上 下
27 / 1,085
第一部 主と紡ぐ道 第一章 出会い編

間話 修行前 ~ルイン編~

しおりを挟む
 俺は師匠に呼ばれ快鉄屋に来た。

「来たか小僧。俺が選んで渡した剣の調子はどうだ?」
「まだ少し重く感じます。あのシミターよりは動かす時に違和感もありますね」
「スクラマサクスって武器は元来、深いダメージを与えるものだ。
ひと先ずはあれくらい振り回せるようになれ。今より力は格段に増す」

シーザーは目の前にあるグラスをグイっと飲み、話を続ける。

「一つ聞きたいんだが、小僧はなぜ剣を使っている? なぜ剣闘士になった?」
「成り行き……でしょうか。たまたま剣が手に入り、たまたま剣闘士のカードを手に入れて。
他の武器に触れる機会がありませんでした」
「偶然か。だがそいつはある意味都合がいい。
迷う暇がねぇからな。ただ様々な武器に触れて
自分にあった得物を見つける事も大事だ」

 そういうと師匠はフンっと鼻を鳴らす。

「それぞれの得物について小僧によく話してから稽古をつけてやる。
まずは一通り全ての武器を使わせる。
自分に合う武器を見つけるだけでなく、その武器の特徴を掴め!」
「はい、わかりました!」

 確かに俺は武器なんて握ったことは無かった。
 成り行きでそうしないといけない事はあった。憧れもある。
 変えようと思えば変えられたはずだ。

「まず剣についてだ。剣と言っても様々な種類があるのは知っているか?」
「少しだけなら。短い剣でショートソード。俺の使っていたシミター。かなり曲がった曲刀に、突く目的の剣…でしょうか」

 前世でのイメージだと日本刀や包丁のイメージが強いな。
 他はフェンシングだな。小説やゲームでは頻繁に出てくるが、実際に目にした事がある物は
そう多くない。

「ほう、少しは知ってるじゃねえか。剣は基本的に長さや形状
それから使用目的により名称が変わる。例えばだ。
小僧、こいつを持ってみろ!」

 そう言って師匠は俺に大きい剣を投げて渡す。
 俺は慌ててキャッチする。
 その剣はばかでかく、持ってるのがやっとだ。

「くっ……はっはっは! 重いだろう。そいつはツヴァイハンダー。
両手で扱う剣だ。しかも普通のツヴァイハンダーの倍の重量はある。約十三kgってとこだな。
小僧にはまず合わねえが、そういった武器も使ってもらう」

 ツヴァイハンダーを構えようとするが、両手でも構えを継続していられない。キツイ。

「次はこいつを持って構えてみろ。さっきのよりは段違いで軽い」

 今度は少し長めだがツヴァイハンダーよりははるかに小型の剣だ。
 これなら両手で持っても違和感はない。片手だとギリギリだな。

「どっちが使いやすいと思う?今 の感覚だけでいい」
「後者です。前者では構える事もできない」
「なら聞くが、前者の武器を持って扱える相手が現れたときに、その武器で倒せるか?」
「! それは……難しいかもしれません」
「なぜそう思った」
「距離です。あの大型武器を振り回せるなら近づくのも難しい」
「正解だ。真正面から敵と対峙し、それを持って楽に動けるなら相当やばい相手だ。一撃でも貰えばアウトだな。ただ持ってわかる通りそいつは重い。無駄な体力を消耗しないよう基本は受けで来る奴が多い。
突っ込んで来るのは雑魚と侮っているか、急ぎで終わらせたい理由がある。それ以外は待ちだな。当然幻術も使ってくる事を想定しておきな。待ち武器と幻術は相性がいい」
「そこまでは考えもしてませんでした」

