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アルベルト・バーンシュタインその4:アルベルトとオークとある女の話
素晴らしき哉、労働
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一日目。
「まずは畑仕事するブヒ」
「ぬぉおおおおおおおおおっ!!」
──二日目。
「農作物を収穫するブヒ」
「おぉおおおおおおおっ!」
──三日目。
「水を川から汲んでくるブヒ」
「ぬぉおおおおおおお……」
──四日目。
「獲物を捌くブヒ」
「ぬぉおおお……おおおお……」
──五日目。
「掃除するブヒ」
「おぉおお……」
──六日目。
「畑仕事するブヒ」
「…………おぉ……」
──七日目。
「今日も畑仕事するブヒ」
「………………」
…………こ、殺される。過労で死ぬ。
ここ一週間、俺はずっとこき使われていた。腕に脚、腹に背中。ありとあらゆる場所で筋肉痛が発生。全身が痛くてもう一歩も動けねえ。こんなに運動させられたのは軍に入りたてのとき以来だ。
外はすっかり暗くなっていて、寝床の手前で力尽きている。あとちょっと動けばいいところなんだが、そのちょっとが遥か遠くに感じられる。
「がんばれ、がんばれ」
寝そべる俺の前で小竜──6号が飛び回っている。うざがる気力も俺には残っていなかった。やべえ、意識が朦朧としてきた。目の前が暗くなってくる。
誰かが俺の脇を抱えて引きずる。おいおい、オークの野郎ども、まだ俺に働けっていうのか。しまいには焼き豚にして食っちまうぞ。
ずるずると足が引きずられる。違和感。オークなら俺の身体ぐらい余裕で持ち上げられるはずだ。こいつは何だ、1号にしちゃ細い。
何とか目を開いてその何者かを見る。そいつはオークどもに日夜、犯されている女だった。
俺は理解した。なるほど、オークには逆らえねえから手近な俺をぼこぼこにして鬱憤を晴らそうってわけだ。悪くねえ考えだ。
ここでちょっと女の状態を見ておこう。女はボロ切れのような服を着せられていたが、酷い扱いってわけじゃなかった。服がボロいのはオークどもの文化の問題で、あいつらにとっちゃ服は適当でいい。むしろボロ布だとしてもあいつら的にはマシなものを着せているつもりなんだろう。
毎日の食事だって優先的に栄養のあるものを女には与えていた。考えてみれば当然のことで、ガキを孕んでもらわなきゃならねえ母体に衰弱されては困るのはオークどもの方だ。
寝床だってまともなベッドだ。俺はなんかよく分からねえ藁が敷いてあるだけ。
総じて俺よりも遥かにまともな扱いを受けていた。つっても、毎日の仕事で完全にチャラだが。
何が言いたいかっていうと、ボロ雑巾みたいになってる俺よりも女の方がなんぼか元気だってことだ。俺をぼこぼこにする体力ぐらいはあるだろう。
「よいしょ、っと」
背中に柔らかな感触。そう言うとお前らは胸だと思うだろうが違う。……じゃあ何だ? 胸じゃねえなら俺にも分からねえ。
一瞬考えて、俺はそれがベッドの感触だと分かった。女は俺をベッドの上まで運んだらしい。意外と力持ちだ。
ベッドの上で殴りたいとは変わった奴だな。まぁ趣味は人それぞれだ、口出すもんじゃねえ。
いつ殴ってくるのかと俺は待っていたが、一向にその気配がなかった。その代わり、何やらがさごそと作業するような音が聞こえてきた。
「これならいいかな……」
どうやら道具プレイがお好みらしい。何でもいいからさっさとしてほしいぜ。
何で俺がこんなに無防備かっていうともう抵抗する気力もないからだ。腕さえ上げられない俺が一体、どうやって抵抗するっていうんだ。教えてくれ。
ベッドに寝かされたまま待っていると、口ん中に何かを突っ込まれる。何だかちょっと固くて甘い……って、林檎だこれ。
口を動かす気力ぐらいは残っていた、というよりも振り絞った俺は頑張ってそれを咀嚼する。疲れ切った身体にはこんなちょっとした食事さえ染み渡る。
ところで何で林檎が突っ込まれてんだ?
