外国人御曹司と結婚を前提にお付き合いすることになりました。が、

ミネ

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◇◇◇



それから何度かヒューに誘われて二人で出かけたが(五月には瀧は二十歳の誕生日を迎え、その日もヒューと過ごした)、相変わらずヒューのエスコートは瀧の心を揺さぶり、意識せざる得ない状況にあった。

そして、二人の逢瀬が繰り返された、ある夜の日、瀧はヒューに決定的な一言を告げられる。


「もし瀧が良ければ、このまま結婚を前提に私と一緒に暮らしてほしい」


「お、俺はそんなの、そんなつもりは‥」

無いとは何故か瀧は言い切れなかった。

個室のUの字になったソファで隣同士でくっつきながら食事をしていた時に告白され焦ってはいるのだが、しかし、そんな瀧はヒューとの距離感も何ら気にすることなく、居心地よく自分のパーソナルスペースに彼を入れている事に自分自身では気づいていなかった。

「私の本籍はアメリカにあるし、いつか父の事業で本国に戻る。その時に瀧も付いてきてほしいし、そして向こうで婚姻届を出したい」


あまりにも今の瀧に突きつけられる条件はきびしい。
考えてもいない選択肢だった。同性の男と結婚して日本を出るだなんて。

「わかってるつもりなんだ。だから私と一緒に暮らしてお互いを理解していきたい」

深く澄み切ったヒューのブルーアイズが瀧を見つめる。瀧は店だというのにヒューの瞳から目が離せず、二人は見つめあった。

「私のこと、悪くは思ってないと思うんだよ‥。そう思っててもいいよね‥?」

懇願が混じるような切ないヒューの言葉に瀧は胸が締め付けられた。

しかし決断の言葉はすぐには出てこない。

「俺‥。あんたん家、行ったことも無いし‥」

ヒューは優しくまるで恐ることなど何も無いというかのように、瀧の首筋を引き寄せるとその場で唇を寄せた。繊細な口付けに瀧も流されるまま受け入れる。

「この後私の家に来て欲しい。もし気に入らなければ新しく二人の家を探そう‥?」

ヒューの少し緊張しているような言葉と、気遣い、その想いを今まで何度もデートを重ねて理解している瀧は、結局ヒュー受け入れている自分に呆れつつも頷いた。

会うたびにヒューの魅力を感じてしまう自分を冷静に叱咤するが、しかしそんな自分の気持ちを自覚している瀧はヒューの言葉を拒否することができなかった。




港区の瀟洒な佇まいの低層マンションのワンフロアにヒューの住まいはあった。

広いリビングに主寝室に書斎、それにゲストルーム。

白い壁にはスタイリッシュな木目の家具、ツートーンのアイボリーのファブリックと落ち着いた雰囲気で全体が明るくセンス良くまとめられており、天井の高い室内にはところどころに背の高いグリーンが置かれている。


「すげー、家」

まるで雑誌の切り抜きのような部屋をキョロキョロと見渡す瀧に優しく微笑みながら腰掛けるようにソファを勧め、ヒューはキッチンに行くと緑茶を入れてくれた。

「祖母が大好きで向こうでもずっと緑茶だったんだ」

自分の家で飲むティーパックのお茶よりも香りが高い気がした。

隣に腰を降ろしたヒューの存在感に僅かに緊張する。
ヒューは右手をソファの肩に置き瀧の方を向いて距離を縮めて微笑む。

この雰囲気は何度も女の子と経験したことがある。つまりいいかんじだ。

「ねえ、瀧、したくない?」

ストレートに囁かれて瀧は焦った。確かに、ヒューと出会ってから女の子と遊ばなくなったのはある。なんだかヒューを裏切るような気がしてそんなチャンスがあっても乗り気にならなかったのだ。

