルス皇国に戻りましょう」
「またあのでっけー船で行くのか? どうやってあそこまで行くんだ?」
「いえ、カモフラージュして見えなくさせて
ありますが、ブルースネークレクイエムという砂上船で戻ります」
フェドラートがカモフラージュを解いたのか、目の前に
美しい青銀の蛇を
描いた船が現れた。
全員船に乗り込むと、フェルス皇国へ向けて動き出す。
「こんなでっけー船がいくつもあるのか。やっぱりフェルドナージュ様は
すっげーな!」
「すごいですわね。地上ではあまり移動船は見かけませんのに」
「なにせフェルス皇国にはアルカーンがいますからね。妖魔でも彼を凌ぐ技師は
そうはいません。気難しいのであまり頼み事はできませんけどね」
「確かリルさんと言う方のお兄さんでしたわね。一度お会いしてみたいですわ」
「あなたは竜騎士でしたね。彼も少し興味を持つかもしれません。
主に空中にどの程度飛翔していられるかの時間……でですが。
さて、そろそろ無駄話をおしまいにして、メルザさんの修行を始めましょう」
ライラロが直接幻術を使用して教える教師とするならば
フェドラートは
メルザの幻術に対する考え方を指導する形になった。
船上中フェドラートはしょっちゅう天を仰ぎ、この子はよくここまで
やってこれたな……と密かに思うのであった。
「俺様、やっぱりルインの後を追いたい。頼むよ、誰か連れてってくれよ」
「メルザさん。お気持ちはわかりますがそれは難しいですわ」
「るぴぃー?」
「けど! ルインに何かあったら俺様はもう……」
「あなたは、彼の主としては分不相応のようですね」
フェドラートが言い放つ。
「な!? 俺様はルインが心配で……一緒に行った方が安全だって。そう思って」
「あなたは足手まといですよ。お話を聞いた限りでは幻魔術士……いえ幻魔を具現化
させる幻魔招来術士でしょうか。しかし戦法はほぼ幻術中心でしょう。
我々妖魔は対象を取り込み力を発揮するのに対し
幻魔は幻術や幻魔を放出して戦います。
その初歩しかまだ掴んでいない。その上彼……ルインさんと違って精神的に未成熟です」
これ以上突き刺さる隙間がないほど的確に突き刺されたメルザ。下を向いてしまう。
「あの場所へは彼が単独で向かうのが適任です。絶対無事という保証はありませんけどね。
あなたは彼を行かせたんです。それならば後は待つしかできない。もし自分の未熟さが
悔しいならば、あなたに術の手ほどきをしてあげましょう。
それが私たちのために死地へ赴いた彼が望む事でしょう。
あなた自身を強くして、彼がよりあなたを守りやすくする。
それが今、私が行える彼への最大の敬意でしょう」
メルザはがばっと上を向いた。溜まっていた涙をごしごしと拭き頭を下げる。
「お願いだ。じゃなかったお願いします! もっと強くならないといけない
んだ。守られるんじゃない。ルイン達みんな守れるように!」
フェドラートはゆっくり微笑むと頷いて歩き出す。
「私は幻術士ではありません。ですが幻術招来に関して
知識を持っています。それを帰りの道すがら、あなたに伝授しましょう」
そういうと彼は、兵士と思わしき妖魔に指示を出して
補給物資を指定の場所に手配するよう伝えた。
「さぁ我々は一度フェルス皇国に戻りましょう」
「またあのでっけー船で行くのか? どうやってあそこまで行くんだ?」
「いえ、カモフラージュして見えなくさせて
ありますが、ブルースネークレクイエムという砂上船で戻ります」
フェドラートがカモフラージュを解いたのか、目の前に
美しい青銀の蛇を
描いた船が現れた。
全員船に乗り込むと、フェルス皇国へ向けて動き出す。
「こんなでっけー船がいくつもあるのか。やっぱりフェルドナージュ様は
すっげーな!」
「すごいですわね。地上ではあまり移動船は見かけませんのに」
「なにせフェルス皇国にはアルカーンがいますからね。妖魔でも彼を凌ぐ技師は
そうはいません。気難しいのであまり頼み事はできませんけどね」
「確かリルさんと言う方のお兄さんでしたわね。一度お会いしてみたいですわ」
「あなたは竜騎士でしたね。彼も少し興味を持つかもしれません。
主に空中にどの程度飛翔していられるかの時間……でですが。
さて、そろそろ無駄話をおしまいにして、メルザさんの修行を始めましょう」
ライラロが直接幻術を使用して教える教師とするならば
フェドラートは
メルザの幻術に対する考え方を指導する形になった。
船上中フェドラートはしょっちゅう天を仰ぎ、この子はよくここまで
やってこれたな……と密かに思うのであった。
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