もう一度目を開けた俺は女と視線が合った。そいつは二個目の林檎の欠片を突っ込もうとしていた。
「あ……大丈夫ですか?」
女ははにかんでいた。何でかは知らねえ。
俺は混乱していた。こいつは何がしてえんだ。男の口に林檎を突っ込むことが苦痛を与えることだと思ってんだろうか。
ひでえ勘違いだな。直してやろう。
「……林檎……食わしても……苦しく、ねえ……ぞ……」
自分が思った以上に喉が動かなかった。まるで瀕死の重傷でも受けたのかって感じだが気分的には似たようなもんだ。
それはそれとして、女は「え?」と言って固まっていた。これじゃ俺が変なこと言ってるみてえじゃねえか。
その後、俺は辿々しい喋りで女の勘違いを解こうとした。ところがそいつが言うには、単に俺を助けようとしただけらしい。余計に分からなくなった。
さらに詳しい話を聞こうとしたが、猛烈な眠気が襲ってきて俺の意識は一気に落ちていった。おやすみー。
「まずは畑仕事するブヒ」
「ぬぉおおおおおおおおおっ!!」
──二日目。
「農作物を収穫するブヒ」
「おぉおおおおおおおっ!」
──三日目。
「水を川から汲んでくるブヒ」
「ぬぉおおおおおおお……」
──四日目。
「獲物を捌くブヒ」
「ぬぉおおお……おおおお……」
──五日目。
「掃除するブヒ」
「おぉおお……」
──六日目。
「畑仕事するブヒ」
「…………おぉ……」
──七日目。
「今日も畑仕事するブヒ」
「………………」
…………こ、殺される。過労で死ぬ。
ここ一週間、俺はずっとこき使われていた。腕に脚、腹に背中。ありとあらゆる場所で筋肉痛が発生。全身が痛くてもう一歩も動けねえ。こんなに運動させられたのは軍に入りたてのとき以来だ。
外はすっかり暗くなっていて、寝床の手前で力尽きている。あとちょっと動けばいいところなんだが、そのちょっとが遥か遠くに感じられる。
「がんばれ、がんばれ」
寝そべる俺の前で小竜──6号が飛び回っている。うざがる気力も俺には残っていなかった。やべえ、意識が朦朧としてきた。目の前が暗くなってくる。
誰かが俺の脇を抱えて引きずる。おいおい、オークの野郎ども、まだ俺に働けっていうのか。しまいには焼き豚にして食っちまうぞ。
ずるずると足が引きずられる。違和感。オークなら俺の身体ぐらい余裕で持ち上げられるはずだ。こいつは何だ、1号にしちゃ細い。
何とか目を開いてその何者かを見る。そいつはオークどもに日夜、犯されている女だった。
俺は理解した。なるほど、オークには逆らえねえから手近な俺をぼこぼこにして鬱憤を晴らそうってわけだ。悪くねえ考えだ。
ここでちょっと女の状態を見ておこう。女はボロ切れのような服を着せられていたが、酷い扱いってわけじゃなかった。服がボロいのはオークどもの文化の問題で、あいつらにとっちゃ服は適当でいい。むしろボロ布だとしてもあいつら的にはマシなものを着せているつもりなんだろう。
毎日の食事だって優先的に栄養のあるものを女には与えていた。考えてみれば当然のことで、ガキを孕んでもらわなきゃならねえ母体に衰弱されては困るのはオークどもの方だ。
寝床だってまともなベッドだ。俺はなんかよく分からねえ藁が敷いてあるだけ。
総じて俺よりも遥かにまともな扱いを受けていた。つっても、毎日の仕事で完全にチャラだが。
何が言いたいかっていうと、ボロ雑巾みたいになってる俺よりも女の方がなんぼか元気だってことだ。俺をぼこぼこにする体力ぐらいはあるだろう。
「よいしょ、っと」
背中に柔らかな感触。そう言うとお前らは胸だと思うだろうが違う。……じゃあ何だ? 胸じゃねえなら俺にも分からねえ。
一瞬考えて、俺はそれがベッドの感触だと分かった。女は俺をベッドの上まで運んだらしい。意外と力持ちだ。
ベッドの上で殴りたいとは変わった奴だな。まぁ趣味は人それぞれだ、口出すもんじゃねえ。
いつ殴ってくるのかと俺は待っていたが、一向にその気配がなかった。その代わり、何やらがさごそと作業するような音が聞こえてきた。
「これならいいかな……」
どうやら道具プレイがお好みらしい。何でもいいからさっさとしてほしいぜ。
何で俺がこんなに無防備かっていうともう抵抗する気力もないからだ。腕さえ上げられない俺が一体、どうやって抵抗するっていうんだ。教えてくれ。
ベッドに寝かされたまま待っていると、口ん中に何かを突っ込まれる。何だかちょっと固くて甘い……って、林檎だこれ。
口を動かす気力ぐらいは残っていた、というよりも振り絞った俺は頑張ってそれを咀嚼する。疲れ切った身体にはこんなちょっとした食事さえ染み渡る。
ところで何で林檎が突っ込まれてんだ?
もう一度目を開けた俺は女と視線が合った。そいつは二個目の林檎の欠片を突っ込もうとしていた。
「あ……大丈夫ですか?」
女ははにかんでいた。何でかは知らねえ。
俺は混乱していた。こいつは何がしてえんだ。男の口に林檎を突っ込むことが苦痛を与えることだと思ってんだろうか。
ひでえ勘違いだな。直してやろう。
「……林檎……食わしても……苦しく、ねえ……ぞ……」
自分が思った以上に喉が動かなかった。まるで瀕死の重傷でも受けたのかって感じだが気分的には似たようなもんだ。
それはそれとして、女は「え?」と言って固まっていた。これじゃ俺が変なこと言ってるみてえじゃねえか。
その後、俺は辿々しい喋りで女の勘違いを解こうとした。ところがそいつが言うには、単に俺を助けようとしただけらしい。余計に分からなくなった。
さらに詳しい話を聞こうとしたが、猛烈な眠気が襲ってきて俺の意識は一気に落ちていった。おやすみー。
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