純白のガンブレイダー 〜TSアルビノ美少女、産廃職でエンジョイプレイします〜

神無フム

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第二章

ダンボール少女

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 なんと今日の17時以降はメンテナンスが入り、プレイできない状況と化した。
 珍しく暇な時間ができてしまったので、ボクは制服姿のまま友人達と珍しく公園に来ていた。

 なんで公園に足を運んだのか、その理由は遊びたいからではなく。

「負けたあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 敗北した悔しさを龍華が天に向かって叫び。
 両足を全力スイングして、思いっきりブランコをこいでいる。

 近くにいる通行人は、今の叫びに何事かと一瞬だけチラ見した。
 彼らは全員甘酸っぱい青春を送る少女の姿を、心の底から羨むような顔をして去っていく。

 近くのベンチに腰かけているボクとユウは、一回転しそうな勢いの龍華に苦笑いした。

「いやー、ほんと僅差だったね」

「まさか吹っ飛んだ直後に〈ウィンド・ストーム〉を展開して僅かに衝撃を緩和させてたなんてね。これはミカゲさんが一枚上手だったわ」

 六限目のタッグバトルロワイヤル。
 龍華との一騎打ちに勝利したのはミカゲ先輩だった。
 優奈が今言った通り、彼女は大技の衝突で互いに吹っ飛んだ際に〈ウィンド・ストーム〉を後方に発動。

 風の嵐で勢いを軽減させることで、龍華よりもコンマ数秒エリア外に出るのを遅らせたらしい。
 その結果エリアのペナルティダメージを先に受けた龍華は、HPが先にゼロになって敗北した。

 あの一瞬でそんな判断ができるとは、流石のゲームセンスだよね。
 お祈りゲーではなく、確かな実力と経験で龍華を上回ったのだ。

 なお勝者であるミカゲ先輩の姿は、残念ながらここにはない。

 誘ったんだけど、まだ残念ながら絆ゲージが足りてないようで。
 彼女は頭を何度も下げながら、高速バック走行でどこかに消えてしまった。

 いつかここで一緒に、こうして青春的な1ページを過ごしたいな。
 そんな事をしみじみ思い、自販機で購入したお茶を口にしていると。

「……って、アレは何かしら」

「うん? んんんん……?」

 なにやら公園の入り口に、不審なでかいダンボール箱がいた。
 しかも手足が生えていて二つのぞき穴がある。

 何処からどう見ても不審者。
 110番まったなしの要素しかない。

 現に周囲の通行人達もビックリして、綺麗な二度見をしてその場から離れていく。
 先程まで公園にいた子供達も、なんだアレはと目を丸くしていた。
 そんな状況下で謎のダンボール人間は、ゆっくりボク達に近づいてくる。

「う、うわああああああああああ!?」

「オバケだああああああああああ!?」

 ゆっくり近づいてくる光景は中々にホラーだ。
 不気味なフォルムと動きに子供たちは恐怖し、慌てて公園から逃げてしまった。

 この場に残ったのはボク達だけ、でも他の人達と同じように逃げる選択はしかった。
 何故ならばダンボールの正面には『ミカゲ』とカタカナで書かれていたから。

「もしかして、ミカゲ先輩ですか?」

「……ど、どうもミカゲです」

「一体なんで、そんな奇怪な格好を」

「ミカゲは暗くて狭い所が落ち着くから、これなら緊張しないで皆と話せると思って……」

「なるほど?」

 涙めぐましい努力と言うべきか。
 その努力をもっと別ベクトルに活かせなかったのかと言うべきか。
 ダンボール先輩の姿に、龍華と優奈の二人は感心して色んな角度から眺めていた。

「まさかダンボールスタイルとは、このオレもちょっとビビったぜ……」

「この姿でここまで来る度胸の方が凄いと思うわ……」

「居心地は良いから問題ないよ、視界は良くないけど壁際を歩くからぶつかる心配はそんなにないし」

 うーん、気にするポイントが可笑しい。
 歩行者にぶつからない事も大事だけど、不審者認定で警察に通報されないかが心配だよ。

「……どうして、そんな無理をしてまで」

 答えはなんとなくわかっているけど、一応本人の口から聞きたいので尋ねてみた。
 彼女は恥かしそうにモジモジして見せる。そしていつもの歯切れの悪い声でこう言った。

「えっと……その、人生初のオフ会をしたくて……」

「……ああ、そういえば二人といるのが当たり前だから意識したことなかったけど、これって一応オフ会になるの……かな?」

「星空、こっち見て首を傾げんな」

「オフ会と言えば、普通はお店に集まってごはん食べたりすることを言うわよね」

「ひぃ……家族以外とごはん食べに行くとか、陰キャにはハードルが高すぎるぅ……」

 たしかにボクも委縮するタイプなので、ミカゲ先輩が言っていることは理解できる。
 でもせっかく勇気を振り絞って来てくれたのだ。
 このまま解散するのはしのびない。
 というわけで。

「すぐそこにコンビニがあるので、そこで軽くなにか食べるの買いませんか」

「良いね、それじゃ先輩には負けたオレがなにか好きなの奢るぜ」

「あんた、この前新作のVRヘッドセット買ってお金がないとか言ってなかった?」

 そういえばSNSで最新の機材を導入って投稿していたな。
 メモリーとか色々機能が強化されたバージョンで、フォルムがスタイリッシュな感じでカッコイイ奴。
 ブランド物で値段は確か10万くらいはしたはず。

「ははは、今月分のリアルマネー分は交換したから懐の心配はいらないぜ」

「え、それじゃ全員に奢ってくれるの?」

「星空は良いとして、なんでオレが優奈に奢らないといけないんだよ」

「だってほら、私達は全員今日のグループ分けで勝ったけど龍華は負けたじゃない」

「わかった、それならおまえにはバナナを買ってきてやるよ」

「はぁ、なんでよ」

「いや、握力おばけのゴリラだかぐあああああああああああああああ!?」

 自然に握手した優奈は、そのまま龍華の手を握り締める。
 その隣でダンボール姿のミカゲ先輩が、慌てふためく姿は実にシュールだった。

「まったく二人とも遊んでないでさっさと行くよ」

「ちょっ、待ってくれ星空!」

「置いて行かないで!」

 スクールバッグを手に歩き出すと、二人は慌ててバッグを手にボクを追いかけてくる。
 あと一人が来ないことに気付き、立ち止まって振り向く。
 躊躇している様子のミカゲ先輩にボクは自然と手を差し伸べた。

「ミカゲ先輩、一緒に行きますよ」

「あ、え……良いの……?」

「良いに決まってるじゃないですか。だってボク達はですよ」

「う、うん……!」

 ボクの手を握り、彼女は歩みを共にする。
 今はまだ被り物がなければ難しいのかも知れない。

 でもこうやって一つずつ積み重ねていけば、いつかはダンボールがなくても歩けるようになるはず。
 周囲の驚く視線を無視しながら、ボク達はコンビニに向かった。その道中の事。

「あ、塔からアップデート情報が来た」

 全員のスマートフォンに〈ディバイン・ワールド〉の最新情報が送られてくる。

 その内容とはチームの拠点となる──マイホームの追加だった。
 
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