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「ねーちゃん!どーゆーことだよ!」
お見合いから帰ってくるなり瀧はウィッグを外して静湖に投げつけた。
静湖は見事にキャッチすると憤る瀧よりも強気な口調で捲し立てた。
「格好よかったでしょー。ヒューさん。私も一度だけ挨拶させてもらったことあるけど、ほんと素敵。あれで、しかも、ロサニールカンパニーの御曹司!」
結局、姉の取引先の相手の上司を無下にもできず、お見合いの席で嬉しそうなヒューの話に相槌を打つ羽目になったのだが、自己紹介に瀧はさらに腰を抜かした。
ヒュー•アンドロシュは27歳で多国籍企業ロサニールカンパニーのCEOの次男だ。
ロサニールカンパニーはヒューの曾祖父であるニールと曾祖母のロサ二人で立ち上げた元はクッキーなどの焼き菓子を取り扱う地元の小さな菓子メーカーだったのだが、その息子のジョシュアが才覚を発揮し、今や数多の国で見かける食品メーカーへと変貌を遂げた。
ジョシュアは日本人の琶和子と結婚し、一人娘を儲けた。ジョシュアは優秀だったドイツ人のウルリヒと娘のメイヤを結婚させ、メイヤは長男のヴィム、長女のノーラ、そして次男のヒュー、それから三男のカミル、次女のピーアと五人の子供を産んだ。
兄のヴィムがゆくゆくは父の跡を継ぐため、ヒューも兄の片腕として経営に携わるつもりでMBAも取得したが、今は修行と称して大好きな祖母の母国の日本の大手飲料メーカーで働いている。
──と、言うのが瀧がヒューから聞いた話で、瀧も父、母、姉と四人家族で都内の大学に家から通っている。などと釣られて話した。
ヒューは終始にこにこと瀧の話を聞いていて、同じ場所にいること事態がとても嬉しい事なのだと黙っていても伝わった。
そんな彼に絆されたわけじゃないつもりだが、ついメッセージアプリの連絡先も交換してしまい、食事の後、家まで送るとタクシーで隣に座られて、ヒューの香水の混じる甘い香りになんだか緊張してしまったことは正直くやしかった。
「ふざけんなよ、ねーちゃん!俺、結婚を前提に付き合ってほしいって言われたんだぜ⁈」
「きゃわ~。ヒューさん本気なの~!瀧の女装効いた?!」
「いや、女装は趣味じゃないって」
「え?お見合いするっていうからてっきり女性らしい男が好きなのかと‥」
どうやら女装を施されたのは静湖の勘違いによるものらしい。
「それよりねーちゃん、ちゃんと断ってくれよな!」
「ばか言わないでよ、そんなんするわけないでしょー。相手を誰だと思ってんのよ。私のでっかい取引先の相手の上司よ?断ったらころすし、それにロサニールよ、ロサニール!瀧がヒューさんと結婚ともなれば、私も大企業の御曹司と親戚に!そっから縁があるかもでしょ⁈私も結婚できるかも。わー、おめでとー、瀧!応援するわー」
「大体、結婚ってなんなんだよ!男同士で‥」
瀧と静湖が、結婚、結婚と騒いでいるとリビングにいた父と母もどうしたことかと話に入ってきた。
「ねーちゃんを止めてよ!父さん!母さん!」
瀧は訴えたが話を聞いた父と母は笑ってのんびり構えている。
「ロサニールカンパニーとは玉の輿だな!瀧!」
よくやったと言わんばかりの父、和彦。
「わー、なんて素敵な人、ちょっと今度お家に連れてきて!あ!でも、なにお出ししたらいいのかしら?店屋物でもお口に合うのかしらね?ねえ、静湖?」
静湖のスマホでヒューの写真を見た母の茗子も興奮して、今からお招きの算段をし始めている。
「冗談だろ、父さんも母さんも俺の孫の顔見たくないの?!」
「まあ、それは寂しいけどな。まあ、お前にはお前の人生がある。今はほら、LEDだかなんだかあったろ、そういうのに社会も寛容になってきたからな!父さんは認めるよ」
父が言いたいのは多分LGBTだろう。
あと、目にやっぱり玉の輿と浮かんでいる気がする。
「孫の一人や二人しょうがないわよー。世の中何もかも手に入れられるわけじゃないからねー。こんなに美形の家族ができるなら母さんも許す!」
「俺だって美形だろ!」
「自分でいうなよ」
静湖がつっこむ。
「んー、ちょっと格が違うわよねえ、瀧はカットモデルとか読者モデルとかでいそうな感じだけど、ヒューさんはどっかの高級ブランドとかのモデルさんって感じだものねー」
母も被せてきた。瀬乃生家の権力者である女二人に瀧がタジタジになっているとポケットのスマホが震えた。
見ればヒューからで今日のお礼とまたすぐにでも会いたいとの情熱的なメッセージが送られてきた。
覗き見ていた静湖がさっと瀧のスマホを取り上げて勝手に「もちろんです!」との返信をスタンプと共に送る。
すぐに日取りを決める返事が来ると、そのまま静湖はメッセージを重ね、次のデートの約束を取り付けてしまった。
「ね、ねーちゃん‥」
がっくりと脱力する瀧。
こうして家族全員が応援の元、瀧のデートが決まったのであった。
