異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

文字の大きさ
上 下
132 / 1,085
第六章 強くなる

第百十五話 悔いが残らないように

しおりを挟む
 俺たちは真っ逆さまに砂へ飲み込まれ、地中深くへと落ちていく。
「くそ、まじかよ! メルザ! おいメルザ!」
「……」

 だめだ、メルザは突き飛ばされたショックで意識を失ってる。
 まずい! 考えろ! そうだ、メルザに持たせた神の空間で安全だけでも確保しないと! 

 地面に近づいたらトウマをだしてクッションに……ってなんだあれは!? 

「うおおおおおお! クソゲーかよ、くそがっ!」

 下から巨大な魚が口を開けていた。このまま飲まれたら即死だ。こうなったら一か八かだ! 

「てめえごとクッションとして使ってやるよ! 潰れろ!」

 俺は目を閉じ前方に意識を集中させる。
「ピアニーインパルス」

 直後、ドゴォという衝撃音が前方に鳴り響いた。目が開けられない。
 すぐさま俺は見えないまま、神の空間をメルザの腰袋からまさぐって使おうとした。
 意識がもう持たない。

「ファナ、すまない。あとは……たの……」

 俺は化け物のような魚の中で、意識を失いそのまま落下する。

「当然よ。本当に仮を作りっぱなしなんだから」

 ファナは俺をぎゅっと掴み、落下する魚からふわりと脱出。
 そのままバットに変身してゆっくりと降りていった。

 神の空間は発動していなかった。

 どのくらいまで下に落ちていったのかわからないが
落ちた先はかなりの空間。
 
 多少の光はあるが暗い。そして気温も低い。
 地に着くと、ファナは変身を解いて、ルインと繋がれたメルザを降ろした。

「ごめんねメルザ。ちょっとだけ私がすること、許してね」

 そう言うとファナはルインを抱きしめた。

「私を信じてくれてありがとう。
命を救ってくれた恩、ここで少しでも返すわ。
今度は私があなたを守ってみせる」

 そしてぎゅっと拳を握りしめた。

 ファナは周囲を警戒する。
 先ほどの化け物のような魚がまだほかにもいるかもしれない。

 二人は今気絶しているから、この場からは動けない。

 そうだ、忘れてた! 

「おじさん、いるんでしょ。……だまって見てたわね」
「いやーあれだよ。べっぴんさん。何も見て無いよ? な? いいシーン
だったけどな? 全然だ」
「いいシーンて見てないとわからないわよね」
「そりゃああれだよ、回想シーンてやつだよ。
見逃したら損だろ? 損しちゃうだろ? な? おい」
「……話したら骨を折るわよ?」
「レウスさんとべっぴんさんだけの秘密だな! な!」

 ふぅとため息をつくファナ。

「それでおじさんには頼みがあるんだけど。
ここで二人がモンスターに襲われないように見張っているか、辺りを調べてきて欲しいのよ」
「俺飛べるからよ。あっち行ってくるわ。見てくる。
見てくるわー。まじで」
「お願いね。私はここにいるから」

 ひゅーっとレウスさんは飛び立ち周りを見に行く。

 それからまもなく……突如巨大なアリの化け物が一匹メルザとルインの
方へ近づいて来た! 

「ちっ こんなタイミングで……」

 二人には絶対近づけさせない。そう思いファナはわざと気付かせるように、巨大アリ
めがけてアンビラルのナイフを投げつけた。

「キリキリキリキリ……」

 アリは擦るような音をたてながら、ファナめがけて突っ込んでくる。
 ファナは今の状態で跳躍することはできない。

 ホバークラフトのように左に旋回しつつ、苦無を投げつける。

 タントンタトンと連続して苦無が地面に刺さる音がする。
 一発もあたっていない。
 足がない状態での戦闘に全く慣れてなどいない。

 太ももに隠してある吹き矢も、持っているナイフも
何一つあたらない。

 かといって変身する暇も、あのアリは与えてくれない。
 
 ファナはメルザとルインから、アリを引き離すように移動する。

 アリはファナを夢中で追う。
 完全に得物だと認識しているのだろう。
 捕まれば喰われる大きさだ。
 
 かなり移動して引き離しただろうか。
 これだけ二人から離れれば、その間に少なくともおじさんは戻ってくるだろう。

 ファナは十分だと思った。二人を守れたと。
 
 ここまで生きてこれたのだって不思議な位だ。
 
 あの二人ならニーメの事もきっと面倒を見てくれる。
 だから、後はお願いね。
 
 最後に私が一番したかった事は出来たから、もう悔いはないわ。
 ありがとう。ルイン。

 そう思い喰われるファナ。






 だがアリは咀嚼していなかった。そのままズズンと横に倒れる。

「ぱみゅー!」
「ぱもちゃん? それに……」
「ルイー!」
「もう私の仲間は誰一人、殺させたりしませんわ」
「ミリルにルーちゃん! よかった、無事だったのね……よかった。よかった……」

 ファナはどさりと倒れた。ミリルが慌ててかけより肩を貸した。
「恰好つけすぎですよ。もしあなたが死んだら、ルインさんは
自分を責めてここから出れなくなるかもしれませんわよ」
「ごめんね。けどわたしどうしても二人を助けたくて」
「いいえ、わたくしでもそうしましたから。気持ちはわかりますわ」

 そう言うとミリルは微笑む。


「ありがとうミリル。結局私は、また誰かに借りを増やしちゃった」
「わたくしには借りを返すんじゃなくて、ファナさんの笑顔だけ返してくださいね」

 そう言うとミリルは、ファナを担いで飛翔した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

念動力ON!〜スキル授与の列に並び直したらスキル2個貰えた〜

ばふぉりん
ファンタジー
 こんなスキルあったらなぁ〜?  あれ?このスキルって・・・えい〜できた  スキル授与の列で一つのスキルをもらったけど、列はまだ長いのでさいしょのすきるで後方の列に並び直したらそのまま・・・もう一個もらっちゃったよ。  いいの?

約束の子

月夜野 すみれ
ファンタジー
幼い頃から特別扱いをされていた神官の少年カイル。 カイルが上級神官になったとき、神の化身と言われていた少女ミラが上級神官として同じ神殿にやってきた。 真面目な性格のカイルとわがままなミラは反発しあう。 しかしミラとカイルは「約束の子」、「破壊神の使い」などと呼ばれ命を狙われていたと知る事になる。 攻撃魔法が一切使えないカイルと強力な魔法が使える代わりにバリエーションが少ないミラが「約束の子」/「破壊神の使い」が施行するとされる「契約」を阻む事になる。 カタカナの名前が沢山出てきますが主人公二人の名前以外は覚えなくていいです(特に人名は途中で入れ替わったりしますので)。 名無しだと混乱するから名前が付いてるだけで1度しか出てこない名前も多いので覚える必要はありません。 カクヨム、小説家になろう、ノベマにも同じものを投稿しています。

処理中です...