外国人御曹司と結婚を前提にお付き合いすることになりました。が、

ミネ

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それからしばらくした後、セオドアは本国へ帰って行った。

最後までセオドアは変わらず瀧に強い物言いをして優しい態度を取ることはなかったが最初ほどの刺々しさも無くなり、三人はそれなりの関係性を築いていた。

それでもやはりセオドアの振る舞いや言葉に腹を立てる時や、瀧には分からない二人のだけで通じる会話に嫉妬もあったが、その時は以前相談に乗ってもらった智麻の言葉を思い出していた。

「いま自分と一緒にいる彼がいるのはそれまで出会った人や出来事のおかげでもあるわけだから」

今の寛容で優しいヒューがあるのは、もちろんヒューの性格によるものも大きいだろうが、きっとわがままでエゴイスティックなセオドアと付き合って来たせいも大いにあるだろう。

そう思うほうがつまらない怒りや嫉妬に囚われるよりもはるかに建設的だと瀧は考えた。






「瀧?どうしたの」

セオドアが帰った翌日、瀧はお腹をさすりながらなんだか少し苦しそうな顔をしている。

「んー、なんかちょっと痛い」

「お腹?」

「うん」

聞けばここ二、三日ちゃんとトイレに行ってないらしい。自分でも気付かぬうちに瀧はセオドアに対してストレスを感じていたらしい。

「俺ってそんなタイプじゃないと思ってたのに」

瀧は悔しさと痛みから苦い顔をする。
その横で何故かヒューは瀧に気付かれないくらいのあやしい小さな笑みを浮かべている。

ヒューは優しく瀧をソファに座らせると素早く医療品などが仕舞ってある棚に向かった。

「瀧、待ってね!いいものがあるから」

ヒューの態度は心配している様子なのだが、そこにどことなく嬉しそうな匂いを感じ取って瀧は首を傾げた。

棚の扉を開けて何かを探すヒューの背中がうきうきしている。

目的のものを見つけたヒューはすぐにこちらにやってきて「はい、瀧」と小さな箱を手渡す。





浣腸だ。




「瀧、自分で出来る?私がやってあげるからお尻出して」

ヒューはいそいそと瀧の履いているスエットに手を掛ける。

「い、いや、大丈夫!自分で出来る‥!ちょっ、ちょっとトイレに‥」

瀧は慌てて下げられかけたスエットを履き直し浣腸片手にトイレへ向かおうとする。

しかし、瀧より先にヒューが素早く立ち上がると両手を瀧の肩に手を置き、ぐっと力を入れて瀧を座るよう止めた。

「瀧、ここでして」

瀧は顔面をグシャッと潰し普段の美しい顔からは想像できない表情を見せた。

「なんで‥!」


「いつか、こういうチャンスがあると思って用意しておいてよかった‥!」


ヒューは初めて出会った瀧の盲腸で苦しむ顔が忘れられず、たまに思い出しては瀧に内緒で自分を慰める時があった。

どうにかもう一度あの顔を見れないかと考えた時にヒューは浣腸の購入を思いついた。

なかなか浣腸を薦めるというそんな日は訪れなかったのだが、今、ヒューは日の目を見ている。


ヒューは瀧の膝に顔を埋め頬擦りを繰り返す。

「お願い、お願い、お願い!瀧!!」

瀧はヒューの見たこともない懇願に少し引いた。

「ヒュ、ヒュー」

瀧が戸惑っている間にヒューは瀧を押し倒しうつ伏せの格好でソファに寝かしつけると、瀧の抵抗をものともせず、するするとスエットを脱がした。
手で握りしめて潰れた浣腸の箱を素早く瀧の手から奪い取るとパッケージを開け中身を取り出した。

再び腰に腕を回すとそのまま瀧を引き上げお尻を突き出すようなポーズを取らせる。
スエットを脱がし、露わになった尻の窄まりを拡げるとそこに浣腸を当てがい注入した。

「ひゅ、ヒュー‥」

目の前で組んだ腕に自らの顔を埋め頼りなげに出した瀧の声を楽しそうに聞きながら、ヒューは瀧をソファに座り直させる。


しばらくすると腹から焦燥感が湧き上がりじっとしていられなくなってきた瀧はソファの上で膝を抱えてそこに小さな頭を埋めた。

その苦痛で歪んだ顔をヒューは持ち上げるとまじまじと見つめる。

少し時間が経つと焦燥感はさらに強まり居ても立っても居られなくなってくる。

「ヒュー、トイレ行きたい」


腹から全てのものを出したい欲求に瀧は耐えながら切なそうにヒューを見据える。

ヒューは壁の時計をちらりと見ると「まだ、もう少し」と瀧の苦しむ表情を堪能し続けた。



ヒューが瀧に一目惚れしたのは、この苦痛に歪む表情がきっかけだったが、実際それを求められる瀧の心中は複雑だった。ヒューの変な趣味の悪さも今まで出会った誰かが要因だろうか。


そう思うと瀧は眉を一層強く寄せるほかなかった。


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