お見合いから帰ってくるなり瀧はウィッグを外して静湖に投げつけた。
静湖は見事にキャッチすると憤る瀧よりも強気な口調で捲し立てた。
「格好よかったでしょー。ヒューさん。私も一度だけ挨拶させてもらったことあるけど、ほんと素敵。あれで、しかも、ロサニールカンパニーの御曹司!」
結局、姉の取引先の相手の上司を無下にもできず、お見合いの席で嬉しそうなヒューの話に相槌を打つ羽目になったのだが、自己紹介に瀧はさらに腰を抜かした。
ヒュー•アンドロシュは27歳で多国籍企業ロサニールカンパニーのCEOの次男だ。
ロサニールカンパニーはヒューの曾祖父であるニールと曾祖母のロサ二人で立ち上げた元はクッキーなどの焼き菓子を取り扱う地元の小さな菓子メーカーだったのだが、その息子のジョシュアが才覚を発揮し、今や数多の国で見かける食品メーカーへと変貌を遂げた。
ジョシュアは日本人の琶和子と結婚し、一人娘を儲けた。ジョシュアは優秀だったドイツ人のウルリヒと娘のメイヤを結婚させ、メイヤは長男のヴィム、長女のノーラ、そして次男のヒュー、それから三男のカミル、次女のピーアと五人の子供を産んだ。
兄のヴィムがゆくゆくは父の跡を継ぐため、ヒューも兄の片腕として経営に携わるつもりでMBAも取得したが、今は修行と称して大好きな祖母の母国の日本の大手飲料メーカーで働いている。
──と、言うのが瀧がヒューから聞いた話で、瀧も父、母、姉と四人家族で都内の大学に家から通っている。などと釣られて話した。
ヒューは終始にこにこと瀧の話を聞いていて、同じ場所にいること事態がとても嬉しい事なのだと黙っていても伝わった。
そんな彼に絆されたわけじゃないつもりだが、ついメッセージアプリの連絡先も交換してしまい、食事の後、家まで送るとタクシーで隣に座られて、ヒューの香水の混じる甘い香りになんだか緊張してしまったことは正直くやしかった。
「ふざけんなよ、ねーちゃん!俺、結婚を前提に付き合ってほしいって言われたんだぜ⁈」
「きゃわ~。ヒューさん本気なの~!瀧の女装効いた?!」
「いや、女装は趣味じゃないって」
「え?お見合いするっていうからてっきり女性らしい男が好きなのかと‥」
どうやら女装を施されたのは静湖の勘違いによるものらしい。
「それよりねーちゃん、ちゃんと断ってくれよな!」
「ばか言わないでよ、そんなんするわけないでしょー。相手を誰だと思ってんのよ。私のでっかい取引先の相手の上司よ?断ったらころすし、それにロサニールよ、ロサニール!瀧がヒューさんと結婚ともなれば、私も大企業の御曹司と親戚に!そっから縁があるかもでしょ⁈私も結婚できるかも。わー、おめでとー、瀧!応援するわー」
「大体、結婚ってなんなんだよ!男同士で‥」
瀧と静湖が、結婚、結婚と騒いでいるとリビングにいた父と母もどうしたことかと話に入ってきた。
「ねーちゃんを止めてよ!父さん!母さん!」
瀧は訴えたが話を聞いた父と母は笑ってのんびり構えている。
「ロサニールカンパニーとは玉の輿だな!瀧!」
よくやったと言わんばかりの父、和彦。
「わー、なんて素敵な人、ちょっと今度お家に連れてきて!あ!でも、なにお出ししたらいいのかしら?店屋物でもお口に合うのかしらね?ねえ、静湖?」
静湖のスマホでヒューの写真を見た母の茗子も興奮して、今からお招きの算段をし始めている。
「冗談だろ、父さんも母さんも俺の孫の顔見たくないの?!」
「まあ、それは寂しいけどな。まあ、お前にはお前の人生がある。今はほら、LEDだかなんだかあったろ、そういうのに社会も寛容になってきたからな!父さんは認めるよ」
父が言いたいのは多分LGBTだろう。
あと、目にやっぱり玉の輿と浮かんでいる気がする。
「孫の一人や二人しょうがないわよー。世の中何もかも手に入れられるわけじゃないからねー。こんなに美形の家族ができるなら母さんも許す!」
「俺だって美形だろ!」
「自分でいうなよ」
静湖がつっこむ。
「んー、ちょっと格が違うわよねえ、瀧はカットモデルとか読者モデルとかでいそうな感じだけど、ヒューさんはどっかの高級ブランドとかのモデルさんって感じだものねー」
母も被せてきた。瀬乃生家の権力者である女二人に瀧がタジタジになっているとポケットのスマホが震えた。
見ればヒューからで今日のお礼とまたすぐにでも会いたいとの情熱的なメッセージが送られてきた。
覗き見ていた静湖がさっと瀧のスマホを取り上げて勝手に「もちろんです!」との返信をスタンプと共に送る。
すぐに日取りを決める返事が来ると、そのまま静湖はメッセージを重ね、次のデートの約束を取り付けてしまった。
「ね、ねーちゃん‥」
がっくりと脱力する瀧。
こうして家族全員が応援の元、瀧のデートが決まったのであった。
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