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第六章 強くなる
第百三話 二人の行方は
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俺たちはリルの人形家を目指していた。
道中値踏みをするかのような目ですれ違う妖魔に見られた。
なんか物々しい雰囲気だな。少し雰囲気変わったか、この辺り。他人に関心がない筈なんだけどな。
リルの家までは覚えやすい道だったので、道には迷わなかった。
「ムーラさん、こんにちは。リルとサラはいますか?」
俺は人形に丁寧に挨拶する。一緒にいるメルザは不思議に思っている。
あれ、返事がないな。寝ているのか?
「ごめんメルザ。ちょっと行き先変えるよ」
「ああ、誰もいないみたいだったしな。出かけてるのかな」
俺達はアルカーンの家に行く。がこちらも誰もいないようだ。
「参ったな、どっちも留守か。改めて出直すか。そうだ、武器防具屋フォモルコデックスの
店主なら知ってるかもしれないな。
俺はそう思い、妖兵エリアにある武器防具屋を目指した。
「すみません。店主さんいますか?」
「おうおうなんだ、この忙しい時に。下妖一がなんのようだ?」
「あのー、ちょっと聞きたいんですが」
「げげっあんたは!? しかもその装備はぁ! うひぃ!?
ななな、なんのご用でしょうか。おぼっちゃま」
「……えーっとリルとサラに会いたいんだけど、どこにいるか知りませんか?」
「リルカーン様とサラカーン様ですかい? フェルドナージュ様に呼ばれて、お二人とも
出かけられましたよ」
「そうですか、行先まではわかりませんか?」
「いえ、いいにくいんですがね。実は戦争が始まりそうで。
我々も忙しくて忙しくて」
「何だって? じゃあリルとサラはその戦争に?」
「い、いえ落ち着いてください。使者として向かったときいてますんで」
「戦争する相手に使者? それは危険なんじゃ」
「そうですな。確かに危険ですがフェルドナージュ様のご命令ですから」
「……そうですか。ありがとうございました。」
俺は自分の装備を見る。二人は自らの装備を俺に託している。
「リル……俺は」
メルザが心配そうに俺を見て裾を掴む。
「大丈夫だメルザ。だが俺はこの国の皇女、フェルドナージュ様に
面会を申し込んでみる。一緒に来るか?」
「ああ、勿論だ。その皇女様ってのにもあってみたいしな」
「わかった。だがメルザは皇女様の前ではあまり喋らない方がいい気がするな……厳しい方だから」
メルザが小首を傾げているが、俺の心中は気が気ではなかった。
フェルス皇国、ペシュメルガ城に到着した俺は門の前で頭を抱えていた。
どうやって面会をとりつくろえばいいんだ……。
しばらく城の前で思案していると、一人の男が門から出てくる。
「何用だ。城の前をうろうろしていると牢に入れるぞ」
あれ……? 確かこの人は……「ベルローゼ殿……でしたよね?」
「ああ、お前は献上品を持ち寄った剣客か。
あまり城前をうろつかぬことだ」
「実は、フェルドナージュ様に頂いたこちらの装備を。
私には過ぎたるものなのでお返ししようかと思いまして」
俺は取り外していた蛇佩楯を見せる。蛇籠手は装備したままだ。
「ほう。過ぎたる物を返上とは良い心がけだ。
よかろう。フェルドナージュ様にお話しを通してやる。
しばし待て」
「はい、承知しました」
ベルローゼはすっと消えて門が閉まる。
フェルドナージュ様の右腕だろうか。恐ろしい雰囲気がある。
しばらくするとベルローゼが戻ってきた。少し不機嫌そうな顔をしている。
「貴様に会うとおっしゃっている。それと防具は返上不要とのことだ。
身に余る物を与えられている事に多いに感謝せよ。ついて来い」
