上 下
32 / 57
小話

アルベルトの休日その1

しおりを挟む
 よう、俺だ。アルベルトだ。
 ……待て、何も言うんじゃねえ。いいか、何もだ。
 俺はここ一、二週間の記憶がない。そういうことになってる。だから余計なことは言うんじゃねえ。
 何があったとか何を言われたとか俺は何も知らねえんだ。いいな!!
 ……さて。そういった話とは全く、一切、微塵も、これっぽっちも関係のない話になるんだが──

「……女は何か、しばらくいいな……」

 今の俺はそういう気分だった。



 アルベルトの休日その1



 ~午前中~

「……ぐう」

 アルベルト、昼間まで寝る。

 ~午後~

「……腹減ったな」

 アルベルト、昼過ぎになってようやく飯を食う。

 ~夕方~

「…………はぁ」

 アルベルト、街中の公園で溜息をつき1号に慰められる。

「マスター、この間漫画で読んだ失業したおじさんみたいね」
「うるせえ。誰が失業者だ」
「でもそっくりよ? 溜息つくところとか」
「ほっとけ」
「女を追っていないと覇気がなくなるわね、マスターは」
「俺にだってそういう気分のときぐらいある」
「落ち込んでるのかしら。しょうがないわね、撫でてあげるわ」

~夜~

「いい気分です」

 アルベルト、森に出向いて花を呼び出し水をやる。

「暗くてちょっとじめじめしてて、ここはいい場所ですねぇ」
「気に入ったか」
「はい。……あ、もうちょっと葉っぱに水かけてください……そうそう」
「注文の多い奴だな。どっちが主人か分からねえじゃねえか」
「それはそうと今日は大人しかったですね、マスター」
「俺にだってそういう気分のときぐらい」
「そんなに小さいって言われたのがショックだったんですかぁ?」
「ほっとけっ!!」
「まぁまぁ。マスターには私たちがいますよ、うふふ」

~夜(花に水をやった少し後)~

「うむ、美味いぞマスター」

 アルベルト、2号に森の獣の肉をやる。

「これも美味いしあれも美味いぞ」
「どれ食っても美味いって言ってるじゃねえか」
「うむ。マスターのくれたものは大体美味い」
「適当だな、おい」
「事実じゃからな。美味いものをくれるマスターは優秀じゃ。うりうり」
「すり寄ってくんじゃねえって!」

~夜中~

「わはは、楽しいぞマスター!」

 アルベルト、深夜の森で4号を好きなだけ光らせる。

「花や霧がいると光るな光るなとうるさいからなー」
「しょうがねえだろ。あいつらとお前は捕食関係にあるんだろ?」
「うむ。たまに腹が減って食べたくなるときがある」
「食うんじゃねえぞ、いなくなられると困る」
「なら良質な餌がほしいな。故郷のものが食べたい」
「高次元の食い物があるわけねえだろ!」

~夜中(4号を遊ばせた後)~

「これは美味い。こっちは不味い。あっちも不味い」

 アルベルト、森にあるものを霧に食べさせる。

「この森の評価は星二・一といったところだ」
「五つ星評価とかお前は食通か」
「何を言う。こちらの世界のものは何でも食えるのだから、俺様以上の食通はいまい」
「じゃあ今まで食った中で一番美味かったのは?」
「アルデバランにあった聖堂の椅子の脚だな。あれは最高だった」
「全っ然意味がわかんねえよ!!」

~早朝~

「ばびゅーん!」

 アルベルト、朝焼けの空を6号に乗って飛ぶ。

「あー、いい気分だぜ。他に誰もいねえってのはよ」
「マスターが楽しいならあたしも楽しいよー!」
「そうかいそうかい。あんま飛ばすなよ、落ちちまう」
「はーい。がおー!」
「火も吹くんじゃねえよ馬鹿!!」

 その日は大空に光の柱のような巨大な閃光が見えたとか何とか。

 おわり。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:880

究極のポーター 最弱の男は冒険に憧れる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:140

処理中です...