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第一部 主と紡ぐ道 第一章 出会い編

第六話 ガラポン洞窟探索

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 前回湖に飛び込んだ時は、メルザに手を引っ張ってもらって泳いだのを
思い出し、俺は足をバタバタさせて湖の中を泳ぐ。
 
 泳ぎ方が正しいのかさっぱりわからないが、とにかく必死に泳いだ。
 持っていた実はいつの間にか湖の水に溶けて無くなっていた。

 そろそろ息も限界になり俺は水面に浮上した。さっきとは違う場所だ。
 あの化け物も見当たらないし逃げられたのだろう。

 ここはきっとあの実に記されていたガラポン蛇の入れ替え洞窟に違いない。
 湖から出ると、俺はメルザを横にする。幸いなことに呼吸はあるが意識が戻っていない。
 
 擦り傷は幾つかあるが出血自体は大した事ないようだ。
 せめて水を……と思いメルザがやっていたように燃斗と氷斗で水を出せないか試してみたが、どちらも出来なかった。

 燃斗は出来たはずなのだが、今は出来そうにない。

「メルザ……メルザ!」

 ゆすって呼びかけてもメルザの反応はない。
 少しだけここで待っててくれ。 
 ここが願いを叶えた場所ならきっと薬になるような物もあるはずだ。

 俺はそう思い、濡れた上着を絞りメルザの服も見ないようにして脱がした。
 そしてきつく絞った俺の服をメルザにかける。

 メルザの着ていた服もきつく絞ってその上にかけた。
 これでもまだ寒いかもしれない……急がないと。


 俺は洞窟の奥へと赴く。
 
  ここは入口なのだろう。立札とその下に小さな木箱があった。
 立札にはこうかかれている。
 ここはガラポン洞窟。これより先は二人で進む道。一人で赴く事なかれ。

 そう書いてある。だが今はメルザが……そう思い木箱を開けると、すごく小さな
紫色の欠片のような玉が入っていた。

 俺は玉を手にとると、もしやと思いメルザのところに持っていき口にあてる。 
 いや違ったなメルザの右手に持たせて祈る。
 もし治るならメルザの悪い所をすべて治してくれと。

 紫色の玉がわずかに光り、メルザの手に吸い込まれていく。
 しかし左腕は治らなかった。

「うーん……スッパムぅ……」
「メルザ、しっかりしろ! メルザ!」

 俺は寝ぼけているメルザを揺すると眠たそうに眼を開けた。
 よかった! 無事みたいだ。

「あれぇ、ルイン。ここどこだぁ? ふわぁーおやすみ」
「おい、メルザ! 身体は大丈夫か? その服乾かさないと風邪引くぞ!」

 俺は再び寝ようとするメルザのほっぺをつねり足をくすぐったりした。
 思い切り蹴飛ばされたがメルザはがばりと起き上がる。

「何しやがるこらぁ! ……っくしゅっ。さみー……あれ?」

 メルザは上半身裸で起き上がった。俺は慌てて後ろを向く。

「な、なんで服脱げてるんだばかー! ……っくしゅっ。も、燃斗! 
……おいルイン! 燃やせるような物持ってこい!」

 火はついたが燃やせる物が無いのに気付く。動揺しているのがよくわかる。
 同じく動揺している俺。そういえば木箱と立札があったな。あれでいいか。

 立札を引き抜き木箱を手に取った。
 するとさっきは気が付かなかったが、ごく小さな紫色の玉がまだ残っていた。
 さらに箱のあった下には一枚の紙がある。どうやらここの地図
のようだがなんで木箱の下に置いてあるんだ? 