 遠くにも攻撃でき、近くでは圧倒的な間合いか……厄介だな。
 確かに現世でも銃剣なんてものがあったな。
 銃剣……銃剣か。

「師匠、剣から直接遠距離に攻撃出来るのって」

 赤い斬撃を飛ばした事を思い出す。

「小僧が見せた片鱗、あれはかなりいい攻撃手段になる。
俺でも躱せねぇ。赤い斬撃……あぁ、なんていう名前だ、あれ」

 俺の必殺技みたいなものなのか……?
 赤い斬撃…少し赤紫色だったと思う。そうだな。

「オペラモーヴです」
「ほう、なかなかいい名前じゃねえか。名前がねぇといちいち説明し辛ぇからな。 
あのオペラモーヴ、いつでも出せそうか?」
「わかりません。あの時が初めてで。一度撃っただけであんな状態になるんじゃ
実践では使えませんよ」
「今はそうだろう、そのために特訓するんじゃねえか。
いいか、剣ってのは集団戦、個人戦どちらにおいても強えぇって武器じゃねえ。
リーチなら槍が、奇襲なら弓が、集団なら斧が強えぇ。
剣のいい所は持ち運び易さ、扱い易さ、振り回し易さだ」

 そう言って師匠は剣を振り回す仕草をとる。

「楽に振り回せるまで、全ての武器を触ってみな。対峙したら相手の得物をまず確認しろ」
「はい!」
「それじゃ剣以外の得物の説明だ。大まかな分類で教えられる範囲のみ
だが、ナックル、槍、斧、棍やハンマー、杖、鎌、弓、暗器
この辺りだな。この中で極まると怖いのはどれだと思う?

 ……俺は試案する。怖いか。どれも怖く感じるが強いて挙げるなら……「暗器でしょうか?」
「暗器もそうだが後は弓だ。極められるととことん怖ぇ。
なにせどっから攻撃してくるかわからねぇからな。
ただしどちらも火力は低い。気をつけなきゃいけねぇのは毒だ。どっちもな」

 師匠は何かを思い出し、フルフルと首を横に振っている。
 何かトラウマでもあるんだろうか? 
 師匠の言う通り、遠距離から毒攻撃されたらひとたまりもないな。
 対策は必須だろう。

「その顔はわかったって面だな。それじゃ次に槍だ。
槍こそ万能で戦闘の極み。 剣じゃ懐にも入らせてもらえねぇ。
しかも槍は薙ぎ払い、刺しにも使える。掲げて居場所を示したり投げてくる奴もいる。
中距離取り続けられれば詰みだな」
「ということは槍を極めたら剣では敵わないと?」
「そうじゃねぇ、槍にも弱点はある。 懐近くまで入られると
機能しねぇ。当然だが出来る槍使いは懐に潜り込まれた時用に
武器を隠し持っている。だが実力者同士の戦いならそんな武器を
出させる暇はないがな」

 師匠は一本の長槍を俺の前で構える。
「どうだ、小僧のスクラマサクスで懐に入れる気はするか?」

 イメージするが、師匠から感じる威圧感で全く飛び込める気がしない。

「槍使いの基本は威圧。近づかせないっていう細かい動きが大事なのさ」

 師匠は槍を立てかけると、元の位置に戻る。

「斧は飛ばす。俺が使っているからな。嫌でも覚えるだろ。
次は棍棒やハンマー。
ハンマーを使うケースはあまりないが、打撃武器の神髄は衝撃だ。
斧でも近い攻撃を取れる。どちらも外傷狙いではなく内側の臓器
や骨を破壊して行動不能にする。侮っていい武器じゃねえ」

 前世で包丁以外の殺傷力のある身近なものの代表例だしな……。

「どうかしたか? ……まぁいい、次はナックルなど、主に格闘に使われる
全般の武器についてだ。俺はこいつが一番苦手だ。
とにかく動きが速えぇ。しかもガンガン前に来ようとする。
距離のあけた戦いには向かねぇが、幻術と格闘の組み合わせがやべぇ。
幻格闘を極めたら、大抵のやつは太刀打ちできねぇな。
フー・トウヤという幻格闘術士がこの道最強だ」

 聞いたことない名前だが、師匠が言うなら余程強いのだろう。

「それから杖と鎌だが、杖に関しちゃ俺は専門外みてぇなもんだ。
鎌は実際、使う奴には滅多にお目にかかれねぇな。適性者も
極わずかだが、扱いは槍に近い。槍と決定的に違うのが
剣などの攻撃を受けた時のいなし方だな。あれは難しい」

 鎌だと前世で見たのは草刈り用の鎌だな。あれで戦うのは想像できない。

「あとは習うより慣れろだ。さぁそろそろ特訓を始めるぞ!」
「はいっ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。 その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。 更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。 果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!? この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

処理中です...