異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

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第一部 主と紡ぐ道 第一章 出会い編

間話 修行前 ~ルイン編~

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 俺は師匠に呼ばれ快鉄屋に来た。

「来たか小僧。俺が選んで渡した剣の調子はどうだ?」
「まだ少し重く感じます。あのシミターよりは動かす時に違和感もありますね」
「スクラマサクスって武器は元来、深いダメージを与えるものだ。
ひと先ずはあれくらい振り回せるようになれ。今より力は格段に増す」

シーザーは目の前にあるグラスをグイっと飲み、話を続ける。

「一つ聞きたいんだが、小僧はなぜ剣を使っている? なぜ剣闘士になった?」
「成り行き……でしょうか。たまたま剣が手に入り、たまたま剣闘士のカードを手に入れて。
他の武器に触れる機会がありませんでした」
「偶然か。だがそいつはある意味都合がいい。
迷う暇がねぇからな。ただ様々な武器に触れて
自分にあった得物を見つける事も大事だ」

 そういうと師匠はフンっと鼻を鳴らす。

「それぞれの得物について小僧によく話してから稽古をつけてやる。
まずは一通り全ての武器を使わせる。
自分に合う武器を見つけるだけでなく、その武器の特徴を掴め!」
「はい、わかりました!」

 確かに俺は武器なんて握ったことは無かった。
 成り行きでそうしないといけない事はあった。憧れもある。
 変えようと思えば変えられたはずだ。

「まず剣についてだ。剣と言っても様々な種類があるのは知っているか?」
「少しだけなら。短い剣でショートソード。俺の使っていたシミター。かなり曲がった曲刀に、突く目的の剣…でしょうか」

 前世でのイメージだと日本刀や包丁のイメージが強いな。
 他はフェンシングだな。小説やゲームでは頻繁に出てくるが、実際に目にした事がある物は
そう多くない。

「ほう、少しは知ってるじゃねえか。剣は基本的に長さや形状
それから使用目的により名称が変わる。例えばだ。
小僧、こいつを持ってみろ!」

 そう言って師匠は俺に大きい剣を投げて渡す。
 俺は慌ててキャッチする。
 その剣はばかでかく、持ってるのがやっとだ。

「くっ……はっはっは! 重いだろう。そいつはツヴァイハンダー。
両手で扱う剣だ。しかも普通のツヴァイハンダーの倍の重量はある。約十三kgってとこだな。
小僧にはまず合わねえが、そういった武器も使ってもらう」

 ツヴァイハンダーを構えようとするが、両手でも構えを継続していられない。キツイ。

「次はこいつを持って構えてみろ。さっきのよりは段違いで軽い」

 今度は少し長めだがツヴァイハンダーよりははるかに小型の剣だ。
 これなら両手で持っても違和感はない。片手だとギリギリだな。

「どっちが使いやすいと思う?今 の感覚だけでいい」
「後者です。前者では構える事もできない」
「なら聞くが、前者の武器を持って扱える相手が現れたときに、その武器で倒せるか?」
「! それは……難しいかもしれません」
「なぜそう思った」
「距離です。あの大型武器を振り回せるなら近づくのも難しい」
「正解だ。真正面から敵と対峙し、それを持って楽に動けるなら相当やばい相手だ。一撃でも貰えばアウトだな。ただ持ってわかる通りそいつは重い。無駄な体力を消耗しないよう基本は受けで来る奴が多い。
突っ込んで来るのは雑魚と侮っているか、急ぎで終わらせたい理由がある。それ以外は待ちだな。当然幻術も使ってくる事を想定しておきな。待ち武器と幻術は相性がいい」
「そこまでは考えもしてませんでした」

