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「紅丸ちゃん、今日もかわいいねー」
「ありがとうございます」
昼休み渡り廊下で上級生に話しかけられ適当に返す。
「えっちしよ」
「やです」
少し離れたところで他の上級生が、声をかけてきた男を呼ぶ。
「三上ー、しつけーとまたカラーコーンでなぐられっぞー」
「うるせーよ」
上級生たちは笑いながら離れてゆく。
「三上先輩しつこいっすね」
隣にいた璃央がふざけた口調で紅丸の尻を撫でた。
「璃央さんやめてください」
紅丸もくすくす笑いながら返事をした。
紅丸と璃央は同じ学校の同じクラスだ。
昨日はあの後、落ち合って事の次第を説明した。
璃央はにやにやしながら話を聞いた後、ケツ掘られなくてよかったな。とだけ返した。
紅丸は姿さえ女の子の格好をしているが処女だ。
「ほんとに。機嫌をそこねらんねーから。なあ、金田、音楽詳しいやつって誰?」
「しらねえ」
「ファルとか?」
「あー、詳しそう」
紅丸はかったるそうにファルに話しかける。ファルは紅丸に話しかけられたのがよっぽど嬉しかったのか、聞いてもいない音楽情報をたくさん教えてくれる。
話が長くなりそうで璃央は手を振った。
「俺、三笠ちゃんのとこ行ってくる」
三笠は保健室の先生だ。地味目の眼鏡女子。まだ若い。璃央はゴムを着けないでできる三笠と、ベッドのある保健室を気に入っている。
三笠は養護教諭という立場もあってか、自らアフターピルを用意して飲んでくれる。
三笠が璃央を性的に、もしくは恋愛感情でセックスしてるのか、決していい評判のない彼を恐れて体を開け放しているのか紅丸には分からなかった。
紅丸は童貞ではないがあんまりセックスが好きではない。体がまだ未熟なせいかあんまり興味がないし、めんどくさい方が先に立つ。
ファルに教わったアーティストを何組か熀雅に送った。
熀雅からはそのなかから紅丸の気に入った曲を教えて欲しいと返信がきた。
だりい。
クラスメイトにイヤホンを借り、机に突っ伏して音楽を聴いた。柔らかな春の日差しが紅丸の体に降り注ぐ。
紅丸はいつのまにか目を閉じた。
怖い夢を見た。
目を覚ますと五限は終わっていた。昔の夢だ。心臓がまだバクバクいってる。暖かい日差しと人の気配に安堵を覚えた。
紅丸の記憶に母はいない。ろくでもない父親とロー・シティの隅っこで暮らしてた。底を這うような、その日暮らしに父は手をあげることもしばしばあったし、食事もまともに与えられずガリガリに痩せていた。
その頃の夢だった気がする。
その父も四年前のある日、借金が膨らみいつの日か家に帰ってこなくなった。
紅丸は施設に保護されて裕福な老夫婦に引き取られた。
今の暮らしは至極快適で、決済リングには毎月お小遣いとしては多めな額が振り込まれ、老夫婦に引き取られてからは金に不自由したことがない。
学校も特に厳しい制限は受けず、転校してきた小学四年の時から一緒の璃央と同じ中学校を選ばせてくれ、存分に自由を与えられている。
老夫婦の夫のほうに種がなく二人の間に子供は出来なかった。今の技術なら優秀な子種も簡単に手に入るが二人はその選択をしなかったようだ。
養子は紅丸のほかに三人ほど成人になるまで育てており、老夫婦の血縁のパーティーなどでよく顔を合わす。
柔らかい日差しを見つめながら、ようやく落ち着いてきた胸をさすっているとスマホが鳴った。
熀雅からのメッセージでロー・シティのホテルに呼び出された。
「ありがとうございます」
昼休み渡り廊下で上級生に話しかけられ適当に返す。
「えっちしよ」
「やです」
少し離れたところで他の上級生が、声をかけてきた男を呼ぶ。
「三上ー、しつけーとまたカラーコーンでなぐられっぞー」
「うるせーよ」
上級生たちは笑いながら離れてゆく。
「三上先輩しつこいっすね」
隣にいた璃央がふざけた口調で紅丸の尻を撫でた。
「璃央さんやめてください」
紅丸もくすくす笑いながら返事をした。
紅丸と璃央は同じ学校の同じクラスだ。
昨日はあの後、落ち合って事の次第を説明した。
璃央はにやにやしながら話を聞いた後、ケツ掘られなくてよかったな。とだけ返した。
紅丸は姿さえ女の子の格好をしているが処女だ。
「ほんとに。機嫌をそこねらんねーから。なあ、金田、音楽詳しいやつって誰?」
「しらねえ」
「ファルとか?」
「あー、詳しそう」
紅丸はかったるそうにファルに話しかける。ファルは紅丸に話しかけられたのがよっぽど嬉しかったのか、聞いてもいない音楽情報をたくさん教えてくれる。
話が長くなりそうで璃央は手を振った。
「俺、三笠ちゃんのとこ行ってくる」
三笠は保健室の先生だ。地味目の眼鏡女子。まだ若い。璃央はゴムを着けないでできる三笠と、ベッドのある保健室を気に入っている。
三笠は養護教諭という立場もあってか、自らアフターピルを用意して飲んでくれる。
三笠が璃央を性的に、もしくは恋愛感情でセックスしてるのか、決していい評判のない彼を恐れて体を開け放しているのか紅丸には分からなかった。
紅丸は童貞ではないがあんまりセックスが好きではない。体がまだ未熟なせいかあんまり興味がないし、めんどくさい方が先に立つ。
ファルに教わったアーティストを何組か熀雅に送った。
熀雅からはそのなかから紅丸の気に入った曲を教えて欲しいと返信がきた。
だりい。
クラスメイトにイヤホンを借り、机に突っ伏して音楽を聴いた。柔らかな春の日差しが紅丸の体に降り注ぐ。
紅丸はいつのまにか目を閉じた。
怖い夢を見た。
目を覚ますと五限は終わっていた。昔の夢だ。心臓がまだバクバクいってる。暖かい日差しと人の気配に安堵を覚えた。
紅丸の記憶に母はいない。ろくでもない父親とロー・シティの隅っこで暮らしてた。底を這うような、その日暮らしに父は手をあげることもしばしばあったし、食事もまともに与えられずガリガリに痩せていた。
その頃の夢だった気がする。
その父も四年前のある日、借金が膨らみいつの日か家に帰ってこなくなった。
紅丸は施設に保護されて裕福な老夫婦に引き取られた。
今の暮らしは至極快適で、決済リングには毎月お小遣いとしては多めな額が振り込まれ、老夫婦に引き取られてからは金に不自由したことがない。
学校も特に厳しい制限は受けず、転校してきた小学四年の時から一緒の璃央と同じ中学校を選ばせてくれ、存分に自由を与えられている。
老夫婦の夫のほうに種がなく二人の間に子供は出来なかった。今の技術なら優秀な子種も簡単に手に入るが二人はその選択をしなかったようだ。
養子は紅丸のほかに三人ほど成人になるまで育てており、老夫婦の血縁のパーティーなどでよく顔を合わす。
柔らかい日差しを見つめながら、ようやく落ち着いてきた胸をさすっているとスマホが鳴った。
熀雅からのメッセージでロー・シティのホテルに呼び出された。
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