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第四章 諦めない者たち 妖魔の国編
第八十二話 ルインのいない世界
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「……ここ、は……」
メルザはぼんやりとしながら目をこする。
どうして寝ていたのか。どこで寝ていたのか。
あまり覚えていない。ふわふわとした感覚だけがある。
見たことがない景色だ。どこかで倒れてルインが運んでくれたのかな。
自分がおっちょこちょいなだけあって、ルインにはしょっちゅう助けられる。
いつも傍にいるからそれが自然すぎるけど。
腹が減ったので、食べ物でもせがむか。
ここはどこなんだろう?誰も見当たらない。
どこかの宿屋のようだけど。俺様はどこにいたんだっけ?
とりあえずこの部屋から出よう。
そう思い枕元を見るとびっしょりと濡れている。雨漏りしてるのか、ここ。
あれ、誰か入ってきたな。
「おはようございます。メルザさん」
「おう、ミリルじゃねーか、腹減ったよー。ここ、どこだ?」
「ここはトリノポート。ベッツェンですわ」
「俺様たちってずっとここにいたっけ?」
「……記憶が混同しているのですね……」
「そんな事よりルインは何処だ? 飯にしよーぜ!」
ミリルはとても悲しそうな顔をしている。今にも泣き出しそうな
そんな顔だ。なんかその顔を見てると頭が痛くなる。
「やっぱり精神を安定させるだけの幻術じゃ、ダメみたいね」
「あ、ライラロ師匠もいたのか。なぁ、なんで俺様ここにいるんだ。ルインは?」
「このままだとダメね。もう思い出しちゃうかも」
「ああ、そんな……メルザさん」
ミリルは泣きながらメルザをきつく抱きしめた。
メルザは悲しくないのに、目からどんどん涙が出てくる。
「ルインさんは、ルインさんは私たちを庇って。それで……」
「え、何言ってんだ。だってここはベッツェンだろ?
ベッツェンでこれから。あれ、これからどうするんだっけ」
「もう、もういいのよ。これからあなたは家に帰る。
家に帰るとこだったのよ」
「何言ってんだ。あそこは俺様と、ルインと、ファナやニーメと
暮らす家だぞ。
俺様だけじゃ帰れない。帰れないよ……ルイン、ルインは何処なの、ねえ! ルインは!」
目で手を抑え、膝から崩れ落ちるミリル。
溢れんばかりの涙がとめどなく地面に落ちる。
「私たちを庇ったルインさんは、常闇のカイナのものに
一刀両断に……されたって……聞きました」
メルザは急いで外に出ようとする。が、ライラロに止められた。
「どこに行くつもり?」
「……噓だ」
「何が」
「全部噓だ。ルインが俺様を残して死ぬはずがない」
「何でよ」
「だって俺様を守るのが子分のあいつの役目だ」
「だから?」
「だから今でも俺様を守ってくれるはずだ!」
「だからあんたはここにいるじゃない! 誰のおかげでここに
あんたがいると思っているのよ! あんたを守るために、あんたが生きるためにあいつはあそこに残った!
そのあんたがあそこに戻って死ぬなんて、絶対に私は許さない!
あいつは、あいつはあんたを守って死んだのよ?
あんたに生きて欲しいから、あんたにずっと笑っていて欲しいから! だから、だからお願い……行かないで。
あいつの思いを無駄にしないで。
お願いよ……」
そう言ってライラロはきつくメルザを抱きしめる。
「いや、いやだ。やだよぉ。ルインがいないとやだよぉ。
いっぱいいっぱい一緒にいて、いっぱい旅をして
いっぱい一緒に飯を食ってさ。ずっと一緒に暮らして。
俺様の話し言葉がいいって。だから俺様は。俺様は
あいつの事が好きなのに。なんで、なんで……」
メルザは必死にライラロにしがみつく。
「ルインが、ルインがいない世界なんかで
もう笑って生きてなんていけないよ」
メルザもライラロも、互いに寄りかかるようにずっと泣いていた。
メルザはぼんやりとしながら目をこする。
どうして寝ていたのか。どこで寝ていたのか。
あまり覚えていない。ふわふわとした感覚だけがある。
見たことがない景色だ。どこかで倒れてルインが運んでくれたのかな。
自分がおっちょこちょいなだけあって、ルインにはしょっちゅう助けられる。
いつも傍にいるからそれが自然すぎるけど。
腹が減ったので、食べ物でもせがむか。
ここはどこなんだろう?誰も見当たらない。
どこかの宿屋のようだけど。俺様はどこにいたんだっけ?