「おい、早く来てくれよ! 寒みーんだよ! あ、ばかこっちにくるな! 恥ずかしいだろ、そっから投げろ!」

 俺はやれやれとメルザの方に木箱と立札を投げた。
 両方燃やすかと思ったが、メルザは立札に服をかけて木箱に火をつけた。こういう所は賢いな。

 それからしばらくして洋服もかなり乾き、俺たちは改めてガラポン洞窟の奥へと向かう。先ほど手に入れた地図を見る。

 行き止まりっぽいのが三か所。 
 青いマークがうち二か所、黄色いマークが一か所。
 奥にでかい部屋があって赤丸三角と四角いマークが書かれていた。

 それほど複雑な造りではないのだろう。

「よくわからねーし片っ端から行ってみようぜ!」

 そういうとメルザは先を進もうとする。

「俺が前に行くからメルザは後方支援で火とか氷を出してくれ」
「ルインだって出来るだろ? 一緒にやったばっかじゃねーか」

 燃斗をぼっと出すメルザ。

「それがさっき試したんだが出なかったんだ。理由はわからない」

 そうなのかーと話していると、最初の行き止まり地につく。
 ここがさっきの青いマークのとこか。
 一見何もないように見える。

 俺とメルザは顔を見合わせて頷き地面を探る。
 ちょうど地図の印付近にそれは埋まっていた。

 入口にあった木箱の十倍程の立派な箱だ。
 メルザは笑いながら箱に勢いよく飛びついた。

「やったぜ! 宝箱だ! 初めての冒険で見つけたやつだぞ! 早く開けようぜ!」
「どうやって開けるんだ、これ」

 メルザと二人でいろいろ試してみるが、宝箱は開く気配がない。

「仕方ないからそれ担げ、ルイン」

 両手で抱えるサイズで少し重いが持てない事は無い。
 箱事持って帰るつもりか。さすがに湖で沈むだろ。

「んじゃそれ持って次のとこいくぞ! きっと鍵か何かあるはずだぜ!」

 そうか、確かに鍵みたいなものがあれば開くかもな。
 鍵穴みたいな場所は見当たらないけど。

 俺たちは次の青いマークの行き止まりを目指した。
 先ほどの部屋とは違い、へんてこな生物がそこにはいた。

 小さな生物だが手に葉っぱがついたつるのようなものを持ち
葉っぱからは雨が降り注いでいる。
 
 自分の体にその雨をかけてぴょんぴょん跳ねている。 
 カエルみたいだがカエルが二本足では立たないし、そもそも
でかすぎる上、服まで着ている。

「なんだ、あれ……」
「けろりんだな」
「知っているのか、メルザ!?」
「今名付けた!」
「……」

 通称【けろりん】はここに住み着いてる動物か何かだろうか? メルザは「あいつ喰えるのかな」とかなり物騒なことを言っている。

 その刹那、けろりんはこちらに気づきぴょんぴょん激しく跳ねて
手に持った葉っぱからこちらへ水の玉をぶっ放してきた! 

「土斗! こいついきなり攻撃してきやがった!」

 メルザがとっさに土斗で防ぐ。俺も宝箱を地面に置き、ケロリンと対峙する。
 これが俺達にとっての初陣だった。
 メルザは肉肉肉ー! と叫びながら燃斗を何発かけろりんに向けて放つ。
 ……がけろりんはぴょんぴょんと跳ねて避けている。

 俺も対象を目で追っているが、どうにも激しく動く物を見ていると気持ち悪くなる。
 今まで見えてなかったから当然かもな。
 昔は感覚だけで物を捉える事が多かった。

 見えてなかった分、そこに何かあるかもしれない……とか、だれかがいる
かもしれないといった感覚が鋭くなっていた。

 小さな音などで空間の広がりを感知できたりもした。
 俺は少し目を閉じて感覚をけろりんに集中させる。
 見ているととにかく気持ち悪い。

 すると脳裏に何か浮かび上がるものが出てきた。


 レインフロッグ【けろりん】 
雨の葉から水鉄砲を飛ばし攻撃してくる 
湿った洞窟や土地に生息して活動する
飛び跳ねて攻撃してくることもあるが格好の的
高い知力個体だと危険な魅了の歌などを使用する



 ……なんだこの情報は? 眼の奥が熱くなる。
 対象を調べる力か!? 眼が見えるとこんなことも出来るんだな。知らなかった。

「メルザ、あいつを怒らせて突撃させるんだ! もし突っ込んできたらチャンスみたいだぞ!」
「え? 突然何言ってんだ!? まぁいいや、そういうことなら……やーいやーい!」

 ぴょんぴょんと物まねをするかのようなメルザ。仕草がかなり可愛い。

 癪に障ったのかケロリンは水鉄砲を撃つがメルザにはあたらない。
 怒ったけろりんは、ぴょんぴょん跳ねながらメルザに近づいた。
 やはり頭のいい個体ではないようだ……というか動き遅っ! 

 俺は地面に置いた宝箱を持ち上げ、ケロリンに向けて軽く投げた。


 げきょ! っと鳴いてケロリンが宝箱の下敷きになる。

 メルザがけろりんをつんつんしているが反応は無いようだ。

 ケロリンが持っていた葉っぱの部分が薄い板の形になった。
 そういえば宝箱にこれと似た窪みがあったな。 
 もしかしたら、これをはめれば宝箱が開くのか……? 

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