そう言うとベルローゼはゆっくりと歩き出した。
俺とメルザも後を続く。
「ルインよ。無事戻ったか。表をあげよ」
「はい、フェルドナージュ様。失礼いたします」
メルザも見様見真似でポーズをとるが、無茶だった。
「それがそなたの主か。教養が足りないようじゃ。
其方の主としては不十分。精進するがよい。
確かに礼儀作法は少し教えないとな。
メルザも女の子だし。自然のメルザが好きだが、覚えておいて
損はないだろう。
俺はメルザを見てにっこりする。メルザは顔が赤い。
「よい関係ではあるようだな。して童に用向きとは
与えた装備の返上だけだったのか?」
「実は戦争が起こるかもしれないという知らせと
使者としてリルとサラが赴いているとおききしました」
「其方の耳にも入っておるか。困った事になっておってな。
リルとサラには危険だが、敵国への潜入調査と使者
両方の役目を任せておる」
「どちらの国に赴いたのでしょうか?」
「教えれば其方は向かうつもりであろう。
危険どころの騒ぎではない。それでも知りたいか」
「はい、私はこの装備と、フェルドナージュ様が与えて下さった
装備が無ければ確実に死んでおりました。
恩を友人の死などで終わらせるつもりはありません」
「其方は相変わらずだのう。童が気に入ったのもそういった
忠義忠節に真っすぐなところだ。よかろう。
そなたにも任務として向かってもらう。よいな」
「はい、承知致しました」
「ベルローゼよ!」
「はっ。ここに」
「貴様はその者たちを率いて輸送任務を
こなせ。その者たちを決して無碍に扱うでない。よいな!」
「……承知しました」
「リルとサラを頼む。童にとっては可愛い甥と姪じゃ。
二人は残虐のベルータス。
奴が収める皇国ベレッタに向かった。気を付けて行くがよい」
「メルザ、勝手に決めてごめん」
「だいじょぶだ。俺様はルインと一緒ならどこまででも一緒だ」
「おい貴様ら。まさか貴様らと行動を共にしなければならないとは。屈辱だが
そのみだらな身だしなみを整えよ」
そう言うとお金らしき袋を俺に投げ渡した。
「フォモルコデックスで装備を整えろ。それ以外の準備もしろ。
出発は二日後。またこの城門前に来い」
「わかりました。あの、ベルローゼさん」
「なんだ」
「ありがとうございます」
「主の命令だ。貴様に礼を言われる筋合いはない」
「それでもです」
「ふん……早く行け」
あれって男版のツンデレじゃないかと俺は思っている。
どのみち今の装備だけでは不安があるな。
そういえばレウスさんから渡された装備などもあるな。
ちゃんと調べて適切な装備を選ぼう。
この先の旅のために、しっかりと準備をしなければ。
道中値踏みをするかのような目ですれ違う妖魔に見られた。
なんか物々しい雰囲気だな。少し雰囲気変わったか、この辺り。他人に関心がない筈なんだけどな。
リルの家までは覚えやすい道だったので、道には迷わなかった。
「ムーラさん、こんにちは。リルとサラはいますか?」
俺は人形に丁寧に挨拶する。一緒にいるメルザは不思議に思っている。
あれ、返事がないな。寝ているのか?
「ごめんメルザ。ちょっと行き先変えるよ」
「ああ、誰もいないみたいだったしな。出かけてるのかな」
俺達はアルカーンの家に行く。がこちらも誰もいないようだ。
「参ったな、どっちも留守か。改めて出直すか。そうだ、武器防具屋フォモルコデックスの
店主なら知ってるかもしれないな。
俺はそう思い、妖兵エリアにある武器防具屋を目指した。
「すみません。店主さんいますか?」
「おうおうなんだ、この忙しい時に。下妖一がなんのようだ?」
「あのー、ちょっと聞きたいんですが」
「げげっあんたは!? しかもその装備はぁ! うひぃ!?
