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第一部 主と紡ぐ道 第一章 出会い編
第三話 幻術の力
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「んー? 見りゃわかるだろ、火起こしてるんだよ。これくらい知ってるだろ?」
「知らないよ! なんだそれ。どうやって火起こしてるんだ? 指とか焦げるだろ、それ」
「指が焦げる? なんでだ? 指先には触れてないだろ?」
そう言うとメルザは指を俺の方に向けてみせる。あっつ!
「これ本物の火だ……どうやって起こしてるんだ?」
「燃斗《モルド》だよ。知ってんだろ? 燃えるって意思が火を起こす。イメージが付くほど良く燃えるけど今はこんなもんだ」
全然知らないんだが、メルザは知ってて当然という感じだった。
親指から薬指まで順番に立てて異常現象を起こしていった。
「人差し指が氷斗《コルド》 真ん中のが風斗《フルド》薬指が土斗《ドルド》
俺様は一応ここまで出来るけどこれより強いのはまだ使えねぇんだ。適性があるからな」
前世では存在しない特別な力。
現世ではそんな未知の力があるらしい。思いの力でそんな事が起こるのか?
「しゃーねーから教えてやるよ!」と言い、近づいたメルザは俺の右手の親指を握る。
「いいか、目ぇ閉じろ。んでぼわーってなるイメージをぎゅーんとするんだ」
「ぼわーっとかぎゅーんてなんだ!? もう少しわかりやすく説明してくれ」
メルザは説明が苦手な感覚派のようで、俺に謎表現で説明する。
しょうがねーなと俺の親指とメルザの指が重なるようにした。
ちょっと恥ずかしいには恥ずかしいようだ。
「んじゃ俺様が今から燃斗使うからよ、お前もその火をイメージして頭の中で想像してみろ。お前ならきっと出来るはずだ」
そういうと再びメルザの指に火が灯る。俺はちょっと熱いんだが。
火をよく見て目を閉じる。
「イメージしたら唱えてみろ。燃斗! ってな」
俺はメルザの火を見てガスバーナーから出るボーーっという火のイメージを連想してみた。
指から細い炎が出ているのを見た時、前世ではっきりは見えない目で見たバーナーのイメージに近い気がしたからだ。
「燃斗!」
「うぉぉー--っあっちーぃ!」
目を開けてみるとメルザが飛び上がて指をふーふーしていた。そして俺の指先には……真っ青な火が勢いよく出ている。
俺は慌ててフーフーして火を消す。
意識ではそれで消えるイメージだったのか、火はすっと消えた。
「ばかやろー、あっちーじゃねーか! あんなとんでもない火出せるなら早く言えよ! しかしすげーなルイン。
あんな才能があったのか……お前全然役立たずなんかじゃねーしよ」
そういうとメルザは俺の肩をポンポンと叩く。
俺も嬉しくなり笑っていた。こんな風に笑ったのなんていつ以来なんだろう。
しばらくすると、何だか焦げ臭い匂いが漂ってきた。
「メルザ……なんか焦げてないか? あの鍋」
「やべぇ! 飯が! 氷斗ー!」
カチコチに氷で固められたコゲ鍋ができあがっていたのである。
「こりゃダメだ。喰えそうにねーや。仕方ない飯捕まえに行くぞ! ついて来いルイン! ジャンカの森で果物とモカゲ狩だ!」
知ってる単語が果物しかない。
食べ物が無いとわかった途端、俺もメルザもお腹がぎゅるぎゅる鳴りだした。
メルザの家? から初めて出る。
俺はずっと見えていなくて気付かなかったが、周りには幾つかの穴があり
家などは一つもなかった。
メルザはこの辺りでずっと一人で暮らしていたのだろうか?
時折強い風が吹き荒れ冷たく感じた。
道はあるようで俺はメルザの後ろをついていく。
メルザは小柄なので速度はゆっくりだ。
「近くに食べ物が取れる場所があるのか? 森なんて見当たらないが」
「あるぞ。といっても潜るんだけどな。あっちの湖」
湖を潜って森? どういう事だろう。
よくわからない事だらけだ。
この世界には俺の常識は通用しないらしい。
少し歩くと大きな池? 湖? があった。
「お前泳げるか? どっちみち迷うといけねーから俺が引っ張っていくけどよ」
「泳いだことは一度もない。そうしてもらえると助かる」
メルザは俺の手首のとこをわしっと掴み、俺たちは湖に飛び込んでいった。
メルザの足はとんでもない速さでバタバタしている。これが泳ぐ……か。初めて見た。
三十秒ほどするとメルザが俺の方を見て上を指す。もう着いたのか?
息はもうそんなに持たない。
水面から浮かび上がると、先ほどとは全く違う景色が広がっている。
後ろを振り返っても元の景色は見えない。
どうなっているんだろう?
「なんで湖に飛び込んで泳ぐと違う景色にでるんだ?」
「あそこは俺様の領域だからな。こっちとは領域が違うんだよ。
俺様が許可した奴しか入れねーんだ。ルインを拾った場所はもっと先だ」
だから家とか何もなかったのか。
領域というのはよくわからないが、自分専用の部屋みたいなものだろうか。
この世界はまだ知らない事に溢れている。改めてそう感じた。
「知らないよ! なんだそれ。どうやって火起こしてるんだ? 指とか焦げるだろ、それ」
「指が焦げる? なんでだ? 指先には触れてないだろ?」
そう言うとメルザは指を俺の方に向けてみせる。あっつ!
「これ本物の火だ……どうやって起こしてるんだ?」
「燃斗《モルド》だよ。知ってんだろ? 燃えるって意思が火を起こす。イメージが付くほど良く燃えるけど今はこんなもんだ」
全然知らないんだが、メルザは知ってて当然という感じだった。
親指から薬指まで順番に立てて異常現象を起こしていった。
「人差し指が氷斗《コルド》 真ん中のが風斗《フルド》薬指が土斗《ドルド》
俺様は一応ここまで出来るけどこれより強いのはまだ使えねぇんだ。適性があるからな」
前世では存在しない特別な力。
現世ではそんな未知の力があるらしい。思いの力でそんな事が起こるのか?
「しゃーねーから教えてやるよ!」と言い、近づいたメルザは俺の右手の親指を握る。
「いいか、目ぇ閉じろ。んでぼわーってなるイメージをぎゅーんとするんだ」
「ぼわーっとかぎゅーんてなんだ!? もう少しわかりやすく説明してくれ」
メルザは説明が苦手な感覚派のようで、俺に謎表現で説明する。
しょうがねーなと俺の親指とメルザの指が重なるようにした。
ちょっと恥ずかしいには恥ずかしいようだ。
「んじゃ俺様が今から燃斗使うからよ、お前もその火をイメージして頭の中で想像してみろ。お前ならきっと出来るはずだ」
そういうと再びメルザの指に火が灯る。俺はちょっと熱いんだが。
火をよく見て目を閉じる。
「イメージしたら唱えてみろ。燃斗! ってな」
俺はメルザの火を見てガスバーナーから出るボーーっという火のイメージを連想してみた。
指から細い炎が出ているのを見た時、前世ではっきりは見えない目で見たバーナーのイメージに近い気がしたからだ。
「燃斗!」
「うぉぉー--っあっちーぃ!」
目を開けてみるとメルザが飛び上がて指をふーふーしていた。そして俺の指先には……真っ青な火が勢いよく出ている。
俺は慌ててフーフーして火を消す。
意識ではそれで消えるイメージだったのか、火はすっと消えた。
「ばかやろー、あっちーじゃねーか! あんなとんでもない火出せるなら早く言えよ! しかしすげーなルイン。
あんな才能があったのか……お前全然役立たずなんかじゃねーしよ」
そういうとメルザは俺の肩をポンポンと叩く。
俺も嬉しくなり笑っていた。こんな風に笑ったのなんていつ以来なんだろう。
しばらくすると、何だか焦げ臭い匂いが漂ってきた。
「メルザ……なんか焦げてないか? あの鍋」
「やべぇ! 飯が! 氷斗ー!」
カチコチに氷で固められたコゲ鍋ができあがっていたのである。
「こりゃダメだ。喰えそうにねーや。仕方ない飯捕まえに行くぞ! ついて来いルイン! ジャンカの森で果物とモカゲ狩だ!」
知ってる単語が果物しかない。
食べ物が無いとわかった途端、俺もメルザもお腹がぎゅるぎゅる鳴りだした。
メルザの家? から初めて出る。
俺はずっと見えていなくて気付かなかったが、周りには幾つかの穴があり
家などは一つもなかった。
メルザはこの辺りでずっと一人で暮らしていたのだろうか?
時折強い風が吹き荒れ冷たく感じた。
道はあるようで俺はメルザの後ろをついていく。
メルザは小柄なので速度はゆっくりだ。
「近くに食べ物が取れる場所があるのか? 森なんて見当たらないが」
「あるぞ。といっても潜るんだけどな。あっちの湖」
湖を潜って森? どういう事だろう。
よくわからない事だらけだ。
この世界には俺の常識は通用しないらしい。
少し歩くと大きな池? 湖? があった。
「お前泳げるか? どっちみち迷うといけねーから俺が引っ張っていくけどよ」
「泳いだことは一度もない。そうしてもらえると助かる」
メルザは俺の手首のとこをわしっと掴み、俺たちは湖に飛び込んでいった。
メルザの足はとんでもない速さでバタバタしている。これが泳ぐ……か。初めて見た。
三十秒ほどするとメルザが俺の方を見て上を指す。もう着いたのか?
息はもうそんなに持たない。
水面から浮かび上がると、先ほどとは全く違う景色が広がっている。
後ろを振り返っても元の景色は見えない。
どうなっているんだろう?
「なんで湖に飛び込んで泳ぐと違う景色にでるんだ?」
「あそこは俺様の領域だからな。こっちとは領域が違うんだよ。
俺様が許可した奴しか入れねーんだ。ルインを拾った場所はもっと先だ」
だから家とか何もなかったのか。
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