 遠くにも攻撃でき、近くでは圧倒的な間合いか……厄介だな。
 確かに現世でも銃剣なんてものがあったな。
 銃剣……銃剣か。

「師匠、剣から直接遠距離に攻撃出来るのって」

 赤い斬撃を飛ばした事を思い出す。

「小僧が見せた片鱗、あれはかなりいい攻撃手段になる。
俺でも躱せねぇ。赤い斬撃……あぁ、なんていう名前だ、あれ」

 俺の必殺技みたいなものなのか……?
 赤い斬撃…少し赤紫色だったと思う。そうだな。

「オペラモーヴです」
「ほう、なかなかいい名前じゃねえか。名前がねぇといちいち説明し辛ぇからな。 
あのオペラモーヴ、いつでも出せそうか?」
「わかりません。あの時が初めてで。一度撃っただけであんな状態になるんじゃ
実践では使えませんよ」
「今はそうだろう、そのために特訓するんじゃねえか。
いいか、剣ってのは集団戦、個人戦どちらにおいても強えぇって武器じゃねえ。
リーチなら槍が、奇襲なら弓が、集団なら斧が強えぇ。
剣のいい所は持ち運び易さ、扱い易さ、振り回し易さだ」

 そう言って師匠は剣を振り回す仕草をとる。

「楽に振り回せるまで、全ての武器を触ってみな。対峙したら相手の得物をまず確認しろ」
「はい!」
「それじゃ剣以外の得物の説明だ。大まかな分類で教えられる範囲のみ
だが、ナックル、槍、斧、棍やハンマー、杖、鎌、弓、暗器
この辺りだな。この中で極まると怖いのはどれだと思う?

 ……俺は試案する。怖いか。どれも怖く感じるが強いて挙げるなら……「暗器でしょうか?」
「暗器もそうだが後は弓だ。極められるととことん怖ぇ。
なにせどっから攻撃してくるかわからねぇからな。
ただしどちらも火力は低い。気をつけなきゃいけねぇのは毒だ。どっちもな」

 師匠は何かを思い出し、フルフルと首を横に振っている。
 何かトラウマでもあるんだろうか? 
 師匠の言う通り、遠距離から毒攻撃されたらひとたまりもないな。
 対策は必須だろう。

「その顔はわかったって面だな。それじゃ次に槍だ。
槍こそ万能で戦闘の極み。 剣じゃ懐にも入らせてもらえねぇ。
しかも槍は薙ぎ払い、刺しにも使える。掲げて居場所を示したり投げてくる奴もいる。
中距離取り続けられれば詰みだな」
「ということは槍を極めたら剣では敵わないと?」
「そうじゃねぇ、槍にも弱点はある。 懐近くまで入られると
機能しねぇ。当然だが出来る槍使いは懐に潜り込まれた時用に
武器を隠し持っている。だが実力者同士の戦いならそんな武器を
出させる暇はないがな」

 師匠は一本の長槍を俺の前で構える。
「どうだ、小僧のスクラマサクスで懐に入れる気はするか?」

 イメージするが、師匠から感じる威圧感で全く飛び込める気がしない。

「槍使いの基本は威圧。近づかせないっていう細かい動きが大事なのさ」

 師匠は槍を立てかけると、元の位置に戻る。

「斧は飛ばす。俺が使っているからな。嫌でも覚えるだろ。
次は棍棒やハンマー。
ハンマーを使うケースはあまりないが、打撃武器の神髄は衝撃だ。
斧でも近い攻撃を取れる。どちらも外傷狙いではなく内側の臓器
や骨を破壊して行動不能にする。侮っていい武器じゃねえ」

 前世で包丁以外の殺傷力のある身近なものの代表例だしな……。

「どうかしたか? ……まぁいい、次はナックルなど、主に格闘に使われる
全般の武器についてだ。俺はこいつが一番苦手だ。
とにかく動きが速えぇ。しかもガンガン前に来ようとする。
距離のあけた戦いには向かねぇが、幻術と格闘の組み合わせがやべぇ。
幻格闘を極めたら、大抵のやつは太刀打ちできねぇな。
フー・トウヤという幻格闘術士がこの道最強だ」

 聞いたことない名前だが、師匠が言うなら余程強いのだろう。

「それから杖と鎌だが、杖に関しちゃ俺は専門外みてぇなもんだ。
鎌は実際、使う奴には滅多にお目にかかれねぇな。適性者も
極わずかだが、扱いは槍に近い。槍と決定的に違うのが
剣などの攻撃を受けた時のいなし方だな。あれは難しい」

 鎌だと前世で見たのは草刈り用の鎌だな。あれで戦うのは想像できない。

「あとは習うより慣れろだ。さぁそろそろ特訓を始めるぞ!」
「はいっ!」
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