ななな、なんのご用でしょうか。おぼっちゃま」
「……えーっとリルとサラに会いたいんだけど、どこにいるか知りませんか?」
「リルカーン様とサラカーン様ですかい? フェルドナージュ様に呼ばれて、お二人とも
出かけられましたよ」
「そうですか、行先まではわかりませんか?」
「いえ、いいにくいんですがね。実は戦争が始まりそうで。
我々も忙しくて忙しくて」
「何だって? じゃあリルとサラはその戦争に?」
「い、いえ落ち着いてください。使者として向かったときいてますんで」
「戦争する相手に使者? それは危険なんじゃ」
「そうですな。確かに危険ですがフェルドナージュ様のご命令ですから」
「……そうですか。ありがとうございました。」
俺は自分の装備を見る。二人は自らの装備を俺に託している。
「リル……俺は」
メルザが心配そうに俺を見て裾を掴む。
「大丈夫だメルザ。だが俺はこの国の皇女、フェルドナージュ様に
面会を申し込んでみる。一緒に来るか?」
「ああ、勿論だ。その皇女様ってのにもあってみたいしな」
「わかった。だがメルザは皇女様の前ではあまり喋らない方がいい気がするな……厳しい方だから」
メルザが小首を傾げているが、俺の心中は気が気ではなかった。
フェルス皇国、ペシュメルガ城に到着した俺は門の前で頭を抱えていた。
どうやって面会をとりつくろえばいいんだ……。
しばらく城の前で思案していると、一人の男が門から出てくる。
「何用だ。城の前をうろうろしていると牢に入れるぞ」
あれ……? 確かこの人は……「ベルローゼ殿……でしたよね?」
「ああ、お前は献上品を持ち寄った剣客か。
あまり城前をうろつかぬことだ」
「実は、フェルドナージュ様に頂いたこちらの装備を。
私には過ぎたるものなのでお返ししようかと思いまして」
俺は取り外していた蛇佩楯を見せる。蛇籠手は装備したままだ。
「ほう。過ぎたる物を返上とは良い心がけだ。
よかろう。フェルドナージュ様にお話しを通してやる。
しばし待て」
「はい、承知しました」
ベルローゼはすっと消えて門が閉まる。
フェルドナージュ様の右腕だろうか。恐ろしい雰囲気がある。
しばらくするとベルローゼが戻ってきた。少し不機嫌そうな顔をしている。
「貴様に会うとおっしゃっている。それと防具は返上不要とのことだ。
身に余る物を与えられている事に多いに感謝せよ。ついて来い」
そう言うとベルローゼはゆっくりと歩き出した。
俺とメルザも後を続く。
「ルインよ。無事戻ったか。表をあげよ」
「はい、フェルドナージュ様。失礼いたします」
メルザも見様見真似でポーズをとるが、無茶だった。
「それがそなたの主か。教養が足りないようじゃ。
其方の主としては不十分。精進するがよい。
確かに礼儀作法は少し教えないとな。
メルザも女の子だし。自然のメルザが好きだが、覚えておいて
損はないだろう。
俺はメルザを見てにっこりする。メルザは顔が赤い。
「よい関係ではあるようだな。して童に用向きとは
与えた装備の返上だけだったのか?」
「実は戦争が起こるかもしれないという知らせと
使者としてリルとサラが赴いているとおききしました」
「其方の耳にも入っておるか。困った事になっておってな。
リルとサラには危険だが、敵国への潜入調査と使者
両方の役目を任せておる」
「どちらの国に赴いたのでしょうか?」
「教えれば其方は向かうつもりであろう。
危険どころの騒ぎではない。それでも知りたいか」
「はい、私はこの装備と、フェルドナージュ様が与えて下さった
装備が無ければ確実に死んでおりました。
恩を友人の死などで終わらせるつもりはありません」
「其方は相変わらずだのう。童が気に入ったのもそういった
忠義忠節に真っすぐなところだ。よかろう。
そなたにも任務として向かってもらう。よいな」
「はい、承知致しました」
「ベルローゼよ!」
「はっ。ここに」
「貴様はその者たちを率いて輸送任務を
こなせ。その者たちを決して無碍に扱うでない。よいな!」
「……承知しました」
「リルとサラを頼む。童にとっては可愛い甥と姪じゃ。
二人は残虐のベルータス。
奴が収める皇国ベレッタに向かった。気を付けて行くがよい」
「メルザ、勝手に決めてごめん」
「だいじょぶだ。俺様はルインと一緒ならどこまででも一緒だ」
「おい貴様ら。まさか貴様らと行動を共にしなければならないとは。屈辱だが
そのみだらな身だしなみを整えよ」
そう言うとお金らしき袋を俺に投げ渡した。
「フォモルコデックスで装備を整えろ。それ以外の準備もしろ。
出発は二日後。またこの城門前に来い」
「わかりました。あの、ベルローゼさん」
「なんだ」
「ありがとうございます」
「主の命令だ。貴様に礼を言われる筋合いはない」
「それでもです」
「ふん……早く行け」
あれって男版のツンデレじゃないかと俺は思っている。
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