とりあえずこの部屋から出よう。
そう思い枕元を見るとびっしょりと濡れている。雨漏りしてるのか、ここ。
あれ、誰か入ってきたな。
「おはようございます。メルザさん」
「おう、ミリルじゃねーか、腹減ったよー。ここ、どこだ?」
「ここはトリノポート。ベッツェンですわ」
「俺様たちってずっとここにいたっけ?」
「……記憶が混同しているのですね……」
「そんな事よりルインは何処だ? 飯にしよーぜ!」
ミリルはとても悲しそうな顔をしている。今にも泣き出しそうな
そんな顔だ。なんかその顔を見てると頭が痛くなる。
「やっぱり精神を安定させるだけの幻術じゃ、ダメみたいね」
「あ、ライラロ師匠もいたのか。なぁ、なんで俺様ここにいるんだ。ルインは?」
「このままだとダメね。もう思い出しちゃうかも」
「ああ、そんな……メルザさん」
ミリルは泣きながらメルザをきつく抱きしめた。
メルザは悲しくないのに、目からどんどん涙が出てくる。
「ルインさんは、ルインさんは私たちを庇って。それで……」
「え、何言ってんだ。だってここはベッツェンだろ?
ベッツェンでこれから。あれ、これからどうするんだっけ」
「もう、もういいのよ。これからあなたは家に帰る。
家に帰るとこだったのよ」
「何言ってんだ。あそこは俺様と、ルインと、ファナやニーメと
暮らす家だぞ。
俺様だけじゃ帰れない。帰れないよ……ルイン、ルインは何処なの、ねえ! ルインは!」
目で手を抑え、膝から崩れ落ちるミリル。
溢れんばかりの涙がとめどなく地面に落ちる。
「私たちを庇ったルインさんは、常闇のカイナのものに
一刀両断に……されたって……聞きました」
メルザは急いで外に出ようとする。が、ライラロに止められた。
「どこに行くつもり?」
「……噓だ」
「何が」
「全部噓だ。ルインが俺様を残して死ぬはずがない」
「何でよ」
「だって俺様を守るのが子分のあいつの役目だ」
「だから?」
「だから今でも俺様を守ってくれるはずだ!」
「だからあんたはここにいるじゃない! 誰のおかげでここに
あんたがいると思っているのよ! あんたを守るために、あんたが生きるためにあいつはあそこに残った!
そのあんたがあそこに戻って死ぬなんて、絶対に私は許さない!
あいつは、あいつはあんたを守って死んだのよ?
あんたに生きて欲しいから、あんたにずっと笑っていて欲しいから! だから、だからお願い……行かないで。
あいつの思いを無駄にしないで。
お願いよ……」
そう言ってライラロはきつくメルザを抱きしめる。
「いや、いやだ。やだよぉ。ルインがいないとやだよぉ。
いっぱいいっぱい一緒にいて、いっぱい旅をして
いっぱい一緒に飯を食ってさ。ずっと一緒に暮らして。
俺様の話し言葉がいいって。だから俺様は。俺様は
あいつの事が好きなのに。なんで、なんで……」
メルザは必死にライラロにしがみつく。
「ルインが、ルインがいない世界なんかで
もう笑って生きてなんていけないよ」
メルザもライラロも、互いに寄りかかるようにずっと泣いていた。
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