外国人御曹司と結婚を前提にお付き合いすることになりました。が、

ミネ

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◇◇◇



「瀧、これは蓋して蒸さないと中まで火が通らないよ」

「瀧、赤唐辛子は最初に油に入れて辛みを出すんだよ。‥‥代わりに後で七味唐辛子入れるの?うーん。今日はやめとこうか」


温かな日差しが窓から入る気分の良い日曜日。瀧とヒューはいつもより一時間多めに眠って、そのあと布団の中で戯れて、カフェラテとスイーツの軽い朝食を取った後、二人で駅ナカのスーパーに買い出しに出掛けた。


季節はあっという間に冬を迎え12月。街行く人々は温かなコートに身を包んで歩いている。

今日は自宅で手料理を作りながら少し早いクリスマスを二人っきりで祝う予定だ。

クリスマス当日はアメリカでヒューの家族と過ごす約束をしていて、ヒューはせっかくのクリスマスだからと外食に誘ってくれたが、瀧は家で過ごしたいと断った。

仕事をしているヒューだけにずっと料理を任しているのも気になっていたし、それを上手くできなくて拗ねていた自分を省みて、この二人だけで過ごすちょっと早めのクリスマスはいい機会だと素直にヒューに料理を教えてほしいと頼んだのだ。

もちろんヒューは二つ返事でOKしてくれた。



大きな通りを並んで歩く二人の間にもひゅっ、と北風が吹いて瀧の前髪を揺らした。

少し乱れた髪をかき上げた瀧の手には婚約の証の腕時計と薬指にはシンプルなリングが嵌まっている。その指輪はヒューの左手の薬指にも嵌っていて同じ輝きを放っていた。


ヒューが日本に帰ってきて仲直りした後、瀧はずっと結婚指輪は自分が贈ろうと考えていて、ついに先週デートと称してヒューを街に連れ出した。
目星をつけていた手の届きやすい価格と洗練されたデザインで人気のジュエリーショップにふらっと入ったふりをして、ヒューはどんなデザインが好きかなんて聞きながら、なんとか貯めた(一部静湖に借りた)バイト代で瀧はヒューにこの指輪をプレゼントをした。


ヒューは大喜びでその帰りにお祝いしようとワインショップに入り、指輪より高いワインになんの迷いもなく手を伸ばした。瀧の視線に気づいたヒューが掴んだワインを棚に戻し、他の手頃な銘柄を探し始めた様子が可笑しくて瀧は笑った。

結局、瀧が最初に手を取ったワインを飲みたいと言って話は付いた。

瀧も最近はヒューから贈られるプレゼントや連れて行って貰う外食を享受することを覚えた。
素直に受け取れば質の良いそれらは瀧の生活を豊かにしたし、ヒューと一緒に楽しめる事柄の幅も広がったからだ。


スーパーで買い出しをした後、二人でキッチンに立った。メニューは真鯛とアサリがたくさん入ったアクアパッツァ、ペペロンチーノ、牛肉の切り身が入ったマスタードのサラダ。

ヒューのサポートもあって美味しく作れた。アクアパッツァをひと口食べた瀧の顔には自然と笑みが溢れる。

ヒューは片手を上げ、二人は軽いハイタッチを交わした。それからふれるだけの柔らかなキス。


瀧とヒューは小さな幸せを感じながら毎日を過ごしていた。
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