きっといつかのプレイリスト

ミネ

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 連れてこられたのは中国茶の店だ。小さな茶器がいくつも並び、店員が丁寧に時間をかけてお茶を淹れてくれる。

 熀雅は慣れた優雅な仕草でお茶を嗜む。
「ねえ、最近の若い子ってどんな音楽聴くの?」

「‥‥しらない‥です。音楽聴かないから」

 紅丸は警戒しながら話す。

「君、いくつ?」

「13‥」
 夏が来れば14になる。

「いや、息子が君と似たような歳なんだけどね。バンドをやっていて、なんか話題が欲しいんだよね」

 見ると左手には指輪が嵌められている。

 正面からまじまじと見ると熀雅はかなりの色男だ。眉と目が近く、鼻もスッと通り高い。西洋の血が感じられた。穏やかな風情に唇だけは薄く酷薄さがあった。髪はベリーショートで綺麗にセットされている。三十代後半に見えるが落ち着いた雰囲気はもう少し歳を重ねているような気がした。
 

「あのー、ほんと、その、すいませんでした。俺、音楽とかわかんないし、力になれそうにないし‥」
 紅丸はシールも陣地もどうでもよくて早くこの場から去りたかった。


「ロック外して」

 テーブルの上に置いたままだった紅丸のスマホを手に取り渡す。
 スマホのなかを探られるのは痛かったが仕方ない。言われた通りにロックを解き熀雅に渡すと熀雅はスマホをいじり自分と連絡の取れるアプリを入れた。

「学校の友達に詳しい子いるでしょ。おしえてくれない?」

「‥はい」

 ああ、このアプリなんだろ。スパイソフトとか入ってねえよな‥。紅丸は落ち込む。

「帰っていいよ。またね」

 それだけ言うと男は壁に嵌まっているコースターほどの丸いガラス状のものに左手の小指に嵌まるリングを当てた。
 決済リングでスマホと連動しておりこれ一つで支払いが済む。

 熀雅は静かに席を立ち去っていった。
 

 紅丸はとりあえず何事もなく話が終ったことに安堵し、また男と縁が切れなかった事にため息をついた。
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