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第三章 闘技大会 後編
第五十九話 決勝戦の後に
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ここは……痛つつっ……あー傷だらけだ。
あいつのハチの巣みたいな攻撃受けたから仕方ないか。
「ん……ルイン、起きたのか?」
メルザは俺に身体を預けて寝ていた。ずっと看病しててくれたんだな。
「ああ、ありがとな。看ててくれたんだろ?」
そういうと痛む手でメルザの頭を撫でてやる。
「お、俺様はルインの親分だからな! その、心配して当然だ……けど無事でよかった。
あいつ強かったからよ。俺様心配で」
メルザは下を向いてしまう。
「ああ、強かった。一対一であそこまで追い詰められたのは
師匠以来だな。けど……勝ったぜ」
にっこりと笑ってメルザを見る。
メルザも「にははっ」といい笑顔を見せてくれた。
「そうだ腹減ってるだろ? あっちにスープあるんだ。温めて
持ってきてやるよ!」
そういうとメルザはバタバタと出ていく。
確かに腹は減ったな。
ベルドはどうなったんだろう。あの技は未完成だし生きてりゃいいが。
どうにか上体を起こしてみたがダメだ。まだまだ身体動かせないな。
メルザが義手でスープの皿を抱えて戻ってきた。
「待たせたな、ルイン。ミリルがつくってくれたんだけどよ。
うめぇぞこのスープ! 飲んでみろよ!」
そういうと、メルザが口にスープをあてがう。
「あつっ」
「あ、わりーわりー、こういうの慣れてなくてよ。あれ?」
俺たちはお互いを見る。
「あっはっは。懐かしいなメルザ、この光景」
「ああ、俺様も同じこと思ってた。本当に懐かしいな」
俺たちが出会った時、メルザは薄いスープを飲ませてくれた。
熱すぎて今と同じような状態になったが、薄いスープなのに
どんなスープよりも美味かった。
今飲んだスープはそれよりも美味しい。
けれどその美味しいじゃない別の味がスープには詰まっている。
メルザという優しい女性の思いの味が飲ませてくれるスープにはある。
「おうルイン。調子はどうだ? ん? 何やってんだお前ら」
「し、師匠!? 来てたんですか? いや、なんでもしてないです」
「何でもしてない? それを言うなら何もしてないだろ?」
「それです!」
はぁ……と一息ついて師匠は続ける。
「まぁいい。あーなんだその、お前がベルドに勝てるとこまで行くとは正直あんま思ってなかったんだが……よくやったな」
師匠はかなり照れているが、やはり嬉しいようだ。
俺も師匠に教わったことを活かせて嬉しい。
「それで最後のありゃ何だ? 特訓してるときとは別の技だろ」
「ちょくちょく練習はしていたんですが、実践で使ったのは初めてです。ピアニーインパルスっていいます。」
「ピアニーインパルスか。またかっこいい名前つけるじゃねえか。
今度俺様の必殺技にも名前つけてもらうかな」
え、いいの? けど師匠の技ってどれも威力が高すぎて
全部、殺すとかキルとかデスとかついてしまうよ?
「あぁ、それは置いといて、授与式は明後日だ。
それから大会ポイントの交換は
いつでもできるそうだぞ。
治癒術使いを呼んでおいた。もうじき来るはずだが……」
「ったく、なんで行かなきゃいけねえんだよ。まじで殺すぞこら!」
あ、この声の人知ってる。超怖い人だ。
「おうベルディス! ここかぁ?」
「あ、あのどうもセフィアさん……でしたっけ?」
「おう、てめぇか。ベルディスの弟子。随分酷くやられやがったな。
まぁ他の試合よりは楽しめたけどな」
メルザの話し方に似てるけど、数倍怖くした感じだ。
とてつもない美人なのになぁ。
そういえば後ろに金ぴかな目立つ鎧着てる人もいるな。この人も師匠の知り合いかな?
「そーいやおさげの嬢ちゃんの治療へ来た時にあったんだっけな。
こっちにいる怖いのがセフィア。金色がハーヴァルだ。
「あぁ!? 誰が怖いだ? 喧嘩売ってんのかベルディステメー!」
「おいハーヴァル、セフィアに飲み物頼む」
「もう用意してあるよ。ったく」
そういうとハーヴァルはすっとセフィアに飲み物を少量さしだした。
「おう気が利くじゃねーか」
セフィアは一気に飲み干した。
何してんだろ? というか何しにきたんだこの人たち。
「あい、わらし。座りまふ……」
突然地面に座り込む美女。何してんの?
「こいつは酒飲むと大人しくなる。おいセフィア、ルインを
治療してやってくれ。連れ歩ける位にな」
「なんれすか!? ルインちゃん連れ歩いてどこにいくんれすか! わらしが代わりにいきなすよ!?」
「いいからさっさとやってくれ」
「むー、わらしましたよー、どうせわらしなんか。えっぐ……はいっ」
あれだけで酔っぱらうのか。しかも酔うと人が変わる。
悪い方に変わるってよく言うが、こんな大人しくなる人は
そうそういないだろうな。
「みっきゃー、かわゆい! この子かわゆいれすぅーすりすり。
いい匂いするー。えへへ、私のもんれすぅ」
「おいやめろ! ルイン助けてくれ!」
セフィアはメルザにすりよってチューをせがんでいる。
美女が美少女と戯れる貴重なシーンだ。脳裏に保存しておこう。
「どうだ、身体は動くか? 動くならちっとあっちに面貸しな」
「はい、師匠」
「俺も少しだけ出る。セフィアを少し頼むぞ」
「えぇ!? おおーい助けてくれー! ルイン! シーザー!」
叫ぶメルザを置いて俺たちは部屋を出た。
あいつのハチの巣みたいな攻撃受けたから仕方ないか。
「ん……ルイン、起きたのか?」
メルザは俺に身体を預けて寝ていた。ずっと看病しててくれたんだな。
「ああ、ありがとな。看ててくれたんだろ?」
そういうと痛む手でメルザの頭を撫でてやる。
「お、俺様はルインの親分だからな! その、心配して当然だ……けど無事でよかった。
あいつ強かったからよ。俺様心配で」
メルザは下を向いてしまう。
「ああ、強かった。一対一であそこまで追い詰められたのは
師匠以来だな。けど……勝ったぜ」
にっこりと笑ってメルザを見る。
メルザも「にははっ」といい笑顔を見せてくれた。
「そうだ腹減ってるだろ? あっちにスープあるんだ。温めて
持ってきてやるよ!」
そういうとメルザはバタバタと出ていく。
確かに腹は減ったな。
ベルドはどうなったんだろう。あの技は未完成だし生きてりゃいいが。
どうにか上体を起こしてみたがダメだ。まだまだ身体動かせないな。
メルザが義手でスープの皿を抱えて戻ってきた。
「待たせたな、ルイン。ミリルがつくってくれたんだけどよ。
うめぇぞこのスープ! 飲んでみろよ!」
そういうと、メルザが口にスープをあてがう。
「あつっ」
「あ、わりーわりー、こういうの慣れてなくてよ。あれ?」
俺たちはお互いを見る。
「あっはっは。懐かしいなメルザ、この光景」
「ああ、俺様も同じこと思ってた。本当に懐かしいな」
俺たちが出会った時、メルザは薄いスープを飲ませてくれた。
熱すぎて今と同じような状態になったが、薄いスープなのに
どんなスープよりも美味かった。
今飲んだスープはそれよりも美味しい。
けれどその美味しいじゃない別の味がスープには詰まっている。
メルザという優しい女性の思いの味が飲ませてくれるスープにはある。
「おうルイン。調子はどうだ? ん? 何やってんだお前ら」
「し、師匠!? 来てたんですか? いや、なんでもしてないです」
「何でもしてない? それを言うなら何もしてないだろ?」
「それです!」
はぁ……と一息ついて師匠は続ける。
「まぁいい。あーなんだその、お前がベルドに勝てるとこまで行くとは正直あんま思ってなかったんだが……よくやったな」
師匠はかなり照れているが、やはり嬉しいようだ。
俺も師匠に教わったことを活かせて嬉しい。
「それで最後のありゃ何だ? 特訓してるときとは別の技だろ」
「ちょくちょく練習はしていたんですが、実践で使ったのは初めてです。ピアニーインパルスっていいます。」
「ピアニーインパルスか。またかっこいい名前つけるじゃねえか。
今度俺様の必殺技にも名前つけてもらうかな」
え、いいの? けど師匠の技ってどれも威力が高すぎて
全部、殺すとかキルとかデスとかついてしまうよ?
「あぁ、それは置いといて、授与式は明後日だ。
それから大会ポイントの交換は
いつでもできるそうだぞ。
治癒術使いを呼んでおいた。もうじき来るはずだが……」
「ったく、なんで行かなきゃいけねえんだよ。まじで殺すぞこら!」
あ、この声の人知ってる。超怖い人だ。
「おうベルディス! ここかぁ?」
「あ、あのどうもセフィアさん……でしたっけ?」
「おう、てめぇか。ベルディスの弟子。随分酷くやられやがったな。
まぁ他の試合よりは楽しめたけどな」
メルザの話し方に似てるけど、数倍怖くした感じだ。
とてつもない美人なのになぁ。
そういえば後ろに金ぴかな目立つ鎧着てる人もいるな。この人も師匠の知り合いかな?
「そーいやおさげの嬢ちゃんの治療へ来た時にあったんだっけな。
こっちにいる怖いのがセフィア。金色がハーヴァルだ。
「あぁ!? 誰が怖いだ? 喧嘩売ってんのかベルディステメー!」
「おいハーヴァル、セフィアに飲み物頼む」
「もう用意してあるよ。ったく」
そういうとハーヴァルはすっとセフィアに飲み物を少量さしだした。
「おう気が利くじゃねーか」
セフィアは一気に飲み干した。
何してんだろ? というか何しにきたんだこの人たち。
「あい、わらし。座りまふ……」
突然地面に座り込む美女。何してんの?
「こいつは酒飲むと大人しくなる。おいセフィア、ルインを
治療してやってくれ。連れ歩ける位にな」
「なんれすか!? ルインちゃん連れ歩いてどこにいくんれすか! わらしが代わりにいきなすよ!?」
「いいからさっさとやってくれ」
「むー、わらしましたよー、どうせわらしなんか。えっぐ……はいっ」
あれだけで酔っぱらうのか。しかも酔うと人が変わる。
悪い方に変わるってよく言うが、こんな大人しくなる人は
そうそういないだろうな。
「みっきゃー、かわゆい! この子かわゆいれすぅーすりすり。
いい匂いするー。えへへ、私のもんれすぅ」
「おいやめろ! ルイン助けてくれ!」
セフィアはメルザにすりよってチューをせがんでいる。
美女が美少女と戯れる貴重なシーンだ。脳裏に保存しておこう。
「どうだ、身体は動くか? 動くならちっとあっちに面貸しな」
「はい、師匠」
「俺も少しだけ出る。セフィアを少し頼むぞ」
「えぇ!? おおーい助けてくれー! ルイン! シーザー!」
叫ぶメルザを置いて俺たちは部屋を出た。
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