溜まってはいる。いるが‥。

ヒューの艶っぽい瞳に見つめられると瀧も気持ちが昂ぶるのを感じた。

ゆっくりとヒューの顔が近づくと目の前でブルーアイズが閉じられ、長いまつ毛が頬に影を落とす。

ヒューのキスは巧みで、舌を絡めることに嫌悪どころか欲情を掻き立てられた。形の良い指が瀧の鎖骨に触れ、着ていたシャツを捲り上げる。

胸の突起を擦られると同時に理性が働いた。キスは性別を構わずにできてもここから先は違う。瀧に躊躇が生まれ身体が硬く強張った。


「そ、その、俺、男とすんの初めてだし、上手くできるかどうか‥」

「大丈夫、ゆっくりしていこう」

ヒューは静かに手を瀧から退けると立ち上がり、瀧をベッドに優しく連れていった。

主寝室のベッドはクイーンサイズで部屋の真ん中に鎮座して、この部屋は白とグレーが基調になり、ベッドのファブリックは落ち着いたカラシ色で整えられていた。

ベッドに乗り上げ、キスをしながらお互いの服を脱がせ合うと自然に興奮が高まり、薄暗い部屋で露わになったヒューの程よく筋肉のついた上半身を美しいと感じた。

「‥なんか、大丈夫かも」

「本当?うれしいな」

ヒューの声色も興奮の色を帯びていて、それがまた瀧の熱を掻き立てた。

互いに胸や性器に触れ、擦り合わせていると、ヒューはその唇を瀧の性器へと降ろしていった。

女の子とは同じようで違う、口や舌の大きさの差なのか、もっと安定感があって熱い口内。さらに同性ならではの快感のツボを押さえた舌技に瀧は思わず声を漏らした。

耐えられなくなって瀧は腰を引いてヒューの口淫を止めた。

「ヒュー、もう‥」

「いってもよかったのに」
ヒューは下げていた頭を上げ、瀧に微笑みかける。

「でも、‥俺、‥‥もう挿れたい」


僅かに変な空気が流れたと思った瀧は沈黙しているヒューの顔を覗く。

そこにはやや困った表情をしているヒューがいた。

続く沈黙。


「‥‥‥。えっ、俺、挿れられるほう‥?」

ヒューは戸惑う瀧に明るく微笑むと手を取り甲に口付けを落とす。

「初めてだし、まず受けてみてコツを覚えてみたら?」

「えっ、いやいや、‥えっ、えっ、ちょっと頭ついてかない。俺が挿れられる流れ?」

瀧の反応を見てヒューがクスクス笑い出した。

「かわいい、瀧」

ヒューが程よい厚みのある逞しい身体で瀧をベッドに押し倒す。

「ちょ、ちょっと、待って、ヒュー、ヒュー、心の準備が‥」


「大丈夫、今日はしないから」

ちゅっ、ちゅっとバードキスを繰り返しながら硬く反り返る互いの性器を擦り合わせていく。

「あ‥、ヒュー、つるつる」

ぬめる先端がヒューの陰部に触れると彼のそこは茂みが無く、綺麗に手入れがしてあった。

「日本はあまり脱毛しないよね」

「うん」

アメリカでは男女ともにアンダーヘアを処理するのが大半らしい。

「こっちはむけむけ」

瀧はヒューの勃ち上がるてっぺんを人差しでくるくると弄った。

「‥瀧だって剥けてるよ?」

色っぽい吐息をついてヒューは答える。

「人のさわんの、初めて」

瀧は手のひらで筋張ったヒューの性器を掴むとやんわりと上下に扱いた。

ヒューは満足そうな笑みを浮かべながら口づけを求める。舌を絡ませてると瀧が逃げた。

「ねえ、ヒュー‥。どんだけ大きくなるの?俺ぜったいこんなん入んないから」

瀧の言葉にヒューの下半身がさらにピクリと反応する。

「嫌?」
甘く切ない声でヒューは尋ねる。

「やだよ‥」

ヒューは優しく瀧を抱きしめると耳もとにキスを落とした。

「瀧が嫌がるならしないよ。こうしていよう?ここはきらい?」

今度はヒューが瀧の性器をゆっくりと扱く。

「‥好き」

「よかった」

互いに触り合い果てると二人は一緒にシャワーを浴びてその日はベッドで一緒に眠った。







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