十和田くんはセフレだから。

ミネ

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5分遅れで十和田くんとの待ち合わせ場所に着いた。ちゃんと会いに行った俺をほめてほしい。

まあ、俺がここで帰ったら十和田くんは別の人のところに行ってしまうかもしれないのが嫌だっただけなんだけど。


待ち合わせ場所には、なんだか嬉しそうな十和田くんがいる。

俺はさっき見た女の人のことなんかこれっぽっちも知りませんって顔で近付くことにした。

まあ、俺だって身の程はわきまえてる。自ら希望したセフレなのに、彼女いるの?とかあれ誰?なんて野暮なこと言うつもりはない。

それに、もし「彼女です」って言われて、この関係を解消しようとかいう流れになったらそれこそ嫌だ。

俺はたった一週間で十和田くんのいない生活なんて考えられなくなってる。

「テーブルから見ましょうか?」

落ち合った俺に十和田くんが話しかける。待ち合わせしてる時から嬉しそうだったけど、十和田くんはうきうきしてる。まあ、あんなすげえ高級車乗ってる人と付き合ってんだもんな。テンション上がるよ。遠目からだから姿まではっきりわかんなかったけど、とりあえず美女のオーラはかなり出てた。

ホームセンターに、やってすらいないセフレとテーブルとか食器とか選びにきて、十和田くんは楽しいのかなあ。

俺が不安気な目でちらっと十和田くんを見ると目が合った。十和田くんはふわっと優しい笑顔を浮かべて、不思議そうにこちらを見てくる。

「どうしました?」

「‥‥いや。テーブル、これとかよくない?」

「ああ。いいサイズ」

十和田くんはまるでこれから新生活を送る学生のように期待に満ちた顔でテーブルをなでなでしてる。十和田くんは一人暮らししたことがないから、こういう買い物は楽しいのかもしれない。十和田くんが楽しそうな顔をこちらに向けるたび、俺の胸はきゅうと高鳴った。

恋なんてしたことなかったけど、人を好きになるってこんなに心が高揚するんだな。

「嬉しい」

ちょっとだけでも気持ち、伝えとこ。重くない程度に。十和田くんに俺と一緒にいたいってまだ思ってもらえるように。

「ならよかった」

十和田くんは単にいいテーブルが見つかって喜んでるだけだと思っているはずだけど、それでもいい。

十和田くん、こんな平凡な俺を選んでくれてありがとう。今さら感謝。

俺はもっと十和田くんのそばにいられるようにこのままセフレのポジションを死守できるよう、セフレで居続けられる努力をしようと決めた。
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