上 下
58 / 1,085
第三章 闘技大会 後編

第四十九話 ルインvsボルド

しおりを挟む
「お前がルインだな。父から話は聞いている」
「……誰? お父さんて?」
「いや、こっちの話だ。兄上より先にやれるとは幸運だ」

 よくわからないが俺の事を知っているらしい。
 ナタの構えも素人じゃないな。それなりにやらないとやられるか。

 ただこの大会、俺にはかなり有利なんだよね。
 こんな風に。

 ボルド

 死流七支バルドスとメディルの子
 大ナタを使うが機敏な動きを取る
 兄思いで直情的


 おっと、師匠の同格の子供か。
 これは少々気合が入るな。
 とりあえずは動きを見つついくか。

「試合開始です」

 合図とともにボルドはナタを振り回す。
 近接とはいえかなり距離がとれるナタの使い方としては上々。

 疲れるよな、それ。右足のつま先で地面をトントンしながらその様子を見る。

「どうした、来ないのか? ならこちらから行くぞ!」

 本来は受け身だから来ないと自分で行くしかないんだよね。重いから。
 バックステップで回避しつつ徐々に左に回っていく。
 確かに機敏な動きだな。蹴りだけでは厳しいか。

 ぐっと踏み込むと間合いに入る。

「そのまま間合いに入るとは!」

 大ナタが俺を振りかざして当たったようにみえたが
次の瞬間倒れてるのはボルドだった。
 ボルドの顔前に苦無をあてがう。

 種明かしをすると、シールドとガントレットの間に右手を入れたまま突っ込んだ。 
 相手側にはシールドの下の仕込みカットラスは見えない。
 盾でナタをふせぎつつその振り下ろした威力を
そのままカットラスに伝えて振りぬいた。

 かなりのダメージだろうが、相手もセミユニークの鎧を着ている。
 こんなものだろう。

「勝者ルイン選手です! またしても攻撃が見えませんでしたー! 
今回のダークホースになりそうです!」

 歓声が大きくあがる。

 三回戦目でもうメドレスを使用する事になったのは驚きだ。
 ここまでは蹴り一本で戦い抜きたかったんだが
明日からの本選は考えないとな。

 休憩室に戻るとファナがいた。

「お疲れ様ルイン。相手強かったの?」
「あぁ、師匠の知り合いの子供だったみたいだ。
まだ俺の相手じゃなかったが相当修練は積んでいたな」
「そっか。そんな人も出てるのね。私も気を付けないと」
「あぁ、十分気を付けてな」
「本来近接戦闘向きじゃないからね。
千本の使い方も直接だし……まぁいいけど」

「確かに投げナイフが使えないってのもな。
まぁ個人でのポイントは俺とメルザで稼ぐから気にしなくていいぞ」
「えぇ、行ってくるわね」

 そう言うとファナは三試合目に向かっていった。 
 少し水を飲んでから向かおうとしたがファナは負けてしまったようだ。
 相手はベルディアという選手。師匠の知り合いの子供か? 

 ファナは怪我こそしていなかったが、場外に落とされたようだ。
 一瞬でファナを場外に落とすとはかなりの使い手だな。





 その頃勝利したベルディアは誰かと話をしていた。

「姉上、申し訳ありません!」
「仕方ないっしょ、あの男相当やるよ」
「しかしあまりにも不甲斐なく……」
「そもそもあんな形状の武器、見たことないっしょ」
「ええ、なんでしょう、あの武器は」
「知らないっしょ。でもあいつとあたるときは楽しめそう」
「姉上のツインテールが少し乱れております。直させてください!」
「別にいいっしょ。もう帰るだけだし」
「いえ! 美しい姉上はいつでも整っていないと!」
「……はぁ、あんたは真面目すぎるっしょ」

 にしてもあのルインとかいう奴、あたしより素早いっしょ。
 どうするかね。戦い方はまだ雑っぽいところがあるけどありゃ相当やるっしょ。
 今夜中に作戦練るか。

「楽しみだわ、あいつとやるの」

 そう言ってベルディアと弟のボルドは宿に戻っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最後の黄昏

松竹梅
ファンタジー
伝説人間vs新人間の9本勝負! 1章だけ公開中。2章、3章は作成中

導きの暗黒魔導師

根上真気
ファンタジー
【地道に3サイト計70000PV達成!】ブラック企業勤めに疲れ果て退職し、起業したはいいものの失敗。公園で一人絶望する主人公、須夜埼行路(スヤザキユキミチ)。そんな彼の前に謎の女が現れ「承諾」を求める。うっかりその言葉を口走った須夜崎は、突如謎の光に包まれ異世界に転移されてしまう。そして異世界で暗黒魔導師となった須夜埼行路。一体なぜ異世界に飛ばされたのか?元の世界には戻れるのか?暗黒魔導師とは?勇者とは?魔王とは?さらに世界を取り巻く底知れぬ陰謀......果たして彼を待つ運命や如何に!?壮大な異世界ファンタジーが今ここに幕を開ける! 本作品は、別世界を舞台にした、魔法や勇者や魔物が出てくる、長編異世界ファンタジーです。 是非とも、気長にお付き合いくだされば幸いです。 そして、読んでくださった方が少しでも楽しんでいただけたなら、作者として幸甚の極みです。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

エデンワールド〜退屈を紛らわせるために戦っていたら、勝手に英雄視されていた件〜

ラリックマ
ファンタジー
「簡単なあらすじ」 死んだら本当に死ぬ仮想世界で戦闘狂の主人公がもてはやされる話です。 「ちゃんとしたあらすじ」 西暦2022年。科学力の進歩により、人々は新たなるステージである仮想現実の世界に身を移していた。食事も必要ない。怪我や病気にもかからない。めんどくさいことは全てAIがやってくれる。 そんな楽園のような世界に生きる人々は、いつしか働くことを放棄し、怠け者ばかりになってしまっていた。 本作の主人公である三木彼方は、そんな仮想世界に嫌気がさしていた。AIが管理してくれる世界で、ただ何もせず娯楽のみに興じる人類はなぜ生きているのだろうと、自らの生きる意味を考えるようになる。 退屈な世界、何か生きがいは見つからないものかと考えていたそんなある日のこと。楽園であったはずの仮想世界は、始めて感情と自我を手に入れたAIによって支配されてしまう。 まるでゲームのような世界に形を変えられ、クリアしなくては元に戻さないとまで言われた人類は、恐怖し、絶望した。 しかし彼方だけは違った。崩れる退屈に高揚感を抱き、AIに世界を壊してくれたことを感謝をすると、彼は自らの退屈を紛らわせるため攻略を開始する。 ーーー 評価や感想をもらえると大変嬉しいです!

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

処理中です...