外国人御曹司と結婚を前提にお付き合いすることになりました。が、

ミネ

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腕時計のことを聞かれる度に、御曹司の婚約者がいる発言を続けていると、そのうちに冗談だと思われていた仲間内で事実なんじゃないかと話題になり出したあたりで大学は夏休みに入った。

八月になるとヒューの夏休みに合わせて、彼の実家のアメリカへ出向き、家族に瀧を紹介する事となった。

ヒューの家はアメリカの高級住宅街にあり、地上三階、地下二階建てで、図書室、シアタールーム、フィットネスルームに、外にはキャンプが出来そうな庭にテニスコートとプールが付きまさに大邸宅といった趣きだった。

ヒューは事前に瀧のことを家族たちに話しており、もともと性的趣向を隠さず、家族皆に愛されて自由に振る舞っていた経緯もあって、好意的に瀧のことを歓迎してくれた。ヒューの祖母が日本人だったことで家族は皆日本語を理解しており話も弾んだ。


到着して二日目にホームパーティという名の、ヒューの親戚から友人までが集まった、絢爛豪華なイベントで瀧はセオドアを紹介された。

とても親しそうな様子でヒューに話しかけてきて、ヒューも彼を「テディ」と愛称で呼んだ。

セオドアはヒューと同い年の27歳。黒髪の渋い男で冷たそうな瞳は闇に緑を落としたグリーンアイズ。頬から顎に掛けて短く丁寧に刈り込まれた髭を生やしていて、ヒューよりも背丈は若干低いが長身で肩幅や胸板があり男らしい体型をしている。威圧的なオーラの持ち主で、紹介された瀧を上流階級ならではのナチュラルな上から目線で見てきた。

そして瀧の目の前で一言、
『もっといいのを連れてこいよ。ヒュー。お前と付き合った俺の名に恥じないような』と皮肉な笑みを浮かべた。

大して英語は得意ではないが、相手の意図するところは存分に伝わった。


瀧があからさまに不機嫌になると、セオドアは楽しそうにヒューの肩に肘を乗せ耳元で囁く。

『そろそろこっちに帰ってこいよ。お前がいないと寂しい』

ヒューはやれやれといった慣れた様子で肩に置かれた腕を掴み、緩やかに降ろした。

「気にしなくていいよ。テディの悪い冗談だから」

ヒューがこちらにやってきて、柔らかい口調で瀧の腰に手を回す。瀧がほっとした表情をヒューに向けると、セオドアはつまらなそうな顔で二人を見据えた。

『昔のオトコには冷たいね』


そして瀧に近づくとゆっくりとした発音でヒューには聞こえないくらいの声で囁いてくる。

『あいつのイイ場所とこ知ってる?後ろでよがる声、たまんないよな』

瀧は心臓をぎゅうっと握られる思いがした。セオドアは知っているのだ。瀧が踏み入れたことのない快感を、見たことのないヒューの姿を。

動揺し立ちすくむとヒューが怪訝そうに瀧を覗き込んだ。

「瀧?」

瀧は気持ちを悟られまいとヒューに微笑みかけた。

「なんでもない」


セオドアはそれ以上は瀧に話し掛けてこず、しばらくするとパーティーに来ていた共通の友人と話し始め去って行った。
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