44 / 57
アルベルト・バーンシュタインその6:管理されて嬉しいのはあれだけ
そういうわけで冒頭に戻る
しおりを挟む
俺は鉱山のくそかてえ岩壁にツルハシを叩きつけながら考えた。なんでこうなっていやがる。
“それはぁ、マスターがとちったからですよぉ”
「ちげえ。俺は何もとちってねえって言ってんだろ」
花に返事をしてはっとなる。今のはマジの幻聴だ。
魔導書は今、手元にはない。前に牢屋に叩き込まれたときは手元にはなくても近くにはあったから会話可能だったが、今はあいつらと喋れねえぐらい遠くにある。
魔導書と俺は魔力で繋がっているおかげで大まかな位置はわかるんだが、とても取りにいけるような距離じゃなかった。召喚できるやつらも4号以外は移動に難があるし。途中で誰かに見つかっても面倒。さらに俺から呼びかけることもできないからそもそも呼べない。
これは結構、マジで詰んでるぜ。
あ? なんで鉱山で鉱夫やってるかって?
言わなくてもわかるだろ。いちいち聞くんじゃねえ。
とにかく俺様最大級のピンチってやつだ。前にバルチャーって本物の殺し屋に追われたことがあったが、あのとき並みに窮地に陥っている。
何せこの俺が何一つとして手立てが思いつかねえ。この俺がだぞ、信じられるか?
もちろんここに放り込まれてただひたすらに仕事してたってわけじゃねえ。ちゃんと情報収集はしてある。
まずここは鉱山のくせに完全な盆地になっていやがる。俺たち奴隷の住居はその盆地の中。坂道が岩壁の外周をぐるぐると回るようにあって上に出られるようになってる。この地形が厄介で、上に出るまでに相当な距離を走らなきゃならねえし、逃げようとするのが上からは丸見えだ。
次に見張りの数。道中には必要ねえとみて上からこっちを見張ってやがる。人数は十数人。円形に均等に配置だ。
こっちが持ってる道具は採掘用のツルハシと運搬用の手押し車。あとは自分たちの拳ぐれえだ。逃げようとすれば360度から魔法を撃たれて晴れてあの世に転職だ。
鉱夫の数はそれなりにいるから登りきって接近戦ができればツルハシでも何とかならなくもねえだろう。だがとにかく地形が鬱陶しいにもほどがある。囮が用意できるほどには鉱夫の数が足りねえ。
一か八か、夜に抜け出して岩壁登るって手もなくはないんだが……まあ博打だな。
ツルハシで道作って脱出って手もある。爺になってもいいんならだが。
そういうわけで確実な手ってやつが見当たらない。超運が良くて坑道掘ってる間になんか洞窟とかにぶち当たってくれれば逃げ出せるが、そううまくはいかねえだろうな。うーん。
「だぁー、ちくしょう!」
むかついてツルハシを思いっきり振り下ろしたら反動でひっくり返って頭を打った。いてえ。
それもこれもあの領主のやつが娘を差し出そうとしたのが悪いんだ。礼儀正しくノックして部屋に入って礼儀正しく服を脱いで礼儀正しく服を脱がそうとしたら叫びやがって。
そしたら領主の野郎、自分から差し出した癖に「娘に何をする!」とか言い出しやがって。どうなってやがるんだ全く。
”領主は娘を差し出したわけじゃないと思うけど。”
今度は1号の幻聴が聞こえてきた。幻聴だから無視だ無視。
とにかく何とかしねえといけねえ。
そう考えていたときに外から爆音が聞こえて地響き。なんだ?
“それはぁ、マスターがとちったからですよぉ”
「ちげえ。俺は何もとちってねえって言ってんだろ」
花に返事をしてはっとなる。今のはマジの幻聴だ。
魔導書は今、手元にはない。前に牢屋に叩き込まれたときは手元にはなくても近くにはあったから会話可能だったが、今はあいつらと喋れねえぐらい遠くにある。
魔導書と俺は魔力で繋がっているおかげで大まかな位置はわかるんだが、とても取りにいけるような距離じゃなかった。召喚できるやつらも4号以外は移動に難があるし。途中で誰かに見つかっても面倒。さらに俺から呼びかけることもできないからそもそも呼べない。
これは結構、マジで詰んでるぜ。
あ? なんで鉱山で鉱夫やってるかって?
言わなくてもわかるだろ。いちいち聞くんじゃねえ。
とにかく俺様最大級のピンチってやつだ。前にバルチャーって本物の殺し屋に追われたことがあったが、あのとき並みに窮地に陥っている。
何せこの俺が何一つとして手立てが思いつかねえ。この俺がだぞ、信じられるか?
もちろんここに放り込まれてただひたすらに仕事してたってわけじゃねえ。ちゃんと情報収集はしてある。
まずここは鉱山のくせに完全な盆地になっていやがる。俺たち奴隷の住居はその盆地の中。坂道が岩壁の外周をぐるぐると回るようにあって上に出られるようになってる。この地形が厄介で、上に出るまでに相当な距離を走らなきゃならねえし、逃げようとするのが上からは丸見えだ。
次に見張りの数。道中には必要ねえとみて上からこっちを見張ってやがる。人数は十数人。円形に均等に配置だ。
こっちが持ってる道具は採掘用のツルハシと運搬用の手押し車。あとは自分たちの拳ぐれえだ。逃げようとすれば360度から魔法を撃たれて晴れてあの世に転職だ。
鉱夫の数はそれなりにいるから登りきって接近戦ができればツルハシでも何とかならなくもねえだろう。だがとにかく地形が鬱陶しいにもほどがある。囮が用意できるほどには鉱夫の数が足りねえ。
一か八か、夜に抜け出して岩壁登るって手もなくはないんだが……まあ博打だな。
ツルハシで道作って脱出って手もある。爺になってもいいんならだが。
そういうわけで確実な手ってやつが見当たらない。超運が良くて坑道掘ってる間になんか洞窟とかにぶち当たってくれれば逃げ出せるが、そううまくはいかねえだろうな。うーん。
「だぁー、ちくしょう!」
むかついてツルハシを思いっきり振り下ろしたら反動でひっくり返って頭を打った。いてえ。
それもこれもあの領主のやつが娘を差し出そうとしたのが悪いんだ。礼儀正しくノックして部屋に入って礼儀正しく服を脱いで礼儀正しく服を脱がそうとしたら叫びやがって。
そしたら領主の野郎、自分から差し出した癖に「娘に何をする!」とか言い出しやがって。どうなってやがるんだ全く。
”領主は娘を差し出したわけじゃないと思うけど。”
今度は1号の幻聴が聞こえてきた。幻聴だから無視だ無視。
とにかく何とかしねえといけねえ。
そう考えていたときに外から爆音が聞こえて地響き。なんだ?
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる