異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

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第三章 闘技大会 後編

第五十八話 近接戦本選 決勝戦! ルインvsベルド

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 ベルド戦の相手が棄権したため、後日行われる予定だった
近接戦本選の決勝が、この後行われる事になった。

 公平を期すため、俺は治療室で全身治療をくまなく受け
さらに
食事休憩を取り、万全な状態で挑むことになるらしい。

 心配になったのかメルザが俺のところに来る。

「大丈夫か? ルイン。怪我とかしてないか?」
「あぁ、大丈夫だメルザ。俺なら問題ない。
必ず勝つ! 大手を振って帰りたいしな」
「あぁ、俺様のルインならきっと勝つさ!」

 メルザに拳を突き出すと、メルザも拳をあてる……だけかと思ったが
その手をびしばし叩かれた。

「この手か! ぽよんしたのはこの手だな! 俺様のじゃそんなに
足りないのか! えいっ!」

 ちょ、やめろって。あれは不可抗力だ! 
 しかし十分気合が入った。
 メルザにばっちり元気をもらっい会場へ向かう。

「急遽予定が縮まりまして、近接戦決勝戦
まもなく始まります!」
「ここまであっという間でしたねっ! まさか私を知らない人が決勝まで
くるとはっ!」
「あの充実青年が残るとは私も思いませんでした!」

 会場からわははと笑い声がする。
 俺の名前がすっかり充実青年と化している。

「相対するは今回の一番の優勝候補者である、ベルド選手。
彼が勝てば非常に順当。だが勝負は始まってみないとわかりません!」

「君が勝ち残ってくれてよかったよ。そうじゃなければ
自分の妹を滅多打ちにするところだった」
「あんたの場合はそれでも別に気が引けたりはしないんだろ?」
「まぁそうだね。父上にはそのようにするよう教わったから」
「大した武人だな、その人も」
「ああ、尊敬できる父だ。褒めてくれてありがとう。いい試合ができそうだ」

「それでは決勝戦、開始!」

 突っ込んでくるベルディアと違い、やはりこいつは冷静だな……カットラスをまだ抜かない。
てか抜く隙がないな。

 お互いで軽いフェイントをかけつつ様子を見る。
 
 絶対あっちのほうが先に動かないとならない。
 理由は武器の重量さだ。 短槍とはいえ変幻可能な
その短槍が二本もあれば十分重い。

「ふぅ、やっぱり間合いの取り方だけ見てても普通じゃないね君は。仕方ない、先手はかけるよ」

 そう言うと短槍二本をあわせて長槍にする。 
 ようやくカットラス引き抜けたぜこのやろう! 

「んじゃ、行くよ!」

  
 危なっ! どんだけ早いんだよこいつ! 

 一気に間合いを詰める上、長槍による一直線突き。
 シールドでどうにか受け止めはしたが、こいつは悪手だ。
 後ろにおしこめられた……ポジションも悪い! 

「連牙槍」

 ベルドは長槍をすでに2本短槍にかえていた! 二本の短槍で前方を埋め尽くすほどの
連続突きを行う。
 
 かなりダメージをもらっちまった。少し出血したか。 
 プラチナで織り込まれたコタルディに無数の穴をあけられた。
 だが……「俺もただじゃ終わらない!」

 短槍の右手めがけて強烈な左のフラタニティを繰り出す。
 ギィンとけたたましい音とともに短槍で受け止められる。
「っ!」
 
 ベルドは後ろにさがり様子を伺う。 
 弾き飛ばすはずだったのにダメか。
 後ろに下がると槍はすでに長槍に変わっている。
 
 本当厄介な武器だ。距離に合わせて形を変える、変幻自在の槍。
 遠隔ありきなら話は別だが無類の強さだ。
 どうするか……オペラモーヴは斬撃飛ばしだから規定に引っかかるし。
 練習していたアレを試してみるか。

「重空槍」

 気付くとやつは空から斜めに槍をおもいきり突き出して突撃してきていた。

 めい一杯跳躍して左にそれる。そらしている最中に
右側へ甚大なダメージを負った……場外まであまり後がない。
 
 ベルドは地面に着く直前に短槍長槍二本構えに変え
連撃を使用してくる。 

 あたればさらに大ダメージ。
 受けても危険位置、外れれば連撃で追い打ちか……洒落にならないな。

「これでおしまいかい?」
「いいやこっちの番だね!」

 その形態を待っていた。
 長いほうの槍を持つベルドの右手にカットラスで切り込む。
 
 奴はそれを受け、当然短槍で攻撃してくる。
 それをガントレットで阻みながら狭いわずかな空間を作る。
「それじゃ攻撃できないだろう」
「ピアニーインパルス!」

 目を閉じ、奴の腹を僅かな隙間から拳で衝撃を与えるイメージで思い切り放った。

 目を開けると、奴の腹は赤紫色になり場外まで吹っ飛んでいた。

「ぐっ……なんて威力だ。完敗……だ」
「この技がなきゃ、負けてたよ。 ぐっ……」

 目から血を流し膝をつく。
 あ、やばい。血、流しすぎだなこれ。
 けれど勝った。目の力がなければ大敗だった。
 隠し玉をとっておけて助かった。

「大会決勝戦! 凄い試合でした! 近接戦優勝は、ルイン・ラインバウト選手です!」

 それだけを聞き届け、どさりとその場に倒れて意識を失った。

「おい急げ! どっちも治療室へ